サイエンス

太陽300億個分以上の質量を持つ超大質量ブラックホールが27億光年離れた銀河の中心から発見される


イギリスのダラム大学の研究チームが、これまでに知られている中で最大級のブラックホールと思われる天体を発見したと発表しました。このブラックホールは太陽300億個分以上の質量を持ち、地球から27億光年離れた銀河の中心に存在するとのことです。

Abell 1201: detection of an ultramassive black hole in a strong gravitational lens | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/mnras/stad587


Light-bending gravity reveals one of the bigg | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/983991

The largest black hole ever discovered can fit 30 billion suns | Space
https://www.space.com/largest-known-black-hole-discovered-through-gravitational-lensing

研究チームによると、問題のブラックホールは地球から約27億光年離れた「Abell 1201」と呼ばれる銀河団の中心に存在するそうで、質量は太陽の約327億倍とのこと。一般的な超大質量ブラックホールの質量は太陽の数百万~数十億倍とされることから、今回発見されたブラックホールがいかに巨大な天体であるかがうかがえます。


ブラックホールはそのすさまじい質量から、その中心は光ですら抜け出せない重力の特異点となっています。ブラックホールのほとんどは活動状態にあり、光やX線、その他の放射線の形でエネルギーを放出していますが、活動状態ではないブラックホールの場合はX線などの放射が強力ではないため、観測するのが非常に困難です。

2019年に天体観測史上初めて撮像されたブラックホールの画像は、超高温のプラズマガスが放つ電磁波を使うことで撮像に成功しています。

史上初の「ブラックホールの撮像」に成功、太陽の65億倍の質量で地球から5500万光年の銀河M87に存在 - GIGAZINE


そんな見えないブラックホールを見つけるための方法の1つが、重力レンズ効果と呼ばれる現象を探すことです。ブラックホールのように巨大な質量を持つ天体が存在すると、周囲の時空自体がゆがんでしまうため、まるでレンズを通した時のように光がゆがんだりのびたりすることがあります。この光のゆがみを観測することで、ブラックホールの存在を確認することができます。

Abell 1201の中心にある星団銀河(BCG)は、これまで強い重力レンズとして作用していることが知られていました。以下の写真は実際にAbell 1201を捉えた写真で、中央の黒い円(BCG)の右上に、本来であればBCGを挟んで向こう側にある銀河団の姿が弓なりに歪んで映っています。このことから、Abell 1201のBCGには非常に大きなブラックホールが存在するとされていましたが、これまでは詳細が明らかにされていませんでした。


そこで、ダラム大学の物理学者であるジェイムス・ナイチンゲール氏が率いる研究チームは、これまでハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたAbell 1201の写真を分析し、宇宙を通過する光のシミュレーションをコンピューターで何十万回も行い、重力レンズの特性からAbell 1201の中心に太陽の約327億倍も質量のある超大質量ブラックホールが存在すると突き止めました。

Abell 1201の中心にあるこの超大質量ブラックホールが持つ事象の地平面の直径は1290天文単位以上に及ぶとのこと。太陽から冥王星までの距離はおよそ40天文単位であることを踏まえると、このブラックホールの規模がどれだけ大きいかがよくわかります。

ナイチンゲール氏は「重力レンズ効果を検証することで、活動状態ではないブラックホールの研究が可能になります。このアプローチにより、さらに多くのブラックホールを検出し、これらのエキゾチックな天体が宇宙時代にどのように進化してきたかを明らかにすることができます」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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