サイエンス

地球と同じ銀河に存在するブラックホールの画像が初めて撮影される


地球を含む銀河「天の川銀河」の中心に位置する巨大ブラックホール「いて座A*」の姿が撮影されました。ブラックホールの撮影は2019年の「M87の超大質量ブラックホール(M87*)」を撮影した例に続いて2例目です。

天の川銀河中心のブラックホールの撮影に初めて成功 | EHT-Japan
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20220512

天の川銀河中心のブラックホールの撮影に初めて成功 | 国立天文台(NAOJ)
https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220512-eht.html

First image of the supermassive black hole at the centre of our own Milky Way galaxy - Black Hole Cam
https://blackholecam.org/first-image-of-the-supermassive-black-hole-at-the-centre-of-our-own-milky-way-galaxy/

ブラックホールは光さえ脱出できないほどの強い重力を持っているため、通常の天体望遠鏡では姿を捉えられません。そこで、ブラックホールを撮影するために世界中に設置された電波望遠鏡を連携させて地球規模の仮想望遠鏡を構築するプロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が立ち上げられました。


EHTは2017年4月にブラックホールの観測を実施し、数ペタバイトの撮影データの処理が行った後、2019年におとめ座銀河団の中核にあるM87*の画像を公開しました。

ブラックホールシャドウの撮像を目指す「イベントホライズンテレスコープ」が記者会見を実施へ - GIGAZINE


「M87*」の画像を公開した後もEHTのプロジェクトチームは撮影データの分析を進め、天の川銀河の「いて座A*」の可視化に取り組みました。以下のムービーは「いて座A*」と「M87*」の大きさの違いを示しています。

Size comparison of the two EHT black holes - YouTube


「いて座A*」は地球から約2万7000光年離れており、「M87*」は地球から5500万光年離れています。このため、「いて座A*」と「M87*」は地球からは同じくらいの大きさに見えますが……


両ブラックホールを地球から同じ距離に置いた場合、「M87*」は画面がはみ出すほどの大きさになります。つまり、今回の観測対象となった「いて座A*」は2019年に可視化された「M87*」と比べて非常に小さいわけです。


「いて座A*」と「M87*」の周囲では、ガスが光速に近い速さで周回しています。「M87*」を周回するガスは1周に数日か~数週間を必要としますが、「いて座A*」の場合はガスが数分間で1周するため、EHTによる観測の最中に「いて座A*」を周回するガスの明るさや模様が目まぐるしく変化してしまいます。このため、「M87*」と比べて1枚の画像を導き出すのがはるかに困難だったとのこと。

研究チームは「いて座A*」の画像を導き出すために、「観測データから得られた画像の平均をとる」という手法を用いました。

まず、膨大な観測データを4つのクラスターに統合し……


4つのクラスターを平均化することで1枚の画像を導きだしました。画像には「いて座A*」がドーナツ型に写っています。


「いて座A*」と「M87*」の画像を並べたものが以下。EHT科学諮問委員会議長の1人であるセラ・マルコフ氏は「大きく異なる2つの銀河に存在する全く異なる質量の別々のブラックホールですが、これらのブラックホールのごく近傍だけに注目してみると、驚くほど似たように見えるのです」「これは、ブラックホールのごく近傍は一般相対性理論が支配しており、そこから遠くに離れた際に見られる違いはブラックホール周囲の物質の違いであることを意味しています」 と述べています。


また、EHTの研究者で台湾中央研究院天文及天文物理研究所に所属する浅田圭一氏は「私たちは2つのブラックホールの画像を得ましたが、ひとつはこの宇宙に存在する巨大ブラックホールの中で最大級であり、もうひとつは最も小さい部類のものです。それ故、このような極限環境で重力がどのように振る舞うかを、よりたくさんの方法で検証することが可能になるのです」と、ETHの成果の意義を語っています。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1o_hf

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