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Microsoft創業者のビル・ゲイツが「AIはグラフィカルユーザーインターフェース以来の革命的な進歩」だと語る

by Chris Boland

Microsoftの創業者であり慈善団体のビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動に携わっているビル・ゲイツ氏が、「The Age of AI has begun(AIの時代が始まった)」と題したブログを公開しました。ゲイツ氏はブログの中で、AIはグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)以来の革命的なテクノロジーの進歩であり、慈善活動にも役立てられる可能性があると主張しています。

The Age of AI has begun | Bill Gates
https://www.gatesnotes.com/The-Age-of-AI-Has-Begun

The development of AI is as fundamental as the creation of the microprocessor, the personal computer, the Internet, and the mobile phone. It will change the way people work, learn, travel, get health care, and communicate with each other. https://t.co/uuaOQyxBTl

— Bill Gates (@BillGates)


◆ゲイツ氏がAIについて真剣に考えるようになったきっかけ
ゲイツ氏は1980年に、コンピューターを扱うユーザーフレンドリーな方法であるGUIに出会い、それがWindowsを含むさまざまなGUIを搭載したOSの開発につながりました。それから30年以上が経過した2022年半ば、ゲイツ氏はAI開発団体であるOpenAIに対し、北米の早期履修プログラムであるアドバンスト・プレイスメントの生物学のテストをAIに解かせるタスクを与えました。アドバンスド・プレイスメントは大学初級レベルのカリキュラムとテストを提供しており、テストに合格するには単なる生物学知識だけでなく、生物学に対する批判的思考も必要とされます。

当初、ゲイツ氏はAIがアドバンスド・プレイスメントの生物学テストを解けるようになるまで数年かかると予想していましたが、OpenAIはたった数カ月で60問中59問に正答するAIを開発しました。AIは自由記述形式の質問にも優れた回答を行い、外部の専門家に採点を依頼しても最高スコアを獲得したそうです。さらにゲイツ氏らは、AIに対して「あなたは病気の子どもを持つ父親になんと声をかけますか?」といった質問をしてみましたが、これに対してもAIはその場にいるほとんどの人間より優れた答えを出したとのこと。

これによってゲイツ氏は、AIがテクノロジーにおける革新的な進歩であると考えるようになりました。ゲイツ氏は、「AIの発展はマイクロプロセッサ・PC・インターネット・携帯電話の誕生と同じくらい基本的なことです。AIは人々の仕事・学習・旅行・健康管理・コミュニケーションのあり方を変え、産業界全体がこの技術を中心に方向転換することになるでしょう。企業はAIをいかにうまく利用するかで、自らを差別化することができるようになるでしょう」と述べています。


◆人工知能の定義
技術的には、「人工知能(AI)」という用語は特定の問題を解決したり、特定のサービスを提供したりするために作成されたモデルのことを指します。たとえば、近年話題となっているChatGPTは人間と対話することに特化しており、Stable Diffusionは画像生成に特化したAIです。これと対照的なのが「汎用(はんよう)人工知能(AGI)」であり、これはあらゆるタスクやテーマについて学習できるモデルを指し、OpenAIなどはAGIの開発を目標としています。

AIやAGIの開発は長年にわたりコンピューティング業界の夢でしたが、近年は機械学習と大規模なコンピューティングリソースの到来により、洗練されたAIの開発が現実のものとなっています。また、PCが登場した当初は開発に携わる人間も少数でしたが、今やコンピューティングは世界規模の産業であり、関係者の多くがAIに目を向けているため、イノベーションも従来よりはるかに早く訪れるだろうとゲイツ氏は考えています。


◆生産性の向上
人間は依然として多くの点でAIより優れているものの、単純な営業活動や文書の処理といったタスクはAIに置き換えることが可能であり、企業はトレーニングに必要なデータセットを所有しています。ゲイツ氏は、いずれAIがホワイトカラーの労働者が担うさまざまなタスクを手伝うようになると考えており、MicrosoftはOfficeなどの製品にAIを用いたサポートツールを搭載し始めています。

また、AIの進展に伴って、コンピューターの制御はクリックやタップではなく、「平易な文章によるリクエスト」が用いられるようになるとゲイツ氏は考えています。また、最新のメールや出席するべき会議の通知、その他の業務などをサポートする「パーソナルエージェント」の作成も可能になるとゲイツ氏は主張。「すべてのデバイスで自然言語を使用し、このエージェントにスケジューリング・コミュニケーション・eコマースを支援させることができます」と述べました。

これらのエージェントの台頭によって人々は恩恵を受けますが、かなりの数の労働者は別の仕事に移ることを余儀なくされます。これは政府が対処するべきデリケートな問題ですが、ゲイツ氏は「しかし、『人を助ける人』の需要がなくなることはないでしょう。たとえば教育・介護・高齢者支援などのソフトウェアではできないことが、AIの台頭によって人々が自由に行えるようになるのです」と主張しています。また、ゲイツ氏によると、グローバルヘルスや教育という大きなニーズがある分野でも、AIは重要な役割を果たすことができるとのこと。


◆健康とAI
AIが医療分野を改善する方法の1つが、保険金請求書の提出や医療関連の事務処理、医師の診察結果を基にしたメモの作成など、医療従事者が行うタスクの処理です。これによって医療従事者は他のタスクに時間を割くことが可能となります。

また、5歳未満の幼児死亡率が高い貧しい国々においては、AIが医師の診察をサポートすることで大幅な生産性の改善が期待できます。ゲイツ氏は例としてAIを搭載した超音波画像診断装置の開発を挙げ、「AIは患者に対する基本的なトリアージや健康上の問題に対処するためのアドバイス、治療を受ける必要があるかどうかの判断まで提供するようになるでしょう」と述べました。

もちろんAIはミスを犯すこともありますが、ゲイツ氏は「人々はヘルスAIが完璧なものではなく、間違いを犯すことはあっても、全体として有益だという証拠に目を向ける必要があります。医療分野のAIは非常に慎重にテストされ、適切に規制されなくてはならないので、他の分野よりも採用に時間がかかると思われます。しかし、繰り返しになりますが人間もミスをするものであり、貧しい人々が医療にアクセスできないということ自体も問題です」と述べ、AIにミスがあっても医療の提供範囲を広げることがより多くのメリットをもたらすと主張しています。


さらに、AIは医療研究のブレークスルーをスピードアップさせる上でも有益であり、タンパク質の立体構造予測創薬支援などにAIを用いる試みが進展しています。ビル&メリンダ・ゲイツ財団における優先事項の1つには、エイズ・結核・マラリアといった世界で最も貧しい人々に大きな影響を与える健康問題を解決するため、AIを使用した次世代ツールを利用することが含まれているとのこと。

医療分野以外では、貧しい国々における農業を支援するためにAIを活用することもできます。地域の状況に応じて最適な種子を提案したり、家畜用の医薬品やワクチン開発を支援したりするためにAIを用いることの重要性は、異常気象が低所得国家の農家に悪影響を与える現代において増しています。


◆教育とAI
ゲイツ氏は、これまでのところコンピューターは教育分野において、教育ゲームやオンライン情報源以上の影響を与えてこなかったと指摘。しかし、今後5~10年でAI主導のソフトウェアが人々の興味関心や学習スタイルに合わせて教育コンテンツを調整し、教え方や学習方法に革命を起こすだろうと予想しています。「AI主導の教育ツールは人々の理解度を測定し、興味を失っていることに気づき、どのような動機に反応するのかを理解し、即座にフィードバックを与えるでしょう」とゲイツ氏は述べています。

もちろん、AIは実際に教育現場で用いられる前に多くのトレーニングとさらなる開発が必要とされており、テクノロジーが完成しても学習は生徒と教師間の関係に依存します。ゲイツ氏は、AIツールが生徒と教師が共同で行う作業を強化するものの、教師がAIに置き換えられるといった事態にはならないと考えているとのこと。

また、ゲイツ氏は先進国だけでなく低所得国家でもAIによる教育ツールが利用可能になるべきであり、バイアスをなくすために多様なデータセットでトレーニングする必要があると主張。多くの教師は、「生徒がライティングの課題にChatGPTを利用するのではないか」といった懸念を抱いており、今後も教師が新しいAIテクノロジーに適合するための議論が続くとみられますが、ゲイツ氏は教師が有益な形でAIを教育に組み込むことが可能だと述べました。


◆AIのリスクと今後の展望
既存のAIには、人間が求める文脈を理解することが難しく、時には誤った回答をすることがあるという問題があります。たとえば、「旅行先で泊まるホテルのアドバイスを求めたところ、存在しない架空のホテルに宿泊するよう勧められた」「抽象的な数学の問題に誤った答えを出した」などの事例が報告されています。しかし、ゲイツ氏はこれらのいずれもAIに存在する根本的な問題ではなく、2年以内に大部分が修正されるだろうと考えています。

一方、「AIを搭載した兵器が他人に危害を加える危険性がある」「AIが制御不能になって暴走するかもしれない」など、技術的でない方面での懸念も存在しています。ゲイツ氏は、「ほとんどの発明と同様に、AIは良い目的だけでなく悪い目的にも使用できます。政府は、リスクを制限する方法について民間部門と協力する必要があります」と述べたほか、AIが物理的に世界を制御して人間に脅威を及ぼすのはかなり先のことだと予想しました。

ゲイツ氏は今後、AIのトレーニングを推進するアルゴリズムが改善され、AIの精度がさらなる向上を見せると予想しています。その一方で、市場原理は世界で最も貧しい人々を助けるAIサービスの開発を自然に促すことはないため、慈善団体による資金投入や政府の適切な政策によって、世界の不平等を改善するためのAI開発を促すべきだと主張。

ゲイツ氏は、「私たちは現在、AIが実現できることの始まりを見ているに過ぎない点に留意するべきです。今のAIにどんな制限があっても、いつの間にかそれはなくなっています。私はPC革命とインターネット革命に携わる幸運にあずかり、今この瞬間にも同じように興奮しています。この新しいテクノロジーは、世界中の人々の生活を向上させることができます。同時に、AIのメリットがそのデメリットをはるかに上回り、住んでいる場所や経済状況にかかわらず誰もがそのメリットを享受できるよう、世界はルールを確立する必要があります」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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