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「MicrosoftはAIでGoogle検索を打破できる」と考えるサティア・ナデラCEOがインタビューで理由を説明

by Bhupinder Nayyar

人間との自然な対話が可能なチャットAI「ChatGPT」の登場でGoogleは「コードレッド」を宣言し、同様のAI「Bard」の開発などに取り組んでいます。一方のMicrosoftはChatGPT開発のOpenAIとパートナーシップを組み、ChatGPTのアップグレード版AIを統合したBingとEdgeを発表しています。AI開発に取り組むMicrosoftの現状について、サティア・ナデラCEOがThe Vergeのインタビューに答えました。

Microsoft CEO Satya Nadella explains how Bing with AI is better than Google - The Verge
https://www.theverge.com/23589994/microsoft-ceo-satya-nadella-bing-chatgpt-google-search-ai

The Verge:
MicrosoftはOpenAIの技術を搭載したBingの新バージョンを発表したばかりですね。数週間前、MicrosoftはOpenAIに数十億ドル(数千億円)、数年にわたる投資契約を結んだと聞いています。何が起きているのか、教えてください。

ナデラCEO:
今回の発表は、この世で最大のソフトウェア・カテゴリーである「検索」を新世代のAIで見直すというものです。検索結果にチャットAIの回答を表示させるこのモデルは単なる検索エンジンではなく、「回答エンジン」と言うことができます。これまでも同様のモデルはありましたが、今回のような大規模なモデルを用いることで、回答の忠実度が格段に向上します。また、ウェブサイトの情報を要約するという機能も組み込んでいます。

The Verge:
非常に興味深いのは、それら機能の多くがOpenAIの技術によって支えられているということです。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏も発表会に登壇していましたね。あなたはOpenAIと3年間一緒に仕事をしていますが、買収はしていません。代わりに巨額の投資を行っただけ。世界最大のソフトウェア・カテゴリーの開発で、なぜ外部のテクノロジー・ベンダーと手を組んだのですか?

ナデラCEO:
OpenAIとの協力関係にはさまざまな側面があることを忘れてはいけません。最も重要なことは、私たちが過去4年間にわたってOpenAIの基盤となるコアインフラを構築してきたことにあります。OpenAIやその他AIの基盤となるAIに特化したインフラを構築するべく、MicrosoftはAzureを進化させました。これにより、大規模なモデルを私たちの製品の中に組み込んで、そのモデルをAzure AIとして各企業が利用できるようになっています。このように投資リターンと商業リターンの両方を得ることができるので、私たちはパートナーとして適切な立場にあると考えています。


The Verge:
プレゼンテーションの中で、Bingに何がもたらされるのかといった話や、Bingの安全性を高めるために何をしているのかという話が出ていました。Microsoftが長年やってきたこと、外部の企業と協働する場合でもMicrosoftの価値観を製品に反映させるのかという点について、教えてください。

ナデラCEO:
第一に、OpenAIは安全性を重視していますし、私たちもその価値観を共有しています。私たち自身も、人間を除外して製品を設計するのではなく、人間のフィードバックに沿うようにモデルを訓練するという原則を持っています。AIの安全性を考える上でプロダクトデザインには多くの選択肢がありますが、特に気をつけなければいけないのは、「事前学習されたデータ」の品質や出所はどうなっているのかということです。

第二に、有害なコンテンツや偏りを分類し、選別することです。これらの作業はBingという検索エンジンを構築することで長年行ってきたことですし、OpenAIのモデルを取り入れる今後も変わらないでしょう。

The Verge:
従来の検索モデルでは、ユーザーが何かを検索すると基本的にはウェブサイトのリンクが表示されます。ユーザーがリンクをクリックすれば、ウェブサイトの所有者は広告収入などを得ることができます。しかし、新しいBingに「おすすめのゲームソフトは何?」と聞いたらすぐにリストを作ってくれるような場合において、誰がゲームソフトの記事を掲載するThe Vergeにアクセスするでしょうか。このシステムについてどうお考えですか?

ナデラCEO:
いい質問ですね。けれど、ユーザーはAIの回答を見て「この情報はどこから来たんだ?」と思うでしょう。掘り下げて調べるかもしれませんよね?今の検索だってそうです。

The Verge:
なぜこのような質問をしたかというと、検索の世界でGoogleという支配的な存在がいることは明らかだからです。もしGoogleが検索エンジンの結果ページから出版社やクリエイター、他のウェブサイトに多くのトラフィックを送らなくなったら、世界中の規制当局が騒ぎ出すでしょう。Bingは圧倒的なシェアを誇っているわけではありませんが、競合他社ができないような方法でAIの結果を提示することで、一歩前進することができると考えます。

ナデラCEO:
確かに、Googleは市場を支配してきましたが、むしろ複数の検索エンジンがあることで検索シェアがより均等になり、サイトが複数のソースからのトラフィックを得られるようになるだけだと考えます。


The Verge:
もし多くの人が多くのAIコンテンツを制作するようになると、AIがAI作のコンテンツを学び、さらにコンテンツを生み出すというループに陥るようになってしまいます。エコシステムから人間の創造物が枯れてしまうように思うのですが、このことは懸念していますか?

ナデラCEO:
もちろんです。しかし、私が考えるに、AIはコンテンツを生成するだけの存在ではありません。私たちは新しいツールを使い、進化してきたのだと思います。GitHub Copilotを見ると分かりますが、人々はAIの登場でコーディングをしなくなったわけではありませんでした。むしろAIを取り入れ、より多くのコードを読み、より多くのコードを受け入れることができるようになっています。確かに、知識労働の単調な作業の一部はなくなるかもしれませんが、AIは知識労働を楽しむための別の方法になるでしょう。

The Verge:
今、BingがGoogleからマーケットシェアを奪うチャンスがあります。EdgeはChromeから、iPhoneならSafariからシェアを奪うことができるかもしれません。今回新しい技術を用意し、OpenAIとの提携でリードしたMicrosoftは、シェアを奪いに行く機会を作ったといえるのでしょうか?それとも単にカテゴリーを拡大し、とにかく新しいユーザーを開拓しようと考えているのでしょうか?

ナデラCEO:
私はいつもゼロサムで物事を考えるわけではありませんが、確かにWindowsではGoogleの方がMicrosoftよりも収益が高いです。私はまず市場で競争力のある製品を作り、実際にユーザーのニーズに応えようという考え方をしています。ブラウザでも検索エンジンでも、シェアを拡大できれば大きなチャンスがあります。

The Verge:
MicrosoftとGoogleの間には反目もありましたが、最近では一部のハードウェアでAndroidのような提携を結んでいますね。新しい製品を真っ向からぶつけることで、その関係が変わると思いますか?

ナデラCEO:
Googleは検索界の巨人です。まず第一に、私はGoogleが成し遂げたことに最大限の敬意を表します。Googleは素晴らしい才能を持った素晴らしい企業であり、スンダー・ピチャイCEOと彼のチームには多くの敬意を払っています。私はただ、イノベーションを望んでいるだけなのです。今日は検索にさらなる競争を持ち込んだ日となりましたが、私たちの革新的な技術に触発され、Googleも共に歩んでくることを期待しています。

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in ソフトウェア, Posted by log1p_kr

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