ウクライナはロシアの攻撃で電力不足に陥り通信インフラの電力をリチウムイオンバッテリーに頼る事態が発生している
2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、ロシアはウクライナ国内の発電所や変電所などの重要なインフラストラクチャーに対して攻撃を行っており、ウクライナでは電力を安定供給できない状況が続いています。ウクライナではバッテリーや発電機を用いて電力の不足する時間帯をしのいでいるのですが、バッテリーや発電機も不足している現状をウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。
Russian Strikes Sap Ukraine Mobile Network of Vital Power - WSJ
https://www.wsj.com/articles/russian-strikes-sap-ukraine-mobile-network-of-vital-power-11673747621
ロシア軍は、ウクライナへの侵攻開始直後にヨーロッパ最大の原子力発電所「ザポリージャ原子力発電所」を占拠しました。ロシア軍はザポリージャ原子力発電所以外にも発電所や変電所を相次いで攻撃しており、ウクライナ国内では電力の安定供給が困難な状況に陥っています。
ウクライナのザポリージャ原発がロシア軍の攻撃を受け火災発生、「爆発すれば被害はチェルノブイリの10倍」と外相 - GIGAZINE
電力が安定供給されないことで、ウクライナでは日常生活に影響が出ている他、電力が不安定な状況が長期間続いた場合、防寒対策や水道設備などに大きな影響が出る可能性も指摘されています。また、ウクライナ政府はウォロディミル・ゼレンスキー大統領の演説や戦争に関するニュースをインターネットを介して発信しており、電力不足によってインターネットが不通となった場合、国民の戦争に対する関心や戦意が失われてしまうことも危惧されています。
しかし、ウクライナで実施されている計画停電の影響で、ウクライナ全土に配備された携帯通信基地局のうち25%がいずれかのタイミングで停止しており、安定的な携帯通信ネットワークの提供が困難な状況に陥っています。また、2022年11月に発生したロシア軍による大規模な攻撃では59%の基地局が通信不能な状態になってしまったとのこと。
ウクライナのネットワーク企業「lifecell」の広報担当者は、「携帯通信ネットワークを維持するためには、250台の発電機と3万6000個のリチウムイオンバッテリーが必要です」と述べています。ウクライナに敷設されている携帯通信ネットワークは戦争を考慮したものではなく、ほとんどの基地局には緊急時用の電源として鉛蓄電池が配備されているとのこと。鉛蓄電池には「起電力が大きい」というメリットがある一方で、一度放電すると再充電に長時間を要するというデメリットも存在しています。このため、ネットワーク事業者は鉛蓄電池よりも高速に再充電が可能なリチウムイオンバッテリーや、燃料さえあれば電力供給可能な発電機の供給を求めています。
ウクライナのネットワーク企業「Kyivstar」は新たに8000個のリチウムイオンバッテリーを配備し、「Vodafone Ukraine」は5000個のリチウムイオンバッテリーを配備しました。しかし、それらのバッテリーでは基地局に電力を最大6時間しか供給できないとのこと。ウクライナで発生する停電は6時間を超えることがほとんどのため、配備済みのバッテリーだけでは電力を完全に補うことはできません。
上記のようにウクライナでは電力の供給不足によってネットワークが不安定な状況になっています。しかし、ウクライナ政府は電力を病院や緊急サービスに優先的に供給することを決定しているため、今度もネットワークが不安定な状況は続きそうです。
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