公有地と私有地が交差しており私有地を通らないとたどり着けない公有地ができてしまう「土地のコーナーロック問題」とは?
2021年10月、アメリカのワイオミング州で4人のハンターが私有地へ不法侵入したとして起訴されました。しかし、これらのハンターは一歩たりとも問題の私有地に足を踏み入れておらず、公有地から公有地へと移動しただけだったとのこと。この奇妙な事態を引き起こした、アメリカ西部にみられる「土地のコーナーロック問題」について、アウトドアレクリエーションを楽しむ人のためのウェブメディア・onXが論じています。
onX Corner-Locked Report: The Impact and Ethics of Corner Crossing | onX
https://www.onxmaps.com/onx-access-initiatives/corner-crossing-report
アメリカ大陸西部では過去2世紀にわたる土地取引や偶然などの結果、公有地と私有地が複雑に交差する地域が存在し、そこには「4つの面を私有地に囲まれた公有地(コーナーロックの公有地)」が存在するとのこと。たとえば、以下の地図は黄色に塗られた部分が公有地で、地面が見えている部分が私有地です。公有地と接する4つの面が私有地である場合、ある公有地から点を接する公有地へ移動するためには、隣接する私有地を通らなければなりません。この場合、私有地の所有者が権利を主張した場合、通り抜けた人は不法侵入で起訴される可能性があります。
チェスボードや市松模様のようにきれいな正方形で私有地と公有地が交差する場所は珍しいものの、アメリカ西部には以下のように、公有地と私有地が複雑に交差した箇所が存在します。以下の図でも、赤色の斜線で塗りつぶされた公有地は、私有地を通らずに付近の公有地へ通りぬけることができません。
2021年10月に私有地へ不法侵入したとして起訴された4人のハンターは、コーナーロックの公有地から別の公有地へと移動するため、「A」の形状になっているはしごを公有地から公有地へかけたとのこと。4人はこのはしごを上り下りして公有地から公有地へ移動しましたが、「私有地の空域を通過した」という理由で不法侵入の罪に問われてしまったというわけです。
しかし、点で接する公有地から公有地へ移動する際、私有地の空域を通過することを違法とする具体的な法律はなく、依然として判断は地元の法執行機関や地方裁判所の裁量によるところが大きいそうです。onXは、公的にアクセスできる土地がアウトドアレクリエーションを楽しむ人にとって重要であると考えているものの、私有財産権の重要性や土地所有者に迷惑をかけるハンターの存在も認識しており、土地所有者が持つ懸念は正当なものであることも認めています。
onXの調査によると、アメリカ西部には合計830万エーカー(約3.4万平方キロメートル)もの「コーナーロックの公有地」があるとのこと。
特にコーナーロックの公有地が多いのがワイオミング州で、なんと244万エーカー(約0.98万平方キロメートル)もの公有地がコーナーロックされています。続いてネバダ州の193万エーカー(約0.78万平方キロメートル)、アリゾナ州の133万エーカー(約0.53万平方キロメートル)と続きます。
onXは、コーナーロックの公有地を管理することは公的機関だけでなく、周辺の私有地を所有する牧場主や企業にとっても難しいことだと指摘。そのため、公的機関が隣接する私有地の所有者と取引を行い、コーナーロックの公有地へアクセスできる公有地の経路を確保するなどの対策が必要だと提言しています。実際にワイオミング州やモンタナ州では、公的プログラムによるコーナーロックの解除が進んでいるとのことです。
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