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Apple・Google・Metaの給与が新法で明らかに、「抜け穴がある」「実際の報酬を反映していない」との声も


「同業他社は従業員にどれほどの給与を支払っているのか?」ということに興味を持つ人は多く、他社の給与情報は自分の市場価値を把握する上でも重要です。新たに、アメリカのカリフォルニア州では2023年1月1日に発効した「California Senate Bill No. 1162(SB1162)」という州法に基づき、15人以上の従業員を抱える企業は求人情報において給与を開示することが義務づけられました。この影響でAppleやGoogle、Metaといった大企業の給与が明らかとなっています。

Here's how much top tech jobs in California pay, according to job ads
https://www.cnbc.com/2023/01/05/heres-how-much-top-tech-jobs-in-california-pay-according-to-job-ads.html

California pay transparency law raises questions for video game industry - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/video-games/2023/01/05/california-pay-law-video-game-studios/

Game companies post absurdly broad salary ranges to 'comply' with new pay transparency laws | PC Gamer
https://www.pcgamer.com/game-companies-post-absurdly-broad-salary-ranges-to-comply-with-new-transparency-laws/

カリフォルニア州では2022年9月に、15人以上の従業員を抱えるすべての企業に求人情報で給与の開示を義務づける州法SB1162が可決され、2023年1月1日に発効しました。SB1162の影響を受けて、Apple・Google・Metaといった大企業が出した求人情報から、以下のように特定の職に支払う給与が明らかとなっています。

・AppleはARグループでプログラムマネージャーを務める従業員に対し、年間12万1000ドル~23万ドル(約1620万円~3080万円)の基本給を支払う。
・Googleはヘルスケア部門のGoogle Healthで中途採用するソフトウェアエンジニアに対し、年間12万6000ドル~19万ドル(約1680万円~2540万円)の基本給を支払う。
・Metaのネットワークインフラストラクチャーを構築する主要チームのソフトウェアエンジニアリングディレクターに、年間25万3000ドル~32万7000ドル(約3380万円~4370万円)の基本給を支払う。


カリフォルニア州が導入する前から、コロラド州やニューヨーク市などでも求人情報における給与情報の開示が義務づけられています。しかし、フォーチュン500に名を連ねる企業の20%が拠点を置くカリフォルニア州で給与情報の開示が義務づけられることは、アメリカ全体において給与情報の開示が一般化する転換点になる可能性を秘めています。

求人情報での給与情報開示を義務づける州法には、性別や人種に基づく賃金格差を減らし、労働市場におけるマイノリティや女性の競争力を高める狙いがあります。州法成立を支援したカリフォルニア州上院議員のモニーク・リモン氏は、「男性と女性が同じ仕事量と経験で同じ報酬を得るためには、さまざまな要素が必要となります。その1つが、給与水準の透明性です」と述べました。


マイノリティや女性に対しても平等に賃金が支払われることは、最終的にカリフォルニア州の経済を活性化することにもつながるとのこと。リモン氏は、「結果は個人的なものにとどまりません。賃金が低いということは、州に対しても経済的な影響を与えます。つまり、公平な賃金が支払われていないことで、市場・住宅・投資などを通じたカリフォルニア州の経済に対する貢献が制限されてしまうのです」と述べています。また、カリフォルニア州の企業が給与情報を開示することにより、給与を開示しない他の州にある企業との人材獲得競争で有利になる可能性があるとリモン氏は主張しました。

SB1162では求人情報における給与情報の開示に加え、100人以上の従業員を抱える企業に対し、人種・性別・職種別に分類された詳細な給与データレポートを州に提出することも義務づけています。カリフォルニア州労働委員会はこれらのレポートを調査し、違反があった場合は企業に対し罰金を科すことができます。なお、この給与データレポートは一般に開示されないとのことです。


新たな州法によって大企業が支払う給与の一端が明らかにされたものの、開示される給与情報はあくまで求人で新しく採用する労働者を対象にしたものであるため、「現在その企業に勤めている従業員が実際にどれほどの給与をもらっているのか」を正確に反映しているとは限りません。

また、「これらの給与情報には多くのテクノロジー企業が導入している福利厚生・ストックオプション・ボーナスといった報酬が含まれていない」という批判も寄せられています。たとえば、テクノロジー業界では高給の労働者は報酬の大部分を株式という形で得ているほか、金融業界ではボーナスが収入に占める比重が大きいとのこと。

技術系労働者の採用やコーチングを行うLevels.fyiの共同創設者であるZuhayeer Musa氏は、「特にテクノロジー系の従業員は、最終的な報酬総額がいくらなのかを知りたがっています。株式は実際の総報酬の50%を超えている場合があります」と述べています。

さらに、開示されている給与の幅が広すぎることから、「意図的に給与情報を曖昧にしているのではないか」という声も寄せられています。たとえば、Netflixのゲームスタジオはシニアゲームプロデューサーに対し年間5万ドル~60万ドル(約670万円~約8020万円)を、ゲームのエンジニアリングディレクターには年間33万ドル~180万ドル(約4410万円~約2億4060万円)を支払うとしているとのこと。この賃金幅は必ずしも給与開示を防ぐことが目的ではなく、同じ求人情報に複数の潜在的な役割が含まれており、実際に同じ役職でも役割や年数により賃金が大きく異なる可能性もあるそうです。

雇用関連の法律事務所・Outten & Golden LLPの弁護士であるPawanpreet Dhaliwal氏は、「求人情報において、過度に広範で非現実的な給与体系に遭遇した労働者は、苦情を申し立てることでカリフォルニア州労働委員会の注意を喚起することを検討する必要があります。その結果、法律の下での雇用者の義務が明確になる可能性があります」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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