胎児が母親が食べたものの味に反応して笑ったり泣いたりしていることが判明
妊娠中の女性の喫煙や飲酒が胎児に影響を与えることはよく知られています。さらに、新たに行われた胎児の表情が分かる高精度な超音波スキャンを用いた研究により、胎児は母親が食べた食品の味に反応していることが直接確かめられました。このことから、妊娠中の母親の食事が生まれた後の赤ちゃんの食わず嫌いを予防するカギを握っている可能性が示されています。
Flavor Sensing in Utero and Emerging Discriminative Behaviors in the Human Fetus - Beyza Ustun, Nadja Reissland, Judith Covey, Benoist Schaal, Jacqueline Blissett, 2022
http://dx.doi.org/10.1177/09567976221105460
First direct evidence that babies react to ta | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/965259
妊娠中の女性が食べた食事の風味が羊水に伝わり、それを胎児が吸い込んだり飲み込んだりして反応している可能性があることは以前から知られていましたが、これまでは間接的な方法でしか確認できていませんでした。そこで、イギリス・ダラム大学胎児および新生児研究室のBeyza Ustun氏らの研究チームは、胎児の立体的な映像をビデオのように撮影することができる4D超音波検査で胎児を観察する研究を行いました。
研究には、18歳から40歳の健康な妊婦100人が参加しました。ただし、早産や新型コロナウイルス感染症による制限で、32週目と36週目の2回行われたスキャンの両方に参加できたのは81人だったとのこと。
各参加者には、生野菜に換算すると50g分に相当するニンジンまたはケールの粉末が400mg入ったカプセルをスキャンの20分前に摂取してもらいました。また、他の食品が影響を与えないように、スキャンの1時間前からは食べ物や味が付いている飲み物を飲まないようにお願いしたほか、スキャン当日はニンジンやケールが入っている飲食物を摂取しないように依頼しました。
実験にニンジンが選ばれたのは、糖分が多いので甘く感じられるのが理由です。ケールも同様に、ほうれん草やブロッコリーといったほかの緑黄色野菜より苦味が強いことから選ばれました。
研究チームが、母親がニンジンを摂取した後の胎児の表情を調べた結果、摂取していない胎児と比べてほほや口角が上がる「笑い顔」の反応が多いことが分かりました。一方、ケールでは鼻唇溝(びしんこう)、つまりほうれい線の出現や下唇の引き下げによる「泣き顔」が多いことも確かめられました。
大人の場合、食べ物の風味を味覚と嗅覚の組み合わせによって感じ取ります。一方、母親のお腹の中で羊水に浮かんでいる胎児は、子宮内の羊水を吸い込んだり飲み込んだりすることで味を体験していると考えられています。
Ustun氏は「赤ちゃんが子宮内で味や匂いを感じることができるという研究は数多くありますが、これらは出産後の結果に基づいていました。今回のように出産前の反応を確かめることができたのは、これが初めてのことです」と述べました。
生まれる前の胎児が味を感じていることを確かめた研究チームは今後、母親が食べた食事を味わう経験が生まれた後の赤ちゃんの好き嫌いにどのような影響を与えるかについて調査を行う予定です。
研究の共著者であるイギリス・アストン大学のジャクリーン・ブリセット氏は「研究の次のステップは、胎児が時間の経過と共にこれらの味に対する否定的な反応をしなくなり、子宮の外で初めてその味を口にした時に受け入れられるようになるかどうかを調べることです」と話しました。
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