生き物

「同じ種のネズミなのに山の東側と西側でサイズが違う」という謎がついに解明へ


南アメリカ大陸の西側に沿って南北7500kmに延びるアンデス山脈を挟んで西側に生息するネズミは、東側に生息するネズミと同種であるにもかかわらず体が大きいことがわかったという研究論文が発表されました。論文では、ネズミが東西でなぜサイズが異なるかという理由についても解説されています。

Andean rain shadow effect drives phenotypic variation in a widely distributed Austral rodent - Teta - Journal of Biogeography - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1111/jbi.14468

These mice grow bigger on the rainier sides of mountains. It might be a new rule of nature. | Field Museum
https://www.fieldmuseum.org/about/press/these-mice-grow-bigger-rainier-sides-mountains-it-might-be-new-rule-nature

These Mice Grow Bigger on One Side of Their Mountain Home. Now We Know Why : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/these-mice-grow-bigger-on-one-side-of-their-mountain-home-now-we-know-why

研究を発表したのは、シカゴのフィールド自然史博物館の研究員でありデポール大学の哺乳類学者であるノエ・デ・ラ・サンチャ助教らの研究チームです。研究チームは南アメリカ大陸南部に生息するケナガヤチマウス属のネズミ・Abrothrix hirtaの450匹分の頭がい骨を調べていたところ、個体によってサイズが大小に二分されることに気づきました。

一般的に動物のサイズについては、「同じ種の恒温動物内でも、寒冷な地域に生息するものほど比重が大きい」というベルクマンの法則が知られています。恒温動物は常に体温を一定に保つために熱を体外に放出しており、温暖な地域では体重当たりの体表面積を大きくして放熱を促進する必要があるため、体が小さい方が有利となります。逆に寒冷な地域では放熱を抑えるために、体が大きい方が有利になるというわけです。

しかし、研究チームによれば、Abrothrix hirtaの頭がい骨の大小には、ベルクマンの法則を含めた従来の生物学的法則が一切合致しませんでした。さらなる研究の結果、Abrothrix hirtaの頭がい骨は経度、つまり東西によってサイズの違いがみられることが判明。デ・ラ・サンチャ助教授は、この東西によるサイズの差は生息地域の資源の差に起因すると考えました。


しかし、なぜ東西に資源の差が生まれたのかについてわからなかったというデ・ラ・サンチャ助教は、ある日大学で学部生のクラスで講義を行っていた途中で、突然「雨蔭(ういん)」が当てはまることに気づいたそうです。

海の上の空気は水蒸気を含み、海が暖まると水蒸気が上昇します。西から東に向かうジェット気流によって、水蒸気をたっぷりと含んだ空気は海から大陸に押し出されます。しかし、空気がアンデス山脈を越えようとすると標高が上がって温度が下がり、空気中の水蒸気が凝結して雨となり、降り注ぎます。そして、山を超える頃には空気が乾燥してしまいます。これが雨蔭と呼ばれる現象です。

山脈の高さによっては「山脈を挟んで西側にだけ雨が降り、東側には全く降らなくなる」ということもあり、実際にアンデス山脈の西側では熱帯雨林のように木々が生い茂る一方、東側はほとんど砂漠同然に乾燥するという地域も多くあります。そして、デ・ラ・サンチャ助教らの研究チームは、450匹分の頭がい骨に見られる大小が、この雨蔭による地域差に当てはまることを確認し、「アンデス山脈を挟んで西側は雨が多いことから、十分な餌を確保できる西側のネズミの方が体が大きくなる現象が説明できます」と述べています。


なお、デ・ラ・サンチャ助教は研究結果から、気候変動によって餌の量が影響を受け、ネズミを含めたさまざまな動物の生態に影響を与える可能性があると指摘しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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