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「24時間エアコンつけっぱなしは本当に省エネになるのか?」を3人のエンジニアが検証してみた


近年のエアコンはエネルギー効率がいい一方で、一度上がった室内温度を下げるのには多くの電力がいるため、「エアコンはつけっぱなしのほうが省エネになる」という話を聞いたことがある人は多いはず。夏の間はエアコンをつけっぱなしにしたほうがいいのか、それとも人がいない日中はエアコンを切ったほうがいいのか、ビルシステムの専門家らが検証しました。

Does turning the air conditioning off when you're not home actually save energy? Three engineers run the numbers
https://theconversation.com/does-turning-the-air-conditioning-off-when-youre-not-home-actually-save-energy-three-engineers-run-the-numbers-188694

アメリカ・コロラド大学ボルダー校のビルシステム工学助教であるキリ・ベイカー氏とジェニファー・ジャイブ氏、建築工学科の博士課程の学生であるエイスリン・ピゴット氏らによると、一日中エアコンをつけておいたほうがいいのかどうかは、室内から熱を排除するのにどれだけエネルギーが必要かにかかっているとのこと。そして、それらは家の断熱性、エアコンの大きさや種類、外気温や湿度など、さまざまな要因に影響を受けます。


熱伝導と空調システムの性能をシミュレーションする研究に長年取り組んできたというベイカー氏らは、場合によるとした上で、「私たちの未発表の計算によると、常に冷やしておくよりも、家に帰ってから冷やしたほうがエネルギーの消費が抑えられます」と述べました。

エアコンの消費エネルギーの仕組みについて考えるにあたり、まず基本的なことから確認していきます。単純化するために家の外から家の中に流れ込んでくる熱の量を「1時間に1個」とすると、1日に8時間留守にしてから帰宅しエアコンをつける場合、エアコンが排出しなければならない熱は「8個」になる計算です。


しかし、実際には8個より少ないことがほとんどだとのこと。なぜなら、家がため込むことができる熱の量には限界があるからです。例えば、もし家の中の温度と外気温の差が5個分程度のエネルギーしかないとすると、帰宅後にオンにしたエアコンが除去しなければならない熱は5個だけでいいことになります。

さらに、室内が暑くなるに従って熱の移動が遅くなり、最終的に室内温度と外気温が同じになって熱の移動がゼロになることや、猛暑の中ではエアコンの冷却効率が低下するというのも、日中はエアコンを停止しておいたほうがいい理由になるとのことです。


具体的にどうなのかを検証するため、ベイカー氏らは「セントラル空調」「セントラル空気熱利用ヒートポンプ」「ミニスプリットヒートポンプ」という3種類の空調でシミュレーションを行いました。「セントラル空調」はダクトを通じて冷気を家の中に循環させるタイプで、「セントラル空気熱利用ヒートポンプ」は室内機と室外機で冷暖房を行うタイプです。そして、「ミニスプリットヒートポンプ」はそれを個々の部屋で行うものを指します。日本人が思い浮かべる家庭用のエアコンの多くはミニスプリットだと言えます。

気象条件は、温暖な気候で乾燥しているアリゾナ州と湿度が高いジョージア州を想定しました。また、建築物は一般的な断熱材を使用した面積が1200平方フィート(110平方メートル)の比較的小さな家としています。

まず、以下はアリゾナ州のシミュレーション結果です。グラフは左からセントラル空調・空気熱利用ヒートポンプ・ミニスプリットで、上段は温度、下段は消費エネルギーを示しています。また、線グラフはオレンジ色がつけっぱなし、青色が日中の8時間オフ、濃い青色が日中の4時間オフを表しています。エアコンの温度は24.4℃に設定されており、日中オフにしている場合は室内温度が31.6度まで上昇する想定となっています。


そして、ジョージア州での結果が以下。折れ線グラフは緑色がつけっぱなし、ピンク色が8時間オフ、濃いピンク色が4時間オフです。


シミュレーションの結果、日中上昇した温度を下げるのに一時的にエアコンがフル稼働した場合でも、人がいない間はオフにしたほうが全体的なエネルギー消費量は少なくなることが分かりました。例えば、アメリカで一般的なセントラル空調の場合だと、最大で11%の省エネが見込めるそうです。ただし、家の断熱性やエアコンの効率が高かったり、気温の変化が少ない地域だったりすると、この省エネ効果は下がるとのことでした。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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