サイエンス

大部分を木で作る「木造人工衛星」にはどんなメリットがあるのか?


2024年11月、京都大学と住友林業が共同開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」がSpaceXによって打ち上げられました。木造人工衛星にはどのようなメリットがあるのかについて、政治経済紙のThe Economistが報じています。

Satellites encased in wood are in the works
https://www.economist.com/science-and-technology/2026/01/21/satellites-encased-in-wood-are-in-the-works


京都大学と住友林業の木造人工衛星であるLignoSatは1辺の長さが約10cmの立方体で、重さは約1kg。木材には住友林業紋別社有林で伐採されたホオノキが使われています。2024年9月に国際宇宙ステーション(ISS)へ運ばれた後、12月9日にISSから宇宙空間へと放出されました。

京大と住友林業が開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」の打ち上げが成功 - GIGAZINE


宇宙空間に放出されたLignoSatは、残念ながら地球との通信には失敗してしまいました。しかし、地球の影に出入りするたびに-100℃から100℃まで上下する激しい温度変化や、太陽風の放射線などにもさらされましたが、116日後の大気圏再突入までLignoSatの木製パネルはしっかり持ちこたえたとのこと。

ISSから放出されるLignoSatの写真が以下。中央に見える小さな物体がLignoSatです。

by NASA

また、木造人工衛星を開発しているのは日本だけでなく、フィンランドでは2026年夏にWISA Woodsatという木造人工衛星の試験機を打ち上げる予定です。WISA Woodsatは液化天然ガスを輸送するタンクの断熱材に使われ、-163℃まで冷却されることもある白樺合板を採用しているとのこと。

木材を人工衛星の材料として使う場合のメリットのひとつが、人工衛星の大気圏再突入時に蒸発する金属の量を減らせるという点です。2023年には約290トンもの宇宙ゴミが大気圏に落下しており、同年に発表された研究では成層圏で採取した硫酸粒子の約10%に人工衛星やロケットと関連付けられる金属が含まれていると報告されました。

成層圏に残留する金属がどのような危険をもたらすのかはよくわかっていませんが、空気中の金属が化学反応を起こし、有害な紫外線を吸収するオゾン層が破壊されるとの懸念もあります。ある予測によると、2035年までに年間2800トンもの宇宙ゴミが宇宙から地球へ落下するようになるとみられています。


木造人工衛星がもたらすもう1つのメリットとして、大気圏再突入時に金属よりも燃え尽きやすいという点が挙げられます。現代の規制当局は、落下する人工衛星や宇宙船の破片が地上へ降り注ぐのを防ぐため、大気圏再突入時に燃え尽きることを考慮した設計をすることを求めています。一般に、重量300kgを超える人工衛星は特別な誘導システムを搭載し、無人の海域へ制御された再突入をすることが義務づけられています。しかし、大気圏で確実に燃え尽きる木材を利用することで、最大で重さ1トンの宇宙船が大気圏再突入時の誘導のための追加コストを回避できる可能性があるそうです。

また、木材は無線信号に影響を与えないため、人工衛星が軌道に乗った後で通信機器を展開する必要がなく、大気分子による抵抗が軽減される点もメリットです。2028年に高度400kmの軌道に打ち上げられる予定のLignoSatの2号機では、このアイデアを検証する予定となっています。元宇宙飛行士である京都大学大学院の土井隆夫特定教授は、抵抗の軽減によって人工衛星の飛行時間が約50%延長されると見積もっています。

by NASA

さらにThe Economistは、木材は一般的な宇宙船に使われる合金よりも安価であり、振動を吸収しやすいため繊細な機器にとって有利だと指摘。断熱性も金属より優れているため、宇宙船の加熱コイルを頻繁に作動させる必要もないとのこと。

その一方で、宇宙空間で水分や有機化合物が木材に吸着して強度が下がってしまう可能性がありますが、WISA Woodsatに使用された白樺合板を使った実験では、それが問題になるほどではないことが示唆されています。また、酸化アルミニウムによる保護コーティングが役に立つ可能性もあるとThe Economistは説明しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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