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用済みになった人工衛星はどうやって宇宙空間から廃棄されるのか?


地球の周りには、「スペースデブリ」と呼ばれる人工衛星やロケットの破片が50万個以上存在し、時速2万8000kmというスピードで飛び交っているといわれています。これらスペースデブリは将来の宇宙開発に大きな支障を来すため、「運用が終わった人工衛星をスペースデブリにすることなく廃棄すること」が宇宙開発における大きな課題となっています。実際にどうやって人工衛星を廃棄するのかを、YouTubeチャンネルのRealLifeLore2が以下のムービーで解説しています。

What Happens to Old Satellites When They Die? - YouTube


1960年から2020年までの60年間で行われたロケットの打ち上げは、およそ5250回。そして人工衛星などロケットによって打ち上げられた人工物は把握されているだけで約4万2000個もあり、そのうち半分以上の2万3000個以上が、アメリカによって打ち上げられたもの。


地球の周囲を飛び交うスペースデブリの多くは、せいぜい5cm~10cmほどのネジや破片などといった小さいものです。しかし、たとえ小さな破片でも衝突すると人工衛星が故障する原因となるばかりか、新しくスペースデブリが大量に発生してしまうこともあります。2009年には「アメリカとロシアの通信衛星同士が衝突する」という宇宙開発史上初めての事故が発生したと報じられており、この衝突によって数百個のスペースデブリが発生したといわれています。


このような事故が発生したにもかかわらず、人工衛星の衝突やニアミスを防ぐような取り決めは、中国・ロシア・アメリカといった宇宙開発に積極的な国々やボーイングSpaceXBlue Originといった民間宇宙企業が順守するべき国際法の形では記事作成時点でも存在していません。


しかし、2007年に、(PDFファイル)国連スペースデブリ低減ガイドラインが定められました。


このガイドラインの中で、役割を終えた人工衛星の処理について「大気圏への再突入」「墓場軌道への誘導」「宇宙から直接排除するプロセス」の3方法が示されました。


大気圏への再突入」では、人工衛星は高熱によって本体のおよそ80%が燃え尽きるといわれています。


しかし、燃え残った残り20%は地球上にそのまま落ちてくることになります。


1997年1月にアメリカのオクラホマ州で、大気圏に再突入して燃え残ったアメリカの打ち上げ用ロケット「デルタII」の破片が、散歩していた女性の肩をかすめて落下するという事件が発生。幸運にも女性はほぼ無傷で済みました。


ただし、こういった災害は非常にまれなケース。「空から人工衛星の破片が降ってくる」と聞くと非常に危ない気もしますが、大気圏に再突入した人工衛星のほとんどが地球上の70%以上を占める海に落下します。


もちろん人工衛星を落下させるポイントもほぼ決められており、落下による被害が最も低くなると推測されることから、ニュージーランドと南アメリカのちょうどまん中あたりに落下ポイントが設定されることが多いそうです。そのため、このエリアは「スペースクラフト・セメタリー」「宇宙の墓場」と呼ばれることもあります。


スペースクラフト・セメタリーの広さはおよそ1万km2。このエリアには航路や空路は設定されていません。地上から制御可能な人工衛星であれば、このスペースクラフト・セメタリーに落とす方が低予算で廃棄可能になるというわけです。


しかし、人工衛星には多額の開発費がかかっています。エンジンやアンテナといった部品が回収できれば、修理を行うだけで再利用でき、開発費を抑えられる可能性もあります。そこで、近年では大気圏再突入による人工衛星の消耗を可能な限り抑えて、再利用するための人工衛星を開発するプロジェクトが進められているとのこと。


墓場軌道への誘導」は、役割を終えた人工衛星専用の軌道に人工衛星を遷移させるというもの。例えば、地球から見ると止まって見える静止衛星を廃棄するときには、衛星を大気圏に再突入させるよりも、本来の軌道よりもおよそ200km~300kmも高度が高い墓場軌道に遷移される方法が一般的です。しかし、この方法は衛星の速度と軌道を変化させる必要があることから、開発費や燃料費がどうしてもかかってしまうのが欠点です。


そこで、「宇宙から直接排除するプロセス」が近年研究されています。例えば、欧州宇宙機関(ESA)はスペースデブリを除去するための衛星を打ち上げるミッション「ClearSpace One」を2025年に実施する予定だと発表しました。


このミッションは、スイスのスタートアップであるClearSpaceが発案したもの。古い人工衛星などの大型スペースデブリを、打ち上げられた専用衛星がロボットアームで物理的に捕獲し、そのまま大気圏に再突入して衛星ごと燃え尽きることでスペースデブリを取り除きます。他にも、「(もり)を打ち込んで回収する装置」「巨大な膜で包み込んで回収する宇宙船」など、さまざまなスペースデブリの回収法が各国で考案されています。


しかし、SpaceXが4000基以上の人工衛星を打ち上げるStarlink計画を既に開始していて、これからもますます宇宙を漂う人工衛星の数が増え続けることは想像に難くありません。ただ人工衛星を打ち上げるだけではなく、これからは「どのように人工衛星を処分するか」ということも視野に入れた宇宙開発が望まれます。

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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