脱炭素の切り札と期待される次世代の小型モジュール式原子炉の採用がカナダで進んでいる
カナダのサスカチュワン州とオンタリオ州が、GE日立ニュークリア・エナジー(GE-Hitachi)製の小型モジュール式原子炉(SMR)を配備する可能性が報じられています。
Saskatchewan, Ontario to roll out mini-nuclear reactors - Western Investor
https://www.westerninvestor.com/british-columbia/saskatchewan-ontario-to-roll-out-mini-nuclear-reactors-5568249
SMRは従来の原子炉よりも小型の核分裂炉で、「次世代の原子炉」として世界各国で研究開発が行われています。原子炉を小型にすることで冷却効率が上がるほか、モジュール式にすることで「工場生産の原子炉を現地で組み立てる」ことが可能になり、建設までのコスト低減や品質管理の向上がメリットとされています。
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もちろんSMRは核分裂炉なので、従来の原子炉と比較すると安全性は高いとはいえ、原子力事故のリスクは存在します。しかし、近年はロシアとの国交悪化などで火力発電に必要なエネルギー資源の供給量が不安定であるほか、気候変動を招く二酸化炭素排出を抑えるための「カーボンフリーなエネルギー」が求められる傾向があり、再び原子力が注目されています。
GE-Hitachiが開発する新型SMR「(PDFファイル)BWRX-300」は軽水炉型SMRで、1基当たりの出力は300MWe(メガワット電気)で約24万世帯の電力を供給することができます。特に冷却水を自然循環させて崩壊熱を冷却するシステムが特徴で、電源や人的操作なしで7日間冷却可能となっています。
BWRX-300の建築コストは1基につき10億カナダドル(約1000億円)から15億カナダドル(約1500億円)。出力1100MWeの水力発電施設はダム込みで160億カナダドル(約1兆6000億円)、6~7平方キロメートルの土地と安定した日照で300MWeを出力できる太陽光発電施設は3億カナダドル(約300億円)かかることを考えると、BWRX-300はかなりコストパフォーマンスがいいといえます。
オンタリオ州は、最大4基のGE-Hitachi製のSMR(出力300MWe)を計画しており、2028年までに最初の炉を稼働させる予定だとのこと。4基でオンタリオ州の約96万世帯の年間消費エネルギー量に十分な電力を供給可能で、建築コストは48億カナダドル(約4800億円)かかる予定で、出力エネルギー1kW当たりに換算すると4000カナダドル(約40万円)となるとのこと。
また、サスカチュワン州の電力会社であるSaskPowerは、2035年頃をめどにBWRX-300を導入することを検討していると発表しました。
SaskPowerの幹部であるドン・モルガン氏は「サスカチュワン州がよりクリーンで持続可能な未来に向けて取り組んでいく上で、BWRX-300の採用は重要なマイルストーンとなります。今回の発表は、サスカチュワン州成長計画の目標であるゼロエミッションSMR技術の開発をさらに推し進めるものです」とコメントしています。
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