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安価な素材で太陽光発電や風力発電の電力を蓄える「マンガン水素電池」の開発に成功


高まり続ける電力需要に対応するために、電力のピークシフトとともに一時的に電力を蓄えるバッテリーの重要性が注目を集めています。そんな中、太陽光発電や風力発電を最大限に活用するためのマンガン水素電池をスタンフォード大学の研究者が開発しています。

A manganese–hydrogen battery with potential for grid-scale energy storage | Nature Energy
https://www.nature.com/articles/s41560-018-0147-7

New water-based battery offers large-scale energy storage | Stanford News
https://news.stanford.edu/2018/04/30/new-water-based-battery-offers-large-scale-energy-storage/

アメリカのDepartment of Energy(エネルギー省)は、化石燃料を燃やして二酸化炭素を排出する火力発電の割合を下げようと考えています。そのために有力なのが太陽光発電や風力発電ですが、ともに発電量に大きな波があることと発電効率自体がそれほど高くないという欠点があります。そこで、発電した電力を一時的に蓄えておく蓄電池(バッテリー)が重要なカギとなっており、エネルギー省は「1時間に少なくとも20kWの電力を保持、5000回以上の充放電が可能、10年以上の寿命を持つバッテリー」を、実用化を踏まえて2000ドル(約22万円)以下で開発するという目標を掲げています。つまり、キロワット時あたり100ドル(約1万1000円)という低価格でのバッテリーの実現が求められています。


低価格かつ高寿命のバッテリーということで、携帯電話などで使われているリチウムイオン電池はレアメタルやレアアースを使うため高価にならざるを得ず不適当です。そこで、安価なマンガンを利用したマンガン水素電池に注目が集まっています。

スタンフォード大学のウェイ・チェン博士の研究チームは、マンガンイオンと二酸化マンガンをカソードの間で循環させて電子を運ぶ「マンガン水素電池」を開発しました。このマンガン水素電池のアノードでは水と水素が行き来するため、「水由来の電池」であり「水素にエネルギーを蓄える」タイプの電池だと開発者は表現しています。マンガン水素電池はもちろん充電可能な二次電池です。さらに、バッテリー溶液には工業的に安価に量産可能な硫酸マンガンを利用しており、「実用化にあたっては、100ワットの電球を12時間照らすために必要な費用は1ペニー(約1円)」だとイ・チュイ教授は推測しています。


開発したマンガン水素電池は大きさが3インチ(約7.6センチメートル)で20mWhの電力を供給できる状態ですが、1万回以上の充放電が可能な耐久性を研究者は確信しているとのこと。チュイ教授は、今回開発した技術を実用化レベルの規模で電気ストレージにすることで、エネルギー省の目標を満たせると考えているそうです。研究チームでは、今後より低コストかつ長寿命で実用的なマンガン水素電池を実現すべく、設計の改良や材料選定作業を行う予定です。

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