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Appleの栄光の日々を支えた伝説のデザイナーたちが会社を去るまで


Appleといえば、iPhoneやMacなど数々の人気製品を世にリリースしてきた企業であり、美しく機能的なデザインに魅了されるファンを多く抱えています。そんなAppleの黄金期を支えた伝説のデザイナーたちがどのようにAppleを去っていったのかを、Fast Companyが記しています。

Inside the dissolution of Apple's legacy design team
https://www.fastcompany.com/90741719/inside-the-dissolution-of-apples-legacy-design-team

◆ジョナサン・アイブ
Appleの元最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏といえば、iMacやMacBook、iPod、iPhone、iPadといったAppleの主要製品の数々をデザインしてきたデザイナーであり、創業者のスティーブ・ジョブズ亡き後にAppleを背負って立つと期待された人物です。しかし、アイブ氏は2019年にAppleを退職し、同社の最高デザイン責任者という役職を捨てました。

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アイブ氏は、Appleのデザインチーム内で高まる不安と戦っていたという2015年に「デザイン担当上級副社長」というソフトウェアおよびハードウェアにおけるデザインを担当する役職から、「チーフ・デザイン・オフィサー(最高デザイン責任者)」という役職に昇格することとなりました。これにより、長らくアイブ氏が手綱を握ってきたインダストリアルデザイン部門のヴァイスプレジデントには、iPhoneの開発に初期から携わってきたリチャード・ハワース氏が就任しました。

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Appleのインダストリアルデザイン部門のリーダー変更は「グループにこれまでにない緊張感を生み出した」とFast Companyは記しています。それまでインダストリアルデザイン部門を率いてきたアイブ氏の言葉は「チームにとっての最終決定そのもの」だったそうですが、後任となったハワース氏はそのような権力を持ち合わせていなかったそうです。そのため、アイブ氏が去った後のインダストリアルデザイン部門ではエンジニア担当の幹部や長いキャリアを積んだ人物たちが影響力を高めようと増長したそうで、エンジニアから難癖をつけられたハワース氏が保身に走ったり激昂したりすることがしばしばあったとのこと。

◆ダニー・コスタ―
アイブ氏の後任であり、「デザイナーとして稀有な才能を持っていた」と評されるハワース氏の下、デザイナーのダニー・コスタ―氏が率いるデザインチームはiPadの完全な再設計に1年以上の月日を費やしました。コスタ―氏は1997年にリリースされた「ボンダイブルー」と呼ばれる初代iMacのデザインにも携わった人物で、同氏が率いるデザインチームは初代iMacを彷彿とさせるような「洗練された曲線を持った人の手になじむ軽量のiPad」をデザインしたそうです。

しかし、Appleのオペレーションチームは新しいiPadにはいくつかの新機能を盛り込む必要があると判断しました。そうなると、新しいコンポーネントや新しいロジックボードなどが必要となり、新しく製造するにはコストが数十億ドル(数千億円)に達することとなるため、投資回収のために数年を要することになります。この判断の影響を受けて、コスター氏がデザインした新iPadのリリースは見送られました。


コスト回収を重視したAppleの判断は、コスタ―氏らデザインチームをいらだたせることにつながったそうです。これがきっかけとなってコスタ―氏はAppleを離れ、アクションカメラのGoProに移籍することとなりました。これはAppleの名高いデザインチームのコアメンバーが同社を退職した最初の事例として大きな話題を呼んでいます。

◆クリス・ストリンガー
Appleのスマートスピーカー「HomePod」プロジェクトにリードデザイナーを務めていたクリス・ストリンガー氏は、HomePodのリリース後に退職しました。ストリンガー氏はライバル製品のAmazon Echoのように、Siriを使ってUber Eatsなどの注文を行うことができないことに不満を抱いており、より洗練されたスマートスピーカーの開発に心を惹かれたとのことで、Apple退職後、オーディオ会社を設立しています。

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◆イムラン・シャウドリ
Appleのソフトウェアデザインチームでトップソフトウェアデザイナーとして働いていたイムラン・シャウドリ氏は、iPhone10周年記念製品である「iPhone X」の開発期間中に、Appleでのキャリアを終えることを決めていたそうです。

シャウドリ氏は1995年にインターン生としてAppleに加わったのち、iPhoneのマルチタッチ技術を開発したチームの一員として、同社で多くの役割を担ってきたという人物。シャウドリ氏がAppleを退職しようと考えた理由は、「自身の創造性を満たしてくれなくなったから」だそう。こういった慣行は、Appleからの退職者を罰したり再雇用することを拒否したりしてきたスティーブ・ジョブズから、退職者に対しても平等な対応をみせるティム・クック氏にCEOの職が移ったころから多くみられるようになったとのこと。

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シャウドリ氏は退職前に、従業員宛に「自分の魂からの声に耳を傾けて何かをする時、自分の中で川が流れていることを感じられます。これは喜びそのものです。しかし、悲しいことにこの川は干上がってしまいました。そうなれば別の新しい川を探す必要があります」と記したメールを送信。これはアイブ氏らデザインチームの幹部を大いに驚かせることとなったそうです。その理由は部外者でなく内部の従業員、しかも社内で影響力のある人物が「Appleはもはや革新的ではない」と語ったかのようなメールであったため。そのため、Appleは即座にシャウドリ氏を解雇しました。

これに対してシャウドリ氏は「Appleが私のコメントを誤解した」と友人に不満を漏らしており、一連の騒動が報じられたことで、世間からのAppleの風当たりを強める結果につながったとのことです。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ハードウェア,   デザイン, Posted by logu_ii

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