VRでの作業はストレス過多で生産性の低下につながるという調査結果
Facebookの親会社であるMetaは仮想現実(VR)を用いたバーチャル会議ツールの「Horizon Workrooms」を開発しており、MicrosoftもVR会議ツールの「Mesh for Teams」を開発しているように、複数の企業がVRを用いた作業スペースの構築に取り組んでいます。しかし、「VRでの作業はストレス過多で、生産性の低下につながる」という最新の論文が公開されました。
Quantifying the Effects of Working in VR for One Week
(PDFファイル)https://arxiv.org/pdf/2206.03189.pdf
Working in VR is more stressful and lessens productivity. Big surprise | PC Gamer
https://www.pcgamer.com/working-in-vr-is-more-stressful-and-lessens-productivity-big-surprise/
Study Finds Working In VR Is Less Productive, More Stressful
https://kotaku.com/vr-metaverse-working-virtual-reality-stress-productivit-1849072819
ドイツ・コーブルク専門大学の電気工学およびコンピューターサイエンス学科で教授を務めるイェンス・グルーベル氏ら研究チームが、バーチャル空間での作業が実現可能なものかを調べるために「VRを用いた作業を1週間続け、その作業効率を定量化する」という実験を行いました。実験に参加したのは全員大学の職員あるいは研究者です。
被験者はVRヘッドセットのMeta Quest 2とキーボードのILLUMINATED KEYBOARD K830を使い、バーチャル空間でChrome リモート デスクトップを使いながらいつもの作業を1週間行うよう義務付けられました。Chrome リモート デスクトップを使う理由は、被験者の作業効率をリモートで監視するため。なお、研究においてよりハイスペックなVRヘッドセットを利用しなかった理由は、「物理的なデスクトップ環境での作業に匹敵する体験を提供できるようなものが他になかったため」だそうです。
テストに参加した被験者のうち、2人は吐き気や片頭痛などを体験したため、実験初日でリタイアすることになったそうです。残りの被験者は、毎日8時間労働し、45分休憩するというスケジュールでVRでの作業を行っています。被験者に対してVR作業効率についてアンケート調査を実施したところ、被験者の35%が「作業負担が増加した」、42%が「欲求不満を感じた」と回答。さらに11%が「作業に悪影響が出た」、19%が「作業中に不安を感じた」、20%が「メンタルヘルスが低下した」と回答しています。
他にも、被験者の48%が「眼精疲労が増加した」と回答、36%が「VRのユーザビリティが低い」と回答、14%が「ワークフローが悪化した」と回答、16%が「生産性が低下した」と回答しています。これらのアンケート結果は基本的に被験者の主観によるところですが、それでもこれだけ多くの項目でネガティブな結果が出ているということは特筆に値します。
なお、今回の調査は「VR空間での作業体験に存在する欠点を明確にし、改善ポイントを明確にすること」を目的としており、今後のVRプラットフォーム構築を支援するためのものであることが強調されています。
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