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たった2人が一晩のいたずらで作った「ミステリーサークル」は今もなお世界中の人を魅了している


畑の作物の一部がなぎ倒され、一晩のうちに刻まれた巨大な幾何学模様が「ミステリーサークル」です。1980年代にミステリーサークルがイギリスで複数報告され、「知的生命体の宇宙船が着陸した跡」「プラズマの発生した跡」などと騒がれましたが、1991年にイギリス在住のダグ・バウアー氏とデイブ・チョーリー氏とが「自分たちがミステリーサークルを作った」と告白しました。2人の作ったミステリーサークルがどのように世界を騒がせたのかを、ニューヨーク・タイムズがまとめています。

Crop Circles Were Made by Supernatural Forces. Named Doug and Dave. - The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/06/12/style/crop-circles.html

ミステリーサークルの一例がこんな感じ。無数の円がびっちりと規則正しく並び、不思議な模様を描いています。

by PetitPoulailler / ThreeFrenchHens

別のミステリーサークルを近くから撮影した写真が以下。畑に生えている作物が丸くきれいになぎ倒されています。また、よく見ると作物の倒れ方はランダムではなく、円の中心から同心円に沿うように揃って倒れていることがわかります。

by Garry S

1991年9月9日にイギリスの新聞紙・Todayのいち面トップ記事に、「Men who conned the world(世界を騙した男たち)」という見出しで、バウアー氏とチョーリー氏の2人が過去に200個以上のミステリーサークルを作ったことを告白しました。

バウアー氏は1970年代後半から、両端にロープをつけた板を用意し、畑に立てた杭のようなものにロープを固定し、板で作物を踏み倒すだけで簡単にミステリーサークルを作れることに気づいたとのこと。当時バウアー氏とチョーリー氏を取材した記者のグラハム・ブロウ氏は、バウアー氏の自宅裏にある小屋に保管されていた200以上のミステリーサークルのデザイン資料をチェックし、2人の告白が真実であることを確認したそうです。


ブロウ氏は「私は1週間かけて、彼らがどうやってミステリーサークルを作ったのかを見せてもらいましたが、これほど笑ったことはありません。当時は宇宙人が着陸した跡などといわれていましたが、2人の男が行きつけのパブで2、3杯飲んでから、夜中に出かけていたずらしていたのが発端だったのです」と述べています。


数々のミステリーサークルの写真や調査結果をまとめてベストセラーとなった「Circular Evidence: A Detailed Investigation of the Flattened Swirled Crops Phenomenon」を著した作家のパット・デルガド氏は、最初は「間違いなく人間以外の高度な知的生命体によって作られた」と主張していましたが、ブロウ氏からバウアー氏とチョーリー氏を引き会わされてすぐに2人が犯人だと気づいたとのこと。デルガド氏は新しいミステリーサークルができたと聞けばすぐに取材に向かっていましたが、その観客に毎回2人の顔があったことを覚えており、「なんてこった!だから君たち2人はいつも現場にいたのか!」と叫んだそうです。

世界中を騒がせたミステリーサークルの作者として知られるようになったバウアー氏とチョーリー氏ですが、当時すでに60代で体力的に限界を感じてミステリーサークル作家を引退。記事作成時点では、2人の「仕事」を真似することから芸術家としてデビューしたロブ・アーディング氏が、少数の友人と一緒にコンセプチュアルアート集団を結成し、ミステリーサークルを制作しているそうです。

記事作成時点ではグロスターシャー大学で講師を勤めているアーディング氏は「バウアー氏とチョーリー氏からバトンを受け取り、ミステリーサークルを作る最も活発なグループとなりました。芸術の力は神秘性から生まれ、バウアー氏らが告白したことで神秘性が失われてしまったため、2人は名乗り出たことを後悔していました」と語っています。

しかし、ミステリーサークルのインパクトは2022年になってもなお強く、アーディング氏らのグループは有名ブランド企業から広告としてミステリーサークルの制作を請け負うこともあるそうです。また、作品を完成させるとドローン写真家に連絡し、インターネット上にすぐ公開する体制も整えているそうです。


一方で、ミステリーサークルは畑の作物をだめにしてしまうため、快く思わない人がいるのも事実。ニューヨーク・タイムズの取材に匿名で応じた農家は、「世界的な小麦不足の中で、不法侵入して食べ物を破壊するなんて、あまりにも無責任です」と述べています。実際、2000年11月にミステリーサークル作家が「ミステリーサークルは宇宙人ではなく人為的なもの」という主張を証明するために、自分が畑に侵入してミステリーサークルを作っているところを撮影した写真をUFO研究家に送ったところ、警察に通報されて起訴されたことがあるそうです。

デルガド氏とともに本を著したコリン・アンドリュース氏は、人間の仕業だったと認めたデルガド氏に対して「ミステリーサークルはもはやイギリスだけではなく世界中で確認されており、2人が犯人とは考えられない」と述べ、バウアー氏とチョーリー氏が犯人と認める声明を撤回するように訴えたそうです。

アンドリュース氏は、1983年7月に初めてミステリーサークルを見て、英語でミステリーサークルを意味する「crop circle」という言葉を発明し、ミステリーサークルだけで何十万冊も本を売り、世界中で講演活動を行っていたそうですが、バウアー氏とチョーリー氏が告白してから講演の依頼は途絶えてしまったとのこと。

1980年代には「地球の磁気の変動でミステリーサークルが作られた」と主張していたアンドリュース氏ですが、記事作成時点では「神、あるいは高次の自然」による「地球がカオスに向かっている」というメッセージこそミステリーサークルだと考えているそうです。アンドリュース氏は「ミステリーサークルすべてが人為的であるという証拠はどこにあるのでしょうか。たとえミステリーサークルが人為的なものだったとしても、そんなものを作っている人は、自律的で人間ではない精神によって促されたのです」とコメントしています。


アメリカのミステリーサークル研究者協会の創設者であるジェフリー・ウィルソン氏は、アンドリュース氏の「ミステリーサークルは神の霊感によって生み出されている」という説には科学的根拠がないとして否定しながらも、「世界中で見つかっているミステリーサークルの5つに1つは人間が作ったものではありません」とコメントしています。

オハイオ州の元理科教師でデータアナリストのウィルソン氏は、「人為的ではないサークルは放射線量の高さや植物の変化で見分けがつく」と主張。40人のボランティアを率いて、目撃情報が出るたびにミステリーサークルを調査しているとのことですが、2012年9月以降は現地調査した例がないそうです。

イギリスのブリストル大学で心理学を教えるステファン・ルワンドフスキー氏は、ミステリーサークルの人気は陰謀論的認知に支えられていると指摘。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアの登場によって、さまざまな陰謀論が流布され、新たに陰謀論に夢中になってしまう人が多いことが問題視されていますが、ルワンドフスキー氏は「何が起こっているのかというと、一部の人々は自分たちが生きている世界をコントロールできないと認める代わりに、『俳優がでっち上げた大量銃撃事件』や『新型コロナウイルスのパンデミックを引き起こした5G』など、非難すべき政府組織なり個人なりがいると信じて、安寧を得ているのです。ミステリーサークルが世界中に広まるまで数年かかりましたが、インターネットだと一瞬で考えが広まります」と語りました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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