メモ

ハッキングを多方面に仕掛ける匿名ハッカー集団「アノニマス」とは?


2020年5月25日、アメリカのミネアポリス近郊で白人警官による黒人男性ジョージ・フロイド氏への暴行殺人事件が起きました。この頃から、ハッカー集団の「アノニマス」が再びインターネットに帰ってきたという報道が広まり始めています。

The Hacker Group Anonymous Returns - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/technology/archive/2020/08/hacker-group-anonymous-returns/615058/

アノニマスは、フランスの首都パリで起きた同時多発テロの首謀者を名乗るテロ組織「イスラム国(ISIL)」に宣戦布告したり、アメリカの連邦準備銀行やイギリスのイングランド銀行、フランスのフランス銀行など、世界各地の20以上の中央銀行に対してDDoS攻撃を実行したりと、ハクティビズムを基に活動を行う匿名のハッカー集団です。

匿名ハッカー集団「アノニマス」を守る弁護士の正体 - GIGAZINE


アノニマスが帰還したというウワサは、1本のムービーから始まりました。ムービーでは非道な暴力を振るう警察官の映像と、白人警官に殺害されたフロイド氏の写真、そして他にも警察による殺人事件の被害者となった人々が映し出されたのち、アノニマスの象徴であるガイ・フォークスの仮面を被った人物が「アノニマスからミネアポリス警察へのメッセージです。我々はあなた方による多くの犯罪を世間に暴露しようと考えています。我々は大群です、期待してください」と語りました。

アノニマスによるミネアポリス警察への攻撃予告は、特に若者の間で大きな支持を得ることとなり、アノニマス関連のTwitterアカウントの中には数百万人もの新規フォロワーを得たものもあるそうです。コミュニケーションアプリのDiscord上ではアノニマスのファンが数千人規模のサーバーを開設し、ミームやフィクションでアノニマスの活動を祝っています。

アノニマスを手助けしたいというTwitterユーザーの@j2ohhさんが、「アノニマスの一員になるにはどうすればよいでしょうか?私は手伝いたいだけで、ハッカーにコーヒーにいれてあげたいだけなんです」とツイートしたところ、10万件以上リツイートされることとなっているように、インターネット上でアノニマス関連のツイートや投稿への支持が急激に増えています。

How does one apply to be a part of Anonymous? I just wanna help out, I’ll even make the hackers coffee or suttin

— J2O (@j2ohh)


アノニマスがムービーで警察に対してのハッキング攻撃を予告した後、実際にいくつかの警察がハッキング被害にあったことが報じられています。2020年5月30日、31日にはシカゴ警察のスキャナーがハッキングされ、ヒップホップグループN.W.Aの警察を揶揄する「fuck the police」や、Tay Zondayの黒人差別を題材とした「Chocolate Rain」といった楽曲が警察署内で再生されました。これはアノニマスが警察に対して仕掛けたハッキングなのではと疑われています。また、同じタイミングでミネアポリス警察のウェブサイトがDDoS攻撃によりダウンする事態も発生しました。

さらに3週間後の6月16日、アノニマスがアメリカ中の200を超える警察・核融合センター・法執行機関といった機関から270GB分の機密文書を盗み出し、インターネット上で公開しています。「BlueLeaks」と名付けられたこの大規模リークに、警察による不正行為の証拠となるような情報はほとんど含まれていませんでした。ただし、BlueLeaksにより、連邦およびミネアポリスの法執行機関によるフロイド氏を殺害した警察官への調査が明らか不足していたことや、今回の事件に関する誤った情報を広めるきっかけとなった事実などが明るみに出ています。加えて、法執行機関がソーシャルメディア上でフロイド氏の死を受けて警察への抗議を行うようになったアカウントを監視していたことも明らかになりました。

アメリカの警察・核融合センター・法執行機関の機密文書270GBが盗み出されて一般公開される - GIGAZINE


アノニマスに関する書籍を出版した経験もあるDale Beranさんは、「つい先月まで、アノニマスはすっかり衰退したものと思っていました。しかし、フロイド氏の死以降、再びアノニマスが帰ってきたことに驚いています。アノニマスの新しいムービーを作った人から始まり、なぜ彼らが戻ってくることとなったのかを理解したいと思っていました。そして、その理由を見つけるのに時間はかかりませんでした」と記し、なぜ再びアノニマスが帰ってくることになったのかについて言及しています。

アノニマス帰還の大きなきっかけとなったムービーには、赤枠部分に「anonews.co」というウォーターマークが入っています。このURLへ飛ぶと同名のニュースアグリゲーションサイトにたどり着きます。なお、このサイトを運営しているのはイギリスのMidialabという企業で、このサイトの運営者にBeranさんが連絡を取ったところ、ムービーの作成者の連絡先を教えてもらうことができたとのこと。


アノニマスによるムービーについて最初に報じたのがロシアのニュース局であるロシア・トゥデイ(RT)であったため、ロシアのインターネットトロールにつながるのではとBeranさんは考えていたそうですが、実際に連絡が取れたのはメリーランド州ハーフォード郡の郊外に住むジョン・バイブスという男性だったそうです。

バイブスさんは10年間にわたりボルチモアやフィラデルフィアといった土地でパーティープロモーターとして働いていた人物で、仕事の経験から反文化的な思想が磨かれ、最終的に活動家となることになったと語っています。


バイブスさんが警察の残虐性についてインターネット上で批判していたところ、イギリスのMidialabから「アノニマスの方針に賛同し、活動を支援したい」という連絡を受け、anonews.co上で掲載するムービーや記事の製作を依頼されたそうです。anonews.coのFacebookページに投稿されているムービーや投稿の製作はほとんどすべてバイブスさんが担当しており、同氏は「ほとんどの場合、我々は不特定多数の人がちょうど興味を持ちそうなニュースをカバーしています。それが、銀行システムだったり汚職だったりするわけです。そういったトピックに関する一般的な感情をムービーにまとめ、月に数回投稿するんです」と語っています。なお、ムービー上の仮面を被った男はバイブスさんではなく、過去のアノニマス関連の映像を編集で再利用したものだそうです。

バイブスさんは自身を「ハッカーではなくソーシャルメディアやチャットルーム上のアノニマスメンバーの感情を反映させるジャーナリストである」と強調しており、anonews.coのFacebookページの目的はアノニマスからのメッセージを一般向けに公開することであると述べています。


バイブスさんと話したBeranさんは、本当にアノニマスが帰ってきたのかについて不安を感じたそうです。その理由は、前述の警察などへのハッキングは主にウワサベースで「アノニマスによるハッキング」とされており、アノニマスが帰ってきたというウワサの基となったムービーは、アノニマスではなくアノニマスをサポートするいわば「ファン」のような人物であるバイブスさんにより作成されたものであることが明らかになったためです。

しかし、そもそもアノニマスは1つの目的(ミネアポリス警察の不正を暴くなど)に対して小規模のグループが協力しながらハッキングなどを行う分散型のハクティビスト集団ですが、「構成員」などはおらず、誰もが「アノニマス」という横断幕を掲げて活動を行うことができるという特徴があります。そのため、誰でも海賊旗を掲げれば海賊であるように、「アノニマス」という名の下で活動を行えば誰もがアノニマスとなり得えます。

また、Beranさんは6月以降にアノニマスとして活動しているという複数のハッカーと話をする機会を得られたそうで、その誰もが実際にアノニマスの活動が再活性化していると主張したそうです。加えて、Beranさんに情報を提供してくれた人物によると、アノニマスはバイブスさんの作成したムービーを受けて、新しい活動目的を得て、活動方針について議論するためのチャットルームに再び戻り始めているとのこと。アノニマスはリーダーのいない烏合の衆であるため、このチャットルームで実際にどのような活動を行うかメンバー同士で議論するそうです。


そもそもアノニマスがどのようにして誕生したかというと、その起源には2000年代半ばに「荒らし」を自称してインターネット掲示板の4chanなどでいたずら行為を繰り返していたオーブリー・コトルさんの存在があります。コトルさんら荒らしは自身を「アノニマス」と呼称しており、その理由は掲示板上で名前を入力せずにコメントを投稿すると「名無し」を意味する「Anonymous(アノニマス)」と表示されたためです。

そんなコトルさんが20歳だった2007年頃、同氏の家にアメリカのCIAに相当する機関であるカナダ安全保障局で働くという男性が訪れます。コトルさんに対して男性は「君はアルカイダやテロ組織に対して自分の能力を使いたいと思ったことはないかい?」と尋ねたそうです。これに対し、コトルさんはいろいろ考えた挙句、「あなたは私にインターネット上のフォーラムを攻撃してほしいのですか?」と尋ね返したとのこと。なお、コトルさんはカナダ安全保障局の申し出を検討するとしたものの、最終的に断っています。

当時のコトルさんらアノニマスは集団でオンラインゲームのユーザーやチャットルーム内の個人を攻撃する手法を取っていたそうですが、4chanを始めとする複数のサービスが荒らしによる集団での攻撃を禁止するようになったため、アノニマスは最終的にコトルさんが作成した420chanへ活動拠点を移すこととなります。それに伴い、コトルさんはアノニマスの事実上のリーダーとなり、コトルさん自身もその役割を果たすようになったとのこと。

アノニマスの代名詞となったガイ・フォークスの仮面を被り始めたのもコトルさんらで、その理由は単純に映画「Vフォー・ヴェンデッタ」のファンだったため。


そんな中、Fox Newsがアノニマスをテロリストであるかのように報じます。それまでアノニマスのメンバーはハッキングを一種の娯楽として行ってきましたが、この報道はその娯楽がメディアや政府の目を引きつけていたと理解するきっかけとなったそうです。

その後の2007年には、アノニマスはネオナチを信奉するハル・ターナーさんへの嫌がらせ行為に1年の大半を費やします。当時のアノニマスがターナーさんを標的としたのは、当時からハクティビストとして活動していたからではなく、「単に簡単な標的だったから」とのこと。しかし、ターナーさんを徹底的にハッキングした結果、彼がFBIの情報提供者であることが発覚したため攻撃は終わりを迎えたそうです。

ターナーさんの次となる標的を探していたアノニマスが目を付けたのが、1990年代初頭以来、ハッカーや情報の自由を求める活動家の敵として知られてきたサイエントロジー協会です。Fox Newsによるアノニマスをテロリストであるかのように報じたニュースにインスピレーションを受け、アノニマスの一員であった人物が「我々は何年にもわたりサイエントロジー協会を監視してきました」と主張するムービーを発表。するとこのムービーが口コミで広まり、世界中の主要都市でサイエントロジーに対する抗議デモが起きるという一大ムーブメントにまで発展します。ニューヨークで起こったサイエントロジーに対する抗議デモでは、数百人のデモ参加者のほぼ全員がガイ・フォークスの仮面を着けていたそうです。

一時はアノニマスの活動を率いていたコトルさんですが、「荒らし」として活動するアノニマスと「ハクティビスト」として活動するアノニマスに派閥が分かれ、最終的にアノニマス全体をコントロールする力を失ったとのこと。その後のアノニマスによる活動は広く知られるところで、ジュリアン・アサンジのWikiLeaksに協力してアメリカ合衆国の機密文書をリークするなどして、世界的な知名度を得ていきます。

なお、現在のアノニマスはかつてないほど警戒心が強くなっており、もはやInternet Relay Chatで通信することはなくなっており、WireやGajim、Signalといったエンドツーエンドの暗号化チャットクライアントを駆使してコミュニケーションを取っているとのこと。また、ソーシャルメディアはTwitterを利用しており、他のプラットフォームはプライバシーを保護するのに十分ではないと考えているそうです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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