ノーベル賞受賞者100人以上が遺伝子組み換え食物に反対するグリーンピースを非難する書簡に署名


ノーベル賞を受賞した107名の科学者が、「遺伝子組み換え作物の普及を国際環境NGOのグリーンピースが妨げているのは科学的ではないので反・遺伝子組み換え作物キャンペーンは即刻やめるべき」とする書簡に署名しました。そこにはさまざまな事情が絡み合っているようです。

107 Nobel laureates sign letter blasting Greenpeace over GMOs - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2016/06/29/more-than-100-nobel-laureates-take-on-greenpeace-over-gmo-stance/

グリーンピースに対して遺伝子組み換え食物キャンペーンをやめるべきであるという書簡を作成したのは、1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフィリップ・シャープ博士。書簡では、「遺伝子組み換えによってビタミンA欠乏症を減らすことのできるGolden rice(ゴールデンライス)の導入をグリーンピースが阻止していることで、発展途上国の子どもたちの多くが失明や死の危険にさらされている」として、グリーンピースに遺伝子組み換えキャンペーンをやめるように求めています。

書簡で触れられている「ゴールデンライス」とは、遺伝子組み換え技術によってビタミンAを作るβカロテンを多く含む米のこと。米の色が黄色いことからゴールデンライスと呼ばれており、発展途上国でビタミンA欠乏症に苦しむ人たちを救う食物になるとして、導入が検討されている遺伝子組み換え作物です。


New England Biolabs社の最高科学責任者の職責にあるシャープ博士は、「私たちは科学者です。科学の論理を理解しています。グリーンピースは科学的な裏付けのない状態で、人々をわざと怖がらせています」と述べ、グリーンピースを中心とする反・遺伝子組み換え食物の姿勢をとる団体の主張には科学的な根拠がないと主張しています。

このような、反・遺伝子組み換え食物を主張する人たちと最先端の科学者たちによる「遺伝子組み換え食物の是非」をめぐる攻防はこれまでにも長年にわたって多数くりひろげられてきたもので、特別めずらしいものではありません。しかし、今回提出されたグリーンピースに対して反・遺伝子組み換えキャンペーンの自粛を求める書簡には、107名ものノーベル賞受賞者が署名している「権威付け」があるという点で特徴的です。

なお、多数のノーベル受賞者たちから書簡を突きつけられたグリーンピースはThe Washington Postの取材に対して、「何者かがゴールデンライスの導入を阻害しているという告発は事実誤認です。そもそも20年以上研究が続けられてきたゴールデンライスがいまだに販売されていないのは、ビタミンA欠乏症に対処するための解決策として失敗したものに過ぎません。ゴールデンライスがビタミンA欠乏症に対処できるという証明はされていないとInternational Rice Research Instituteは確認しています」と反論しています。

遺伝子組み換え稲から収穫されるゴールデンライスの導入に対しては、導入が検討されている発展途上国でも安全性を懸念する声があります。例えば、フィリピンでは、ビタミンA欠乏症対策をするのであれば、ゴールデンライスの代わりにβカロテンの豊富な国産のフルーツや野菜の栽培を奨励すればこと足りるという意見も根強くあるとのこと。発展途上国が貧しいため食物の栄養価が足りていないという貧困問題に目を背けて、「発展途上国の健康のため」という名目で、遺伝子組み換え技術を持つ大企業がゴールデンライスの導入を推進しているという批判もあります。

By Christopher Fynn

そもそも、「遺伝子組み換え食物で健康被害は証明されていない」ということを根拠に遺伝子組み換え食物を推進する人と、生態系への影響や健康被害という「予期せぬ危険の可能性」を危惧して遺伝子組み換え食物を反対する人との間では、議論がかみ合うはずもなく、このような遺伝子食物をめぐる攻防は今後も続いていくものと考えられます。

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