男性はエスプレッソ・女性はドリップコーヒーを飲むと「コレステロール値」が上昇するとの研究結果、一体なぜ男女で差が出るのか?


ノルウェーの男女1万人以上を対象とした研究により、コーヒーが血中のコレステロール値に与える影響には、コーヒーを入れる方法と性別によって違いがあることが分かりました。

Original research: Association between espresso coffee and serum total cholesterol: the Tromsø Study 2015–2016 - PMC
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8995942/

How Coffee Affects Cholesterol in Men, Women
https://www.healthline.com/health-news/brewed-coffee-vs-espresso-may-affect-cholesterol-levels-differently-in-men-and-women

ノルウェー・トロムソ大学のÅsne Lirhus Svatun氏らの研究チームは、コーヒーの抽出方法、特にエスプレッソでコーヒーを飲むことが血中コレステロールとどのような関係にあるのかを調べるため、トロムソで1974年から行われてきた長期研究である「The Tromsø Study」の参加者らのコーヒー消費量と健康データを分析する研究を行いました。

参加者は40歳以上の男性6722人、女性7167人で、平均年齢は56歳だったとのこと。研究チームは参加者に対して、一日に何杯のコーヒーを飲むかと、どんなコーヒーを飲むのかを尋ねました。


アンケートの結果、男性は1日に平均5杯、女性は平均4杯弱のコーヒーを飲んでいることが分かりました。また、コーヒーの飲み方や使う器具はさまざまでしたが、研究チームはコーヒーの飲み方をフィルターを使ってドリップする「フィルター式」、コーヒーメーカーなどで作る「エスプレッソ」、フレンチプレスなどを使って粗びき豆から抽出する「ボイルド/プランジャー式」、粉末のコーヒーを湯に溶かす「インスタント」の4つに分類しました。

そして、研究チームは参加者らの血液サンプルを採取して血中コレステロール値を調べた上で、コーヒーを飲む量と飲み方との関係を分析しました。その際には、身長や体重などの身体情報、喫煙の有無、飲酒量、運動量などさまざまな食事やライフスタイルの情報、さらには学歴や2型糖尿病の既往歴などのデータも踏まえた分析を行いました。


その結果、1日3~5杯のエスプレッソを飲むことは、男性の血中総コレステロール値の上昇と特に有意に関連していたことが分かりました。具体的には、コーヒーを飲まない人に比べて、3~5杯のエスプレッソを毎日飲む人は男性では0.16mmol/L(ミリモル毎リットル)、女性では0.09mmol/Lコレステロール値が高かったとのこと。

一方女性では、フィルターで入れたコーヒーを飲むこととコレステロール値の間に関連性が見つかりました。例えば、1日6杯フィルターで入れたコーヒーを飲む女性は、コーヒーを飲まない女性に比べてコレステロール値が0.11mmol/L高かった一方で、男性では有意な関連性は見られませんでした。


性差があまり見られないコーヒーの飲み方もありました。プランジャーで入れたコーヒーを1日6杯飲む男性は0.23mmol/L、女性は0.3mmol/Lと、男女ともにコレステロール値が高かったほか、インスタントコーヒーでも男女ともにコレステロール値が高い傾向が認められましたが、飲む量とは関係がなかったそうです。

同じエスプレッソを飲んでも男女で差が出るはっきりとした理由は不明ですが、研究者らは「コーヒーに含まれているコレステロール値を上昇させる成分が、飲み方によって異なるからではないか」と考えています。

心臓病の予防を専門とする栄養士のMichelle Routhenstein氏は、健康情報サイトのHealthlineに、「コーヒー豆には、ジテルペン類と呼ばれる物質が含まれており、特にカフェストールカーウェオールは増えすぎると動脈硬化の原因になるLDLコレステロールの値を上昇させる可能性があります。フィルターでろ過されていないコーヒーには、ろ過されたコーヒーに比べて、これらの物質が最大で30倍も多く存在します。つまり、エスプレッソなどのろ過されていないコーヒーは、LDLコレステロールと心血管疾患のリスクを増加させてしまうのです」と話しました。また、コーヒーに含まれるカフェインは刺激物なので、コーヒーの摂取で血圧が上がるおそれがあることにも注意が必要とのこと。


「コーヒーにコレステロール値を上昇させる成分が入っている」というだけでは男女差の説明にはなりませんが、研究チームは「コーヒーを大量に飲む女性は男性より少ない」「女性の方が小さなエスプレッソカップを使う」「同じエスプレッソでも入れ方に違いがあり、女性はエスプレッソマシンやモカポットを使う人が多い」「コーヒーを飲むことに関する主観的な性差が、摂取量に関するアンケートに表れた」「コレステロール代謝とジテルペン類の摂取の間には、未知の生理学的な性差が存在する可能性がある」といった仮説を立てています。

研究チームによると、エスプレッソの本場のイタリアでは「エスプレッソカップは1杯30ミリリットル」と決まっているのに対し、ノルウェー人はよく大きなカップでドリップコーヒーを飲むので、もし同じカップを使ってエスプレッソを飲んでいれば「同じエスプレッソ1杯でも男女で飲む量が違う」ということがあり得るのだそうです。

今回の研究によりコーヒーの摂取、特に男性がエスプレッソを飲むことがコレステロール値の上昇に関連している可能性が示されましたが、専門家は適度にコーヒーを飲むことは健康にいいとの見方を変えていません。なぜなら、カフェストールとカーウェオールにはコレステロール値を上げるだけでなく、炎症を抑え、肝臓を保護し、がんと糖尿病のリスクを減らす効果もあるからです。

カリフォルニア州の医療機関・Providence Saint John's Health Centerの心臓専門医であるRigved Tadwalkar氏は、Healthlineの取材に対し「コーヒーがコレステロール値を上昇させるというのを理解するのは怖いことかもしれませんが、適度なコーヒーの消費が心血管疾患のリスクの低減と関連していることを示す文献もあり、この強力なデータは心血管疾患予防のガイドラインにも取り入れられています。具体的には、コーヒー豆に含まれるさまざまな生理活性物質が、代謝やインスリン感受性を改善し、炎症や酸化ストレスを緩和させることで有益な効果をもたらすと考えられています」とコメントしました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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