コーヒーやお茶をよく飲む人は「心臓発作や脳卒中になった後」の生存率が高いことが判明
これまでの研究により、コーヒーは心不全のリスクを下げることや、心臓病や脳卒中を予防する効果があることが分かっています。さらに、アメリカ心臓協会が刊行している学術雑誌・Strokeに掲載された日本の研究により、「緑茶やコーヒーをよく飲んでいる脳卒中や心臓発作の経験者は生存率が高い」ことが分かりました。
Green Tea and Coffee Consumption and All-Cause Mortality Among Persons With and Without Stroke or Myocardial Infarction | Stroke
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.120.032273
Green tea, coffee linked to lower death risk after stroke, heart attack | American Heart Association
https://www.heart.org/en/news/2021/02/04/green-tea-coffee-linked-to-lower-death-risk-after-stroke-heart-attack
Drinking green tea, coffee lowers risk of death for stroke and heart attack survivors | American Heart Association
https://newsroom.heart.org/news/drinking-green-tea-coffee-lowers-risk-of-death-for-stroke-and-heart-attack-survivors
今回、緑茶とコーヒーが心臓発作や脳卒中から回復した人の死亡リスクを下げることを突き止めたのは、大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座の磯博康教授らの研究チームです。研究チームは論文の中で、「アジアで最も一般的な飲み物である緑茶や世界的に人気なコーヒーが、健康な人の死亡リスクを下げることが分かっている一方で、心筋梗塞や脳卒中の生存者に与える影響を調べた研究はありません」と指摘。医学の進歩や高齢化により、心筋梗塞や脳卒中を経験した後でも生活を続ける人が増えていることから、そうした人々と飲み物の関係に焦点を当てた研究の必要性が高まっていると述べました。
そこで研究チームは、日本全国の45の地域に住む約12万人を対象とした「コホート研究による発がん要因の評価に関する研究(JACC Study)」から4万6213人を選び出し、緑茶やコーヒーを飲む習慣と死亡リスクを18.5年(中央値)にわたって追跡調査する研究を実施しました。研究対象になった4万6213人の年齢層は40~79歳で、脳卒中の生存者は478人、心筋梗塞の生存者は1214人、どちらの既往歴もない人は4万4521人でした。
調査終了後、調査期間中に死亡した9253人とそれ以外の人の生活習慣を、どのような要因が生存時間に影響を与えるかを調べる統計的手法であるCox比例ハザードモデルで分析したところ、「緑茶は脳卒中と心筋梗塞の生存者の全般的な死亡リスクを下げる」ということが分かりました。
具体的には、緑茶を毎日1~2杯飲んだ人は、飲まない人に比べて死亡リスクが35%、3~4杯は44%、5~6杯は48%、7杯以上では62%も低下したとのこと。なお、緑茶1杯は約100mlと定義されているため、緑茶7杯は250ml入りペットボトル約3本分に相当します。死亡リスクを下げる効果は、心筋梗塞の生存者でも同様に見られましたが、脳卒中や心筋梗塞の既往歴がない人には見られませんでした。
コーヒーの場合は、心筋梗塞の生存者の死亡リスク低下に関連しており、その効果は1日1杯で22%、2杯以上で39%でした。この効果は既往歴がない人にも見られましたが、脳卒中の生存者の死亡リスクとコーヒーを飲む習慣の間には、関連性がなかったとのことです。なお、コーヒー1杯は約150mlと定義されました。
今回の研究では上記のほか、「緑茶を飲む頻度が高いほど糖尿病の有病率が低い」ということや、「コーヒーをよく飲む人は高血圧や糖尿病の有病率が低い」ということも分かっています。
研究チームは論文の中で、「緑茶が心血管の健康に影響を与えるメカニズムとしては、主に緑茶に最も多く含まれるポリフェノールである没食子酸エピガロカテキンの効果が考えられます。また、カフェイン入りのコーヒーを飲むことが、糖尿病の女性においては血清コレステロール値の低下や、炎症の抑制などに関連していることも分かっています」と述べました。ただし、この研究には「結果を観察した研究なので、緑茶やコーヒーを飲むことと健康の因果関係を断定できるわけではない」という課題があることも指摘しています。
磯教授はStrokeでの発表の中で、「この研究のポイントは、日本では水出しした緑茶がよく飲まれていて、海外とは違って砂糖も入れないことです。一方、冷たいコーヒーも飲まれますが、コーヒーにはミルクや砂糖を入れることがあります。いずれにせよ、緑茶やコーヒーの健康的な飲み方は、砂糖を入れないことでしょう」と話しました。
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