火星の音速は地球よりも遅いことが確認される、音の高さによって速さが異なることも判明
音速は常に一定ではなく、伝わる物質や温度によって速さが変化することが知られています。新たに、火星探査機「パーサヴィアランス」を用いた実験によって、「火星における音速」や「音の高さによる速さの違い」が明らかになりました。
Sound Speed on Mars measured by the SuperCam microphone on Perseverance.
(PDFファイル)https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2022/pdf/1357.pdf
地球では、0度の空気中を音が進む速さは331.5m/sですが、温度が1度上昇するごとに音速は0.6m/sずつ速くなります。また、伝わる物質が変化すると速さが変化し、0度の水中を音が進む速さは1500m/sとされています。
火星の大気は地球と比べて密度が低く、気温も非常に低いことが知られています。このため、火星では地球よりも音速が遅くなることが予想されてきました。今回の実験では、パーサヴィアランスに搭載された実験装置を用いて、実際に火星での音速が測定されました。
実験の方法はこんな感じ。まず、パーサヴィアランスから火星の地表にレーザーを照射してプラズマを生じさせ、その際に発せられる音を高度2.1mの位置に搭載したマイクで記録し、レーザーを射出した時間とマイクが音を拾った時間の差から音速を算出します。
上記の実験の結果、火星の空気中における音速は約240m/sであることが判明しました。また、火星の気圧の低さから「周波数が240ヘルツを超える高音は、低音と比べて10m/s速くなる」という現象が生じていることも判明。研究チームは「火星は人間の可聴域(20ヘルツ~2万ヘルツ)で音速が変化する太陽系で唯一の惑星です」「低音より高音の方が速く進むことから、火星ではユニークなリスニング体験が可能な可能性があります」と述べています。
なお、研究チームは火星における音速の測定を継続し、日ごと・季節ごとの大気の変動と音速の関係を求める計画とのことです。
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