「アメリカ政府の核爆発対策マニュアルがロシアのウクライナ侵攻後に更新された」と話題になるも内容は以前と変わらず

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が国際的な非難を浴びる中で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月27日に核戦力を持つ核抑止部隊に高度な警戒態勢へ移行するよう指示するなど、核兵器が使用される懸念も浮上しています。そんな中、「アメリカ政府の核爆発対策マニュアルがロシアのウクライナ侵攻後に更新された」として、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsで話題となっています。

Nuclear Explosion | Ready.gov
https://www.ready.gov/nuclear-explosion

Updated rules on preparedness for nuclear explosion | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=30508709

話題となっている核爆発対策マニュアルは、アメリカ政府がさまざまな災害や緊急事態に備えたマニュアルを公開している「ready.gov」でチェックできます。「核爆発」のページにアクセスすると、大規模な核爆発への恐怖を引き起こすような画像が表示されていました。

ページはいくつかの項目に分けられています。「Nuclear Explosion(核爆発)」という項目では、核兵器とは核反応を利用して爆発を起こす兵器のことを指し、個人が持ち運べるサイズからミサイルで撃ち込まれるサイズまでさまざまなものが存在することや、爆発後に降り注ぐ放射性降下物が危険であることなどが説明されています。

核爆発後の放射性物質を避けるには建物の中に入り、汚れた衣服を脱ぎ、できるだけ外壁や屋根から離れた場所に避難することが推奨されています。また、地方自治体が別の指示を出さない限り、爆発後24時間は建物の外に出ないことも指示されています。他にも、爆発に遭遇した際には破片や爆風から身を守るためにうつぶせとなることや、緊急時に備えて必要物資の備蓄を行うことなどが記されていました。

このマニュアルが話題となったのは、ページの末尾に「Last Update：02/25/2022」と記されていたため。ロシアによるウクライナ侵攻の翌日に更新されたことから、「アメリカ政府はロシアとの核戦争を視野に入れているのではないか？」という疑念が生じたわけです。

ところが、アーカイブ閲覧サービスの「ウェイバックマシン」で公開されている2022年2月6日時点の同ページを確認すると、記されている内容は全くと言っていいほど同じであることがわかります。

唯一と言える違いは、末尾の関連コンテンツにある「Health and Human Service(保健福祉)」という項目が、2022年2月25日更新の最新版だと削除されている程度でした。なお、この項目のリンク先はアメリカ合衆国保健福祉省の放射線緊急医療管理(REMM)が公開している、核兵器に関する情報提供を行うページとなっていました。

Hacker Newsでもマニュアルの内容がほとんど更新されていないことは指摘されていますが、マニュアルの内容についてさまざまな意見が噴出しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策もマニュアルに含まれていることに関して、「核爆発を生き延びたばかりで助けが必要な時は、911に電話して自分がCOVID-19かどうかオペレーターに知らせなくてはならない。完全に狂ってる」といったコメントや……

このコメントはマニュアルの内容を直接引用したものではなく、マニュアルにはオペレーターなどに関する言及はないと指摘するコメント、爆発した地点からの距離によっては放射性降下物よりもCOVID-19のリスクが上回ることも考えられるため、COVID-19についての言及は無駄とは言えないとするコメントもあります。

さらに、「もし核攻撃の警告が出されたなら、せめて死ぬ時の苦しみを最小限にするために、予想される震源地に向かった方がいい」と主張する悲観的なコメントもありました。

なお、ロシアが核戦力を念頭に置いた発表を行ったことについて、アメリカのジョー・バイデン大統領は「核戦争を心配する必要はない」との見方を示していますが、核戦争時に指揮を執るために設計された航空機「ドゥームズデイ・プレーン」の訓練が行われたことも報じられています。

核戦争用に作られた「ドゥームズデイ・プレーン」がロシアの核兵器使用に備えて訓練を開始 - GIGAZINE