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「核の冬」が来る可能性がある世界で知っておくべき知識

By Miran Rijavec

世界には地球を何度も滅ぼすことができるくらいに多数の核兵器が存在しています。そんな核兵器が多数存在する世界に生きているからこそ知っておくべきポイントをまとめたムービー「Why You Should Care About Nukes」がYouTube上で公開されています。

Why You Should Care About Nukes - YouTube


ムービーでは物理学者のマックス・テグマーク氏が、友人・ヘンリーの抱いた核兵器に関する疑問に次々と答えてくれます。というわけでヘンリーの最初の質問は「なぜ我々は核兵器に関心を持たなければいけないのか?」というもの。


「それは、核兵器が我々が最初に考えていたよりもずっと危険なものだから」とマックス氏。核兵器の最も危険なポイントは爆発で大量虐殺が可能な点でも、爆発により生じる放射性降下物(死の灰)による被爆でも、高高度爆発で起きる電磁パルスでもないそう。


「最も恐れるべきなのは、ひとつの核爆弾の爆発が引き金となり核の冬が訪れてしまうこと」とマックス氏。核爆弾が1000個爆発するだけで、地球を覆う大気は真っ暗になり、1年中冬のミニ氷河期を起こすことができるとのこと。


もしもミニ氷河期が実現すれば、世界的な食料システムは崩壊し……


地球上の70億人の人々が死に絶えるという未来も起こりえる模様。


ここでヘンリーが「でも、冷戦終了時にほとんどの核兵器は処分されませんでしたか?」と質問したところ、それは「YESでもありNOでもある」とマックス氏。


冷戦終了時、アメリカとロシアは多くの核兵器を処分しました。しかし、現在もこの2国は多くの核兵器を所持しており、その数はそれぞれ7000を超えています。つまり、アメリカとロシアはそれぞれが独力だけで核の冬を複数回実現できるくらいの量の核兵器を所有しているわけです。


「でも、誰も正気で核戦争を始めようとは思っていないと思うのですが、なぜ僕が核の冬が起きる心配をしないといけないのですか?」とヘンリー。


これに対するマックス氏の回答は「確かに君の考える通り、全面的な核攻撃は起こりそうもないです。なぜなら、核戦争が起こる可能性が最も高いのは政治的な理由からではなく、偶然により起こる方があり得そうだからです」というもの。


実際、欠陥のあるコンピューターチップが、アメリカの警報システムを誤作動させてて「ソ連からミサイルが飛んできた」と警告したことがあり、この際アメリカ政府はソ連側に十分な報復を行なう準備を進めていたそうです。


また、ロシアの人工衛星が「雲に反射した太陽光」を、アメリカから飛んできたミサイルと誤認したこともあります。


さらには冷戦終了後、ロシアのレーダーシステムがノルウェーが発射した学術を目的とするロケットをアメリカの核ミサイルと誤認し、反撃の体制をとったこともある模様。


これらは全て、未然にコンピューターやシステムの誤認であることが判明したおかげで報復攻撃が行なわれるには至りませんでしたが、「いつ人類の命運が尽き、偶然から核戦争が起きても不思議でない」とマックス氏。


続いてヘンリーは「核兵器を完全に処分することは国家安全保障の脅威になりませんか?」と質問。


「効果的に核攻撃を防ぐには、少数の核兵器を必要とするのは明らか。また、その他の国家に対する脅威に対しての抑止力にもなる」とマックス氏。


しかし、何千という核兵器を所有することで「偶発的に核戦争が発生するリスクを負うこと」は愚かで物騒で無責任なことだ、とマックス氏。


そして「過度な核兵器保有を続ければ、核の冬がいつか来るのは明らか」と語ります。


ここまでの内容に納得したヘンリーは、最後に「なぜ核兵器について心配しながら生活を送らなければいけないのですか?もしも核戦争が起こってしまえば、僕にできることは何もないと思うのですが」と質問。


マックス氏は「もちろん君にもできることはあります。核兵器開発競争は安全保障のためだけに行なわれているわけではありません。金銭や虚勢を張りたがる政治家も核兵器開発競争を引き起こす原因のひとつです」と回答。


実際に、核兵器の製造・開発に対する投資を縮小していくべきタイミングであるにもかかわらず、アメリカとロシアでは投資を増強する計画が存在するそうです。


また、S&P 500に含まれる500の企業のうち2%は核兵器開発に関連する企業なので、納税を止めることはできなくてもこれらの企業が核兵器開発競争に参加することを非難することはできる、とマックス氏は主張しています。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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