サイエンス

核廃棄物処理場で起きた爆発事故の原因は「ネコ用トイレの砂」であったことが1年以上にわたる徹底調査の末に判明

By ANDREA JANDA

2014年2月14日、ニューメキシコにある核廃棄物隔離試験施設(WIPP)で爆発が発生し、施設内で貯蔵していた核廃棄物から放射能漏れが検知され、施設で働く複数人が内部被曝するという事故が起きました。この爆発事故について、アメリカ合衆国エネルギー省は1年以上にわたり徹底的に調査を行っていたのですが、ついに調査結果をまとめた277ページのレポートを公開し、爆発の原因がネコ用トイレに使われる「ネコ砂」であったことが明らかになりました。

Microsoft Word - 2015-03-17_FINALRev0_SRNL-RP-2014-01198c - MARCH 2015 - FINAL TECHNICAL ASSESSMENT TEAM REPORT.pdf
(PDF注意)http://energy.gov/sites/prod/files/2015/03/f20/MARCH%202015%20-%20FINAL%20TECHNICAL%20ASSESSMENT%20TEAM%20REPORT.pdf

Official Report: Nuclear Waste Accident Caused By Wrong Cat Litter : The Two-Way : NPR
http://www.npr.org/blogs/thetwo-way/2015/03/26/395615637/official-report-nuclear-waste-accident-caused-by-wrong-kitty-litter


爆発事故が起きたWIPPはアメリカで最も古い核廃棄物の貯蔵施設です。貯蔵される核廃棄物の大半は防衛関係の研究や核兵器製造で用いられた使用済みプルトニウムです。

施設で貯蔵される核廃棄物は、トラックで運ばれます。

By Los Alamos National Laboratory

核廃棄物を運ぶトラックの群れ。

By Sandia Labs

施設内では核廃棄物が詰まったドラム缶をフォークリフトで貯蔵庫まで運びます。

By Los Alamos National Laboratory

核廃棄物の貯蔵スペースは地下655メートルにある古代岩塩層に設けられています。

By Nuclear Regulatory Commis

実際の貯蔵スペースはこんな感じで、複数のドラム缶を山積み状態で保管している模様。

By Mouser Williams

アメリカ合衆国エネルギー省の調査によると、WIPPで発生した爆発は「68660」とナンバリングされたドラム缶に入った核廃棄物の爆発であることが分かっています。


爆発した後の「68660」ドラム缶。


マンハッタン計画の中で原子爆弾の開発を目的として創設された、アメリカの国立研究機関「ロスアラモス国立研究所」は原子力関係の実験を行っている施設のひとつで、この施設ではネコ砂を使用して液状の核廃棄物の清掃が行われていました。ネコ用トイレに使用されるネコ砂は非常に優れた吸収素材で、これは何年もの間、アメリカの原子力研究所で発生する液状の核廃棄物を清掃するために使用されてきたそうです。

普段は無機物で作られたネコ砂を使用して核廃棄物の処理が行われているのですが、ロスアラモス国立研究所で働くひとりの研究員が、ある日「Swheat Scoop」のネコ砂を使用して処理を行ったところ、これが有機物で作られたものであったため、後日ドラム缶が貯蔵庫内で爆発してしまうという大事にまで発展してしまったようです。

By Chris

レポートには「多種多様の硝酸塩と廃棄物を組み合わせる実験を行ったところ、Swheat Scoop、硝酸、シュウ酸塩を混ぜると、廃棄物が発熱して温度が100度近くまで上昇することが分かった。これらの情報を基にコンピューターによる熱暴走シミュレーションを行った結果、これらの混ざったドラム缶は70日程度で爆発することが明らかになり、これは『68660』と書かれたドラム缶が爆発したという実際の爆発事故のデータとも一致する内容であった」と書かれています。

ドラム缶の中に入っていたのは硝酸塩・Swheat Scoop・トリエタノールアミンを含むKolorSafeという液体・固形廃棄物・中和液。


ドラム缶中心部が70日後には250度を超える高温となり、最終的に爆発してしまったというわけ。


なお、アメリカ合衆国エネルギー省は2016年初め頃のWIPP再稼働を希望しているそうです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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