ウクライナで仮想通貨「テザー」などが難民になっても個人の財産を守れるので人気に、中央銀行が現金の引き出し・送金を停止したため

2022年2月24日に侵略を開始したロシア軍が首都キエフに迫り、戦火のさなかにあるウクライナでは、銀行のATMなど既存の金融システムがまひしても使える上に価格も安定している仮想通貨「テザー」が人気を集め、一時的にアメリカドルを10％も上回る価格で取引されていると報じられています。

How Ukrainians are fundraising in cryptocurrency - The Verge
https://www.theverge.com/2022/2/26/22952357/ukraine-bitcoin-ethereum-donation-vitalik-buterin

Ukranian bank suspends e-cash transfers, bolstering crypto use case
https://www.cnbc.com/2022/02/24/ukranian-bank-suspends-e-cash-transfers-bolstering-crypto-use-case.html

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月24日に、ロシア軍の攻撃が始まったことを理由とする全国的な非常事態宣言を発令しました。これを受けて、ウクライナの中央銀行であるウクライナ国立銀行は同日、現金引き出しの制限や外国為替市場の停止を打ち出したほか、電子マネーの発行や流通を一時規制する措置を発表しました。これには、PayPalやVenmoなどに預けられた不換通貨の資産を凍結し、戦時下における金融の混乱を抑制する意図があると見られています。

また、ウクライナから避難した難民の人々からは、国に残した預金へのアクセスができなくなったとの声も挙がっています。ウクライナの写真家だというTwitterユーザーは「ウクライナのクレジットカードはもう使えません。物理的にはカザフスタンにいるので安全ですが、預金はすべてなくなってしまいました。私に残された唯一のお金は仮想通貨しかないので、ビットコインやイーサリアム、非代替性トークン(NFT)は誇張抜きで家に戻れない間に私の命をつないでくれる存在です」と報告しました。

ウクライナのお金が使えなくなり、ロシア軍がウクライナ全土を包囲しつつある中、ウクライナの人々は仮想通貨に目を向け始めていると伝えられています。特に、ウクライナの人気仮想通貨取引所であるKunaでは、アメリカドルとペッグされたステーブルコインであるテザーが人気とのこと。

汚職などにより政府や金融当局への不信感が強いウクライナでは、以前から自国通貨のウクライナフリヴニャだけでなくドルも流通していました。また、ウクライナは20万人以上のIT技術者を擁する技術立国としても知られており、多くのウクライナ人が仮想通貨に精通しています。こうした理由を背景にウクライナでテザーの需要が一気に増加したため、1テザー(USTD)が一時的に約32フリヴニャ、ドルに換算して約1.1ドルで取引されるほど値上がりしました。

ウクライナの危機に対し、国際的な仮想通貨コミュニティはウクライナを支持するメッセージで応えています。イーサリアムの生みの親であるロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリン氏は2月24日に「ウクライナとの紛争を平和裏に解決する可能性を放棄し、その代わりに戦争を始めるというプーチン大統領の決定には非常に憤慨しています。これは、ウクライナとロシアの人々に対する犯罪です。平和でないことを知りながらも、人々の平和を祈らずにはいられません。ウクライナに栄光あれ」とツイートしました。

また、ロシアのパフォーマンスアート集団「プッシー・ライオット」は2月25日に、ブロックチェーン技術を用いたウクライナ支援基金である「UkraineDAO」を立ち上げたことを発表しました。

さらに、仮想通貨取引所・FTXのサム・バンクマン・フリードCEOは25日のツイートで「FTXでウクライナ人に25ドル(約2800円)を配ったところです。やるべきことをやりましょう」と発表しました。