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新型コロナ接触確認アプリの普及の遅れがアメリカで感染爆発を引き起こしているという指摘


新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の感染者数が世界各国で急増している件について、アメリカの大手紙・ワシントンポストが、「感染拡大が続いているにもかかわらず、アメリカ人の多くがいまだに接触確認アプリを使用していない」と批判しています。

Omicron is spreading across the U.S. but few people use exposure notifications - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2021/12/29/omicron-exposure-notification-apple/

Apple addresses slow uptake of COVID-19 exposure notification apps - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2021/12/29/apple-slow-uptake-covid-19-exposure-notifications/

新型コロナウイルスのパンデミック発生直後である2020年4月に、GoogleとAppleは「新型コロナウイルスの陽性反応が出た人と接触した場合に通知するシステム」を構築しました。世界中のスマートフォンのOSを開発する2社に対し、スマートフォンで世界各国は新型コロナウイルスの拡散を追跡できるようにすることを強く求め、GoogleとAppleが開発したAPIを基にアプリを開発しました。日本でも2020年6月に新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」がリリースされました。

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また、GoogleとAppleは接触確認APIをOSに組み込むことで、たとえ住んでいる国や地域がアプリをリリースしていなくても、感染者との接触通知をスマートフォンで受けられるようにしています。

しかし、APIのリリースからおよそ2年が経過してオミクロン株の感染が拡大しています。記事作成時点ですでに感染者数約5770万人・死亡者数約83万人を記録しているアメリカでは、特に感染者と死亡者の多いフロリダ州やテキサス州を含めた20以上の州で、接触確認アプリの使用率が著しく低いとワシントンポストは伝えています。例えば、カリフォルニア州がリリースする接触確認アプリは、1500万台以上のデバイスにインストールされているとのことですが、起動してから約390万人の感染が報告されたにもかかわらず、アプリに陽性であると登録されたのは約3%に過ぎなかったとのこと。


これはアメリカだけの話ではなく、接触確認アプリへの陽性登録率が低いことは他の国でも問題となっています。カナダでは、接触確認アプリの開発に2000万カナダドル(約18億円)を投入したにもかかわらず、陽性登録が少なすぎると話題になりました。

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そもそもアメリカの公衆衛生システムは州政府や郡政府などの自治体に委ねる分散型となっているため、接触確認アプリも統一できていないのが現状。さらにワシントンポストは「ドナルド・トランプ氏が大統領だった共和党主導政権時には、ウイルスのリスクを意図的に軽視し、広範な公衆衛生対策を怠っていた部分もある」と批判しています。

まだワクチンが開発されていなかった2020年には、公衆衛生当局は「ソーシャルディスタンスの維持」「マスク装着の徹底」を広く訴えていましたしかしワクチンが承認を受けて積極的に接種が始まった2021年には、公衆衛生当局からのメッセージのほとんどが「ワクチン接種」を訴えるものがほとんどになりました。


GoogleやAppleのチームは州政府や連邦政府の関係者と何度もミーティングを行い、世界中でこのAPIを使ってもらえるように訴えかけたそうですが、2021年夏にデルタ株が流行した時、ワクチン接種を促す大規模なキャンペーンが展開されたものの、検査や感染の追跡にはほとんど焦点が当てられなかったとのこと。

Appleの戦略的ヘルスケアイニシアチブの責任者でAPIの開発にも携わったミョン・チャ氏は「連邦政府は、より多くの人に接触確認アプリを導入してもらう機会を何度も逃してきました。バイデン政権が発足した時、ウイルスに打ち勝つ銀の弾丸として、ほとんどすべての予算をワクチンに投入しました。これは最大の失敗だったと思います」と述べ、オミクロン株の急速な感染拡大は接触確認アプリの導入が遅れていたことも一因であるとしています。

新型コロナウイルスパンデミック対策のテクノロジータスクフォースは、2021年1月から4月にかけて、接触確認アプリの認知度を高める広告キャンペーンを展開しました。しかし、この活動はほとんどボランティアによるもので、政府主導で行われたワクチン接種推奨キャンペーンに比べると予算がかなり少なかったとのこと。タスクフォースの共同議長を務めるカメカ・デンプシー氏は「新型コロナウイルスへの曝露(ばくろ)通知を利用する国家戦略が必要であり、ワクチンやPCR検査、新薬による治療と同じように、接触確認アプリはウイルスと戦うためのツールの1つと見なされるべきです」とコメントしました。

一方で、政府説明責任局(GAO)は「接触確認アプリがクラスターの発生を抑える効果があることを示すデータはほとんどない」としています。GoogleとAppleが開発した接触確認APIはBluetoothを利用するので、トークンの収集においてはスマートフォンが常にオンラインである必要はありませんが、濃厚接触の通知を受けるためにはオンラインであることが必要です。ワシントンポストによれば、アメリカ人の約15%がスマートフォンを持っておらず、特にウイルス感染のリスクが最も高い高齢者の間ではスマートフォンの使用率がもっと低くなるとのこと。

GAOの科学技術評価担当ディレクターであるカレン・L・ハワード氏は「アプリを導入している州から、アプリが効果的であるという情報が発信されなかったため、アプリの導入が遅れている州や、導入コストに懸念を抱いていた州はアプリ導入を見送ったという経緯があります」と述べています。

また、普段からユーザーの膨大なデータを収集しているGoogleやAppleが開発したAPIを利用しているということで、プライバシー上の懸念が強いことも、アプリの使用を妨げている要因の一つだとワシントンポストは指摘しています。実際のところ、GoogleやAppleは接触確認APIに関するプライバシー上の懸念を否定しており、外部の専門家もそのことをチェックしています。「それでも、個人の健康データをビッグテクノロジーと結び付けることは、多くの人を不安にさせます」と、ワシントンポストは述べました。


ただし、接触確認アプリに効果があることを示すデータは存在します。2020年9月に発表されたオックスフォード大学とGoogleの研究チームによる研究では、「アプリの使用率が15%でも新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることができた」と主張されています。また、イギリスとウェールズの住民を対象として行われた調査では、対象者の56%以上が接触確認アプリをスマートフォンに導入しており、60万件の新型コロナウイルス感染を防ぐことができ、アプリの利用者が1%増えるごとに新型コロナウイルス感染症と思われる症例が2.3%減少したと報告されています。

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アメリカのコロラド州では、オミクロン株の感染拡大を受けて接触確認アプリの使用率が増加しており、300万人以上がコロラド州の接触確認アプリの通知を有効にしているそうです。さらに2021年11月19日から12月2日の間にコロラド州の接触確認アプリで陽性登録が4087件にのぼっており、これは同時期に報告された感染者数の約12%にあたるとのこと。

GoogleとAppleの広報担当者は共同で「私たちは、この歴史的なパンデミックにおいて公衆衛生当局を支援するために、プライバシーを保護するやり方で接触通知システムを構築しました。公衆衛生当局と協力し、世界中の何百万人もの人々が利用しているリソースを提供することで、公衆衛生の保護に貢献できたことを誇りに思います」とコメントしています。

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in メモ,   モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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