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なぜ半導体不足が世界規模で起きているのか?


世界的な半導体不足が報じられていますが、一方でIntelのパット・ゲルシンガーCEOは、「自動車メーカーが望めば、いくらでも当社製の新しい16nmチップを供給します」と述べています。なぜ世界的に半導体不足が起こっているのか、現状の何が問題なのかが、ベンチャーキャピタルであるYコンビネータによって運営されるソーシャルニュースサイト・Hacker Newsでその背景から論じられています。

Ask HN: Why is there a chip shortage? | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=29781027

Hacker NewsのユーザーであるTradingPlaces氏が示した半導体不足の流れは以下の通り。

1:パンデミックの間に耐久消費財の消費量は10~11%だったものが13%にまで増加しました。この3パーセントポイントの消費量を金額で表すと、年間約5000億ドル(約58兆円)になります。これら耐久消費財の多くは安価なマイクロコントローラやハイエンドのSoCが付属しているのが一般的。また、最新式の自動車にも安価なマイクロコントローラが数十個搭載されています。

2:一方で耐久消費財に対する過去10年の支出を見ると、パンデミックが始まる以前は一貫して低かったことがわかります。サプライチェーンは2019年以前、この需要の低さに合わせる必要がありました。


3:上記の背景から、サプライチェーンではこれまで「各工程に必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給することで在庫を徹底的に減らして生産活動を行う」というジャストインタイム生産システム(JITシステム)を採用してきました。この方法は生産効率を高めることができる一方で、急激な需要増加に対応できないという弱点を持ちます。

4:また、これまでは大きくなかったチップの利用分野に、電気自動車(EV)が加わりました。


例えば電気自動車メーカーのテスラは、自動運転車用の独自のAIチップを開発しています。

テスラが自社で自動運転用のAIチップを開発、NVIDIAシステムの10倍の性能とマスクCEOは豪語 - GIGAZINE


5:加えて、最新のチップではなく薄利多売されているような非常に安価なARMRISC-Vに対しても、自動車製造分野においてチップ需要が生まれています。

自動車メーカーが最新式のチップではなく古い技術を採用する理由は、以下で詳しく語られています。

自動車産業が半導体不足で苦しんでいるのは誰のせいなのか? - GIGAZINE


6:2019年は景気降下サイクルにあり、多くの企業が未稼働設備を抱えている状態でした。

7:パンデミックが始まると、企業はさらなる需要低下を予測し、より多くの設備を未稼働としました。この行動が企業を「抜けられない落とし穴」に入れることになりました。

8:アジア地域におけるCOVID-19の大流行で工場に混乱が生じました。アジア地域の工場がどれほどの打撃を受けたのかは、以下の記事から読むことができます。

新型コロナウイルスの影響でFoxconnやSamsungのハイテク工場に閉鎖命令 - GIGAZINE

by Robert Scoble

Foxconnのインド工場におけるiPhone生産能力が50%以上も減少、新型コロナの感染爆発が原因か - GIGAZINE


9:輸送のボトルネックがさらに状況を複雑にしました。アメリカでは特に貨物輸送の問題が指摘されており、この大混乱を避けるためにAmazonはコンテナを自作していることも報じられています。

Amazonはなんとコンテナを自作し海上流通の大混乱を回避していた、その綿密な戦略の全貌に迫る - GIGAZINE


また、輸送の混乱がどのような状態にあるのかは、以下の記事からも読むことが可能です。

「貨物の津波が来る」と海上輸送会社が語る、太平洋で一体何が起きているのか? - GIGAZINE


「100年に1度の経済危機」を生き延びることができるのは誰か? - GIGAZINE


なお、半導体不足の中心になっているのは自動車メーカーが使う120nmチップとのこと。上記の通り、自動車メーカーが利用するのは最新チップではありません。従来型の120nmチップについても需要の伸びが低く利益率が低いため、何年にもわたって投資不足の状態にありました。ゲーム機やiPhoneも最新式のチップだけでなく従来型のチップを多数使用しているため、これらのチップが不足することで生産に問題が生じているとHacker Newsでは論じられています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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