27年にわたる巨大シロアリコロニー駆除の戦いでついに人類が初勝利、イギリス全土でのシロアリ大繁殖を阻止することに成功
イギリスのデヴォン州で1994年に勃発したシロアリ対人類の戦争が、ついに人類側の勝利で幕を下ろしました。繁殖力の高いシロアリに対して、イギリス側は数十万ポンド(数千万円)という公的資金を投じて抵抗を続け、シロアリの成長を繁殖を抑制する「昆虫成長調節剤」を投入してついにシロアリを根絶。イギリス全土へのシロアリ拡散を阻止できたというだけでなく、「世界で初めて人類がシロアリに勝利した例」として報じられています。
‘A world first’: Devon calls victory in 27-year war on termites | Devon | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2021/dec/21/a-world-first-devon-calls-victory-in-27-year-war-on-termites
イギリスのシロアリ戦争の幕開けとなったのは、1994年にデヴォン州在住の女性が「温室にシロアリが沸いた」と害虫駆除業者を呼んだことが発端でした。この害虫駆除業者が調査を行ったところ、すでに温室の地中にシロアリのコロニーが形成されており、すでに「数百万匹」も繁殖していたとのこと。
この一件は「イギリス初のシロアリのコロニー」と認められ、イギリス政府側はシロアリ根絶プログラムを発足。水際で繁殖を抑えようと試みました。
シロアリは、アメリカの害虫管理協会が「年間50億ドル(約5700億円)の被害を出している」と言及するほど、建材に対してダメージを与えるとされています。とりわけ最大の問題はそのステルス力と繁殖力にあり、今回のシロアリ根絶プログラムも多数の専門家から失敗を予想されていたとのこと。
シロアリ根絶プログラムに携わった担当者はシロアリの成長と繁殖を阻害する昆虫成長調整剤を投入しました。これにより2000年からおよそ9年間にわたってシロアリの目撃情報は途絶えましたが、2010年に土中に潜むシロアリが発見されたため、プログラムは延長されました。2012年に入ってシロアリが発見された物件の所有者が「上物を取り壊して新しくしたい」と申請しましたが、解体・建設工事によってシロアリが広範囲に拡散する可能性があったことから、当局は申請を却下。シロアリは建物自体に潜んでいるではなく、建物はあくまでエサで、土地側を住居としているという点も考慮に入れた上で、「イギリスで唯一シロアリを寄せ付けない建物」が建設されたとのこと。
こうして物件所有者の協力を得つつシロアリ根絶プログラムは進行し、2021年5月に行われた最終調査によって、「シロアリの根絶」が確認されました。シロアリ根絶プログラムの発足メンバーであり、2003年から運営を担当しているというシロアリ駆除専門家のエド・サッティ博士は「シロアリに勝った国は他にありません。世界初なんです」とコメントしました。
イギリス大手紙のThe Guardianによると、今回問題となったシロアリ種は温暖化の影響などを受けて南ヨーロッパで大繁殖しており、フランスはシロアリの影響を受けている地域において「家を売却する際には、『シロアリが存在しない』という証明書を提出する必要がある」という法律を制定したとのこと。The Guardianは「人類の創意工夫と我が国の血気盛んな気質によって、シロアリを心配しなければならない未来から国を救うことができた」と賛辞を送っています。
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