サイエンス

現代科学でも謎の「雷はどうやって生まれるのか」を電波望遠鏡で観測した結果とは?


「雷はどうやって生まれるのか」は、実は、現代の科学をもっても明らかにされていないところ。この謎を解明すべく、新たに研究者が銀河の観測に使う電波望遠鏡・LOFAR(LOw Frequency ARray/低周波アレイ)を使って、雷が生まれる様子を高解像度・3Dデータで捉えました。

Radio Telescope Reveals How Lightning Begins | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/radio-telescope-reveals-how-lightning-begins-20211220/

The Spontaneous Nature of Lightning Initiation Revealed | Earth and Space Science Open Archive
https://www.essoar.org/doi/10.1002/essoar.10508882.1

雷についての研究は古くから存在し、1752年にはベンジャミン・フランクリンがタコを用いた実験で、雷の正体が電気であることを明らかにしました。しかし、実は、「雷はどのように生まれているのか」という謎は、いまだ解決していません。

雷が生成されるプロセスの主流な仮説としては、「雷雲の中で、小さな氷の結晶が上昇してひょうとして降る際に、結晶の中の負に帯電した電子がこすり落とされ、雲の上部が正に帯電、下部が負に帯電する。これにより巨大な火花を生み出す電界が生成される」というものがあります。しかし、雲の中の電場は火花を生み出すには小さすぎるといわれており、実際に雷雲の中にロケットや風船を送り込んで調べても、やはり火花を生み出すのに十分な電場は観測されていないそうです。


雷が生まれる謎を解き明かす上での課題は、雲が不透明であり、精度の高いカメラであっても雷が生まれるその瞬間を撮影できないことにあります。そこで、ニューハンプシャー大学の物理学者であるJoseph Dwyer教授はオランダにある電波望遠鏡・LOFARを利用することにしたとのこと。

以下がLOFAR。


LOFARは通常、銀河間ガスや磁気嵐といった宇宙で起こる現象を観測します。雷は光とともに無線パルスを発散しますが、無線パルスは光と違って分厚い雲を通過することが可能です。LOFARはこの無線パルス検出することで、雷を高解像度・3次元的にマッピングすることができるとのこと。雷を無線検出器でマッピングする試みは新しいものではありませんが、多くは低解像度で2次元的であり、この点がLOFARを使った観測と異なります。

LOFARが観測したデータのアニメーションは、以下の画像をクリックすることで見ることができます。


2018年8月、研究チームはLOFARを使って収集したデータを分析し、雷雲の深さ70メートルのところから無線パルスが発せられていることを明らかにしました。研究チームによると、観察した無線パルスのパターンは雷形成についての2つの考えを支持するとのこと。1つは「宇宙線が雷雲の中の電子と衝突し、電子雪崩によって電場が強化される」という仮説。もう1つは「氷の結晶が衝突して、一端が正に、もう一端が負に帯電。正に帯電した氷の一端は空気中からより多くの電子を集め、そこから『イオン化された空気のリボン』、いわゆるストリーマ(放電路)が伸びるようになる。ストリーマは周囲の空気を加熱し、空気中からより多くの電子を引き離し、氷の結晶に多くの電流を流すようになり、最終的に雷が形成される」という仮説です。

研究者は、ストリーマが大量に形成されることで無線パルスが指数関数的に増加し、電子雪崩が止まったところで稲妻が形成されると考えています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって世界中で封鎖が行われた結果、氷の結晶の「核」となる、大気中の汚染物質が減少しました。この時期、雷の発生が10%減少したことが観測されており、研究者の考えはこの観測結果とも一致するものとなっています。

ただし、今回の研究では、空気をイオン化する氷の粒子を直接的に映し出しておらず、「最初の電子はどこから来るのか」「氷の粒子の近くで放電がどのように起こるのか」というところまでは明かされませんでした。このため、ストリーマがどのように稲妻を生み出すのかは、まだ謎が残るところです。一方で、これまで雷の研究は高解像度データの不足により、正確なシミュレーションを構築することができなかったため、この研究で得られたデータは雷研究の重要な一歩になるとみられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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