サイエンス

高い場所にいるときにふと「飛び降りたらどうなるかな?」と思ってしまう「虚空の呼び声」とは?


高い場所にいるとき、落ちたら助からないと理解しているにもかかわらず「ここから飛び降りたらどうなるだろう」と考えたり、車を運転中に「対向車に突っ込んだらどうなるだろう」と考えたりしたことがある人はいるはず。このようなふと頭をよぎる恐ろしい考えの正体について、科学系メディアのLive Scienceが解説しています。

What is the 'call of the void'? | Live Science
https://www.livescience.com/what-is-call-of-the-void


実行に移せば甚大な被害を受けることは分かっている危険行為について考えてしまうというのは非常に一般的であり、2つの研究により「2人に1人が考えたことがある」という結果が示されているほど。フランス語にはこの考えを表す単語さえあり、それは「l'appel du vide(虚空の呼び声)」というものです。


虚空の呼び声と人間の精神状態との関連性を探るべく431人の大学生を対象に行われた調査では、死にたいと願う気持ち(自殺念慮)を1度でも抱いたことのある人の75%は、虚空の呼び声を少なくとも1回経験したことがあることが分かっています。ただし、自殺念慮を抱いたことがない人の半数以上も虚空の呼び声を経験したことがあるということも分かっており、自殺念慮と虚空の呼び声との間に不可逆的な関連性はないということが示されています。

調査を行ったルール大学ボーフムのトバイアス・テイスマン氏らは虚空の呼び声を「脳が発する危険信号を脳が誤解した結果」だと仮定しています。例えば人が高い場所に立った場合、脳の恐怖をつかさどる神経がすぐさま「この場所は危険だから逃げろ」という信号を発するため、人は無意識のままに危険な場所から離れようとします。そして、脳は信号から一歩遅れて「近づくと危ない」という考えを認識し、人はこれを「やってみたいと思ったこと」だと誤解してしまうのだとのこと。

テイスマン氏は虚空の呼び声と自殺念慮や不安神経症との関係性を否定し、「虚空の呼び声は人に死を呼びかけるものではなく、人の『生きたい』という潜在意識を反映したものである可能性が高いです」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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