ソフトウェア

ディープラーニングで交通事故の発生を高精度で予測するモデルをMITが開発


マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)とカタール・コンピューティング・リサーチ研究所(QCRI)の研究者が、高解像度の衝突リスクをディープラーニングで予想するモデルを開発しました。このモデルは、過去の自己データや道路地図、衛星画像などから、交通事故が起こるリスクの高いエリアを特定し、将来の事故を予測するリスクマップを作成することができます。

Inferring High-Resolution Traffic Accident Risk Maps Based on Satellite Imagery and GPS Trajectories - He_Inferring_High-Resolution_Traffic_Accident_Risk_Maps_Based_on_Satellite_Imagery_ICCV_2021_paper.pdf
(PDFファイル)https://openaccess.thecvf.com/content/ICCV2021/papers/He_Inferring_High-Resolution_Traffic_Accident_Risk_Maps_Based_on_Satellite_Imagery_ICCV_2021_paper.pdf

Deep learning helps predict traffic crashes before they happen | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2021/deep-learning-helps-predict-traffic-crashes-1012

交通事故は発生頻度が低いにもかかわらず、交通事故による損失は世界全体のGDPの約3%を占め、子どもや若者の死因の第1位となっています。研究チームによれば、交通事故のスパース性(希薄さ)が高解像度なマップの作成を難しくしているとのこと。5メートル×5メートルという精度で交通事故の発生を推測した場合、1年以内に事故が起こる確率は約1000分の1で、同じ場所で事故が起こることはほとんどないそうです。

研究チームはこれまでの事故記録に加えて、交通密度や速度、方向を示すGPSの軌跡パターン、車線数、路肩の有無、歩行者の多さ、道路構造を示す衛星画像を用いて、危険性の高い場所を機械学習で特定し、2年後までの事故発生確率を示したリスクマップを作成しました。研究チームによれば、これまで事故の記録がない場所であっても、交通パターンと地形だけで危険度が高いと判断された地域もあるそうです。


これまでにも交通事故のリスクを予測して地図に重ねるという試みは行われてきましたが、数百メートルという低い精度で予測されていたために細かい部分がぼやけてしまい、重要な部分が見えなかったと研究チームは指摘。これに対して、今回CSAILとカタール人工知能センターが発表したリスクマップは5メートル×5メートルを単位としており、これまでのものよりもはるかに高解像度であることがポイントです。

このAIモデルとリスクマップを評価するため、科学者たちは2017年と2018年のデータを用いて、2019年と2020年の衝突事故を予測する性能をテストしました。その結果、入力データでは事故が記録されていない地域で「事故発生リスクが高い」と認識された場所で、実際に衝突事故が発生していることがわかりました。

以下のマップは、上からロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ボストンの地図で、左の3つは「従来のカーネル密度推定が過去の事故データを基に作成したもの」「CSAILとQCRIのモデルが過去の事故データなしで作成したもの」「CSAILとQCRIのモデルが過去の事故を基に作成したもの」となっています。右の2つは「CSAILとQCRIのモデルによる事故発生を予測したもの」と「実際に事故が発生したポイントをまとめたもの」で、比べてみるとかなり近いことがわかります。


QCRIの主任研究員で論文の著者でもあるアミン・サデギ氏は「私たちのモデルは、一見関係がないようなデータから得られる複数の手がかりを組み合わせることで、未知の領域での衝突マップを予測することができます。このモデルは過去の事故データがなくても有用な事故マップを推測でき、都市計画や政策立案に積極的に利用できます」と述べています。

さらに、サデギ氏は「もしリスクマップを使って潜在的にリスクの高い道路を特定できれば、事前に外出のリスクを減らすことができます。WazeやApple Mapsのようなアプリには発生した事故をリアルタイムで通知してくれる機能がありますが、私たちは事故が起こる前に先手を打とうとしているのです」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ハードディスクに障害が発生する可能性を機械学習で予測する研究 - GIGAZINE

コンピューターに物事を学習させる「デイープラーニング」はどのように実行されるのか? - GIGAZINE

ディープフェイクにより生み出される「偽の衛星画像」の脅威とは? - GIGAZINE

最先端のAI画像認識モデルでも正しく認識できない画像まとめ - GIGAZINE

in ソフトウェア,   乗り物, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.