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1922年以前の録音物は2022年1月にすべてパブリックドメインとなる


2018年9月にアメリカ連邦議会で可決された音楽近代化法によって、1922年以前の録音物はすべて2022年1月1日にアメリカでの著作権が失効してパブリックドメインとなる件について、パブリックドメイン関連のニュースサイトであるThe Public Domain Reviewが解説しています。

All Sound Recordings Prior to 1923 Will Enter the US Public Domain in 2022 – The Public Domain Review
https://publicdomainreview.org/blog/2021/12/all-sound-recordings-prior-to-1923-will-enter-the-us-public-domain-in-2022

音楽作品と音楽作品の録音物には、別個の著作権保護が行われます。たとえば、19世紀に作曲された童謡「メリーさんのひつじ」はすでに著作権が切れてパブリックドメインになっています。そのため、自由に歌ったり改変したりしてもOKです。ただし、誰かが「メリーさんのひつじ」を歌った録音物は歌った人や録音に携わった人の権利があるため、著作権保護の対象となっている限り、自由に改変したり配信したりしてはいけません。


音楽近代化法は、「Music Modernization Act(MMA)」「CLASSICS Act」「Allocation for Music Producers Act(AMP Act)」という3つの法案をまとめた著作権法改正法です。この法改正の目的は「音楽作品の録音権に関する新しい許諾制度の導入」「1972年以前の録音物を連邦著作権法の保護対象とする」「サウンドエンジニアやミキサーなど、録音物に関わった人も報酬を受けられるようにする」こと。また、その成立の背景には、ストリーミング配信ビジネスの隆盛にもかかわらず権利関係が複雑化したために古い録音物を自由に取り扱えなくなっている現状があります。

音楽近代化法は2018年5月にアメリカ連邦議会に提出されました。議会で論点になったのはCLASSICS Actで、この法案が承認されると1923年から1972年の録音物は2067年まで保護期間が延長されることとなりました。

最大144年まで古い録音の著作権保護期間を延長する法案がアメリカ連邦議会で議論中 - GIGAZINE


そもそも古い録音物は権利が散逸しているだけでなく、州や自治体の著作権法で保護されるものもあり、録音物によって権利の保護状況がバラバラになっていることがインターネットでの配信を難しくしていました。そこで、CLASSIC Actによって古い録音物の原盤権がすべて連邦著作権法に基づいて保護されることとなり、独立した著作権管理団体によって関係者に報酬が支払われることとなりました。

ただし、アメリカの連邦著作権法では、録音物の著作権保護期間は「リリースから最大95年、あるいは録音日から120年」と定められており、「2018年時点で著作権が失効していない1923年の録音物」から「録音物が連邦著作権法の保護対象になった1972年2月15日」までの録音物に関する著作権がどうなるかが論点となりました。最終的に成立した音楽近代化法による著作権保護期間は以下の通り。

・1922年以前のすべての録音物:2022年1月1日をもって著作権保護対象外に
・1923年から1946年までの録音物:95年+5年=100年(リリース日から)
・1947年から1956年までの録音物:95年+15年=110年(リリース日から)
・1957年から1972年2月15日までの録音物:2067年2月15日をもって著作権保護対象外に
・1972年2月15日以降のすべての録音物:リリースから95年あるいは録音日から120年のいずれか


古い録音物はクラシック音楽だけではなく、ブルースやジャズなどの貴重な音源も多く人気があります。1922年以前の作品がパブリックドメインとなることで、ストリーミング配信サービスでも自由に聴くことができるようになる可能性があります。

なお、日本での録音物の著作権については、日本レコード協会によると「レコードの保護期間は、最初に音が固定(録音)された時から始まり、そのレコードが発行(発売)された日(最初の録音後70年のうちに発行されなかったときは、最初の録音日)が属する年の翌年1月1日から起算して、70年後までとなります(著作権法第101条)。ただし、改正法施行日の前日(2018年12月29日)において権利が消滅している場合に保護が復活することはありません。また、1970年以前の著作権法(旧法)により保護されていたレコードについて、旧法の保護期間が新法(1971年以降の著作権法)を上回る場合は旧法の保護期間が適用されるという特例が存在します(最長で新法施行後70年にあたる2040年12月31日まで)」とのことです。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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