ネットサービス

ひっそりとパブリックドメイン化された膨大な書籍が電子書籍となって無料ダウンロード可能となっている

by Min An

パブリックドメインとは、著作物や発明などについての知的財産権が消滅した状態を指す言葉で、人々はパブリックドメイン化された創作物を自由に入手したり利用したりできます。アメリカではミッキーマウスのパブリックドメイン化を恐れたディズニーのロビー活動などによって、著作権の保護期間が次々に延長されてきた歴史がありますが、「大量の書籍が人知れずひっそりとパブリックドメイン化していた」とアメリカメディアのViceが報じています。

Where to Download the Millions of Free eBooks that Secretly Entered the Public Domain
https://www.vice.com/en_us/article/kz4e3e/millions-of-books-are-secretly-in-the-public-domain-you-can-download-them-free

記事作成時点でのアメリカにおける著作権保護期間は、著作者の生存期間および死後70年までが原則となっています。そのため、これまでに出版された作品を無料で読むには図書館などを利用する必要がありますが、実はアメリカにおいて「1964年以前に出版された多くの書籍」は、著者の死後70年を待たずにパブリックドメインとなっているとのこと。


1963年以前に出版された書籍の著作権保護期間は公表から28年間とされており、その後の著作権法改正に伴う保護期間延長を適用するためには、著者または出版社が著作権保護期間の延長申請をしなければなりませんでした。しかし、この手続きを行わなかった著者や出版社は多く、いくつかの書籍は1963年の書籍が出版されてから28年後の1991年までの期間中に、ひっそりと著作権が切れた状態となっていたそうです。なお、1964年以降に出版された書籍は、1992年からの著作権保護期間の延長対象となり、自動で保護期間が延長されています。

実際にどの書籍が延長申請による著作権保護の対象から外れているのかを調べるのは困難であり、長年にわたって密かにパブリックドメイン化されていた書籍の存在は見過ごされてきたとのこと。そこで、ニューヨーク公共図書館は著作権保護対象のカタログ情報をデータ化して解析し、実際の書籍と照合することで、1963年以前に出版された書籍のうち著作権が切れているものを判別しました。

by Thomas Hawk

大規模な取り組みによって、ニューヨーク公共図書館は全てがパブリックドメインとなっている1922年以前の書籍と、確実に著作権保護の対象となっている1964年以降の書籍を除いた、1923年から1963年の間に出版された書籍の著作権状況を分析。その結果、調査対象となった書籍のうち実に80%がパブリックドメインとなっていることが判明し、人々が思う以上に多くの書籍がひっそりと無料で入手可能となっていたそうです。

すでに「The Hathi Trust」や「Standard Ebooks」などのデジタルライブラリは、新たにパブリックドメインだと判明した書籍を電子版で公開し始めています。また、ロサンゼルスのブロガー兼プログラマーであるレナード・リチャードソン氏は、新たにネット上にアップロードされたパブリックドメイン書籍の情報を発信するマストドン(ミニブログ)アカウント「Secretly Public Domain」を作成しました。

Secretly Public Domain (@[email protected]) - botsin.space


リチャードソン氏は「パブリックドメインは全ての人のものです」「ポピュラーカルチャーのほとんどが少数の企業によって所有されている世界において、パブリックドメインの創作物は本当に重要です。あなたはパブリックドメインの書籍を無料で読んだり、自身の創造物に許可なしで利用することができます。また、誰かがパブリックドメイン作品の電子コピーを公開すれば、著作権のある作品よりもこの世から失われてしまう可能性が低くなります」とコメント。

「あまりにも長すぎる著作権保護期間が古い書籍の『消失』を促進する」という事実は、これまでにも何度か研究者らによって指摘されてきました。著作権による保護は本の自由な出版の妨げとなり、大衆的な人気を得られなかった古い書籍がどんどん忘れ去られていく結果につながります。今回のように、パブリックドメイン化された書籍が次々にウェブ上で公開されることで、これまで顧みられなかった古い書籍が現代の視点から脚光を浴びることがあるかもしれません。

著作権による保護は本を普及させず逆に「消失」させている - GIGAZINE


著作権保護期間の20年延長がTPP関連法案成立でほぼ確定、一方で延長は悪手だと示す膨大なデータが公開される - GIGAZINE

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
無料で著作権切れの映画を見放題な「Public Domain Movies」が登場 - GIGAZINE

2019年から新たにアメリカのパブリックドメインに加わる著作物とは? - GIGAZINE

あのミッキーマウスが2024年にパブリックドメインの一部になるかもしれない - GIGAZINE

Mozillaによる18言語・1361時間にもおよぶパブリックドメインの音声データセット「Common Voice」 - GIGAZINE

無料&自由に利用可能なCC0で37万点超のアート作品をメトロポリタン美術館が公開 - GIGAZINE

著作権による保護は本を普及させず逆に「消失」させている - GIGAZINE

「ホームズはパブリックドメイン」という判決が下され自由な利用が認められる - GIGAZINE

紙の本は大学の図書館から姿を消しつつある - GIGAZINE

無料で本が読めるだけではないインフラとしての「図書館」とは? - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.