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中国は伝統医学にAIツールを統合する取り組みを国家ぐるみで推進している


中国医学(中医薬学)は中国を中心に発展してきた伝統医学で、主に人間が本来持っている自然治癒力を高めることに焦点を当て、日本でもおなじみの鍼(はり)治療や灸(きゅう)なども中国医学の影響下にあります。そんな中国医学とAIツールを統合する取り組みを中国政府が推進していると、非営利メディアのRest of Worldが報じました。

Traditional Chinese medicine embraces AI in China - Rest of World
https://restofworld.org/2026/traditional-chinese-medicine-ai-china/


中国では製造業や教育、自動車産業といった多分野で生成AIの導入が急速に進んでおり、近年では中国医学にも組み込まれるようになりました。中国医学の実践者は臨床診断や処方にAIを活用しており、ロボットが鍼治療を行い、オンラインユーザーの質問に回答するAIエージェントも構築されています。

上海の浦東新区公利医院で中国医学部門副部長を務めるチョウ・ビン氏は、「この最新技術により、中国医学は患者の治療や病気の治癒、そしてより正確な医学的発見において大きな進歩を遂げるチャンスを得ています。これを活用すれば、中国医学は西洋医学と同じくらい大きな影響を与えることができるでしょう」と延べました。

実際に中国の南京市にある「Que Tang Yu Fang(鹊堂羽坊)」という中国茶の店舗では、AI搭載デバイスで来店客に伝統的な中国医学の診断を行い、その結果に基づいてカスタマイズされたブレンドティーを処方しています。


中国医学は長い伝統を持っており、現代でも毎年で延べ10億人以上の人々が中国医学の診断および治療を受けています。しかし、2022年には中国医学の従事者の割合が1万人当たり0.75人まで減少し、アクセスが年々難しくなっているとのこと。

こうした状況を改善するため、中国政府は2021年に中国医学文化の伝統と革新的発展を強化するという方針を示しました。2024年には、過去最高となる227億元(約5080億円)の国家予算が中国医学の人材育成や普及などに割り当てられ、中国医学の病院や研究施設はAIへの投資を始めています。


投資拡大で特に強い恩恵を受けているのが研究開発分野です。一部の中国医学研究プラットフォームは遺伝子配列解析や免疫測定といった科学的手法を用いて、中国医学で使われる物質の検査や分子組成の解析、現代医薬品との相互作用などを研究しています。チョウ氏は、「かつてこれらの研究は非常に困難でした。今ではビッグデータと高度な化学的手法のおかげで、研究プロセスは飛躍的に進歩しました」と述べました。

また、香港中文大学の研究チームは数十冊の古典的な中国医学書から4万8000個以上の概念を抽出し、ユーザーの質問に答えるAIツール「(PDFファイル)OpenTCM」を構築しました。これは教育者や学生が薬となる食材を探したり、症状と治療法を関連付けたり、診断に関する質問に答えたりするのに役立つAIツールだとのこと。臨床現場でもテクノロジーの導入が進んでおり、AIアバターが患者の診察を行ったり、AIロボットがマッサージを行ったりするケースもあるそうです。

中国政府は国外にも約30の中国医学研究センターを設立しており、40以上の政府や組織と協定を締結し、各国における中国医学の研究・教育・実践を強化しています。中国は2017年に国際医療における立場を強化する「Health Silk Road(健康シルクロード)」戦略を開始し、中国医学を重視して世界に広めるという取り組みもその一環です。


AIの導入は中国医学を大きく変革する可能性がありますが、Rest of Worldは「AIだけで中国医学の課題をすべて解決することはできません。中国医学は歴史的に定量化が困難で、現代の科学的枠組みに当てはめることのできない抽象的な概念に基づいています」と指摘しています。

OpenTCM開発チームの一員であるジンリン・ホー氏はRest of Worldに対し、「中国医学の古典文献には豊富な知識がありますが、簡潔で時代特有の言語で書かれているため解釈が困難です」と述べています。実用的なAIシステムを構築する際はこうした曖昧さを標準化する必要がありますが、過度に単純化されるリスクも伴うとのこと。また、中国医学の診断はその時々の状況だけでなく、体質や感情、ライフスタイルといったものを総合して下すため、これらの要素を確実に捉えて解釈することもAIにとっては難しい場合があります。

ホー氏は、「安全性と臨床的完全性の観点から、私たちはOpenTCMをあくまで補助ツールとして扱っています。これは研究・教育・予備的なトリアージを行う医療従事者を支援するのに最適なものであり、専門的な臨床判断に取って代わるものではありません」と述べました。

また、AIツールの導入に警戒心を抱く患者もいます。長年にわたり中国医学を利用してきた蘇州市のシンミン・ハン氏は、クリニックで普及しているAIツールに懐疑的です。ハン氏はRest of Worldに対し、「正直に言うと、私はAIの検査結果をあまり信用していません。私は脈拍や顔色を見てくれて、より総合的な方法で診断してくれる本物の医師に見てもらう方が好きです」と語りました。

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in AI,   メモ, Posted by log1h_ik

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