「クリック1つでサブスク、解約は電話で」という手法が違法に
インターネットにおける製品購入やサービス加入のキャンセル・解約画面において、あえてユーザーに分かりづらい設計が取られる場合があります。これは企業がユーザーによる解約やキャンセルを防ぐための意図的な行動であり、アメリカでは一部の州でこのような慣行が禁じられつつあります。アメリカ政府もこの問題の解決に乗り出しており、今後は「クリック1つでサブスクリプションサービスの加入、解約は電話で」といった手法が違法となる方向に向かっています。
FTC to Ramp up Enforcement against Illegal Dark Patterns that Trick or Trap Consumers into Subscriptions | Federal Trade Commission
https://www.ftc.gov/news-events/press-releases/2021/10/ftc-ramp-enforcement-against-illegal-dark-patterns-trick-or-trap
The end of “click to subscribe, call to cancel”? One of the news industry’s favorite retention tactics is illegal, FTC says » Nieman Journalism Lab
https://www.niemanlab.org/2021/11/the-end-of-click-to-subscribe-call-to-cancel-one-of-the-news-industrys-favorite-retention-tactics-is-illegal-ftc-says/
インターネットサービスの提供に関して、「サービス加入は簡単だけど解約がしにくい」というウェブサイトの設計が多いことは、かねてから問題視されてきました。「ユーザーにとって分かりづらい」あるいは「意図的にユーザーをだます」ことを目的としたデザインは「ダークパターン」と呼ばれ、例えばAmazonプライムの解約システムがダークパターンの代表例として知られています。実際に、Amazonはこの問題で消費者団体から提訴されています。
「Amazonプライムは解約しづらすぎる」と消費者団体がAmazonを起訴 - GIGAZINE
2021年3月に発表された調査では、アメリカのニュース組織526件のうち、「オンラインで簡単にサブスクリプションを解約できる仕組み」を提供している組織はわずか41%であることが示されました。半数以上の組織は解約を電話で受け付けており、訓練を受けたカスタマーサービスがユーザーに解約を思いとどまらせるようになっていたとのことです。
このような状況を背景に、連邦取引委員会(FTC)は違法なダークパターンを展開する企業に対して警告する政策方針の声明を発表。これは消費者に製品やサービスを提供する企業に対し「明確な情報開示」「合意を取ること」「容易な解約方法」の提供を求めるもので、この要件に違反した企業は法執行措置の対象となるとのことです。
Enforcement Policy Statement Regarding Negative Option Marketing
https://www.ftc.gov/system/files/documents/public_statements/1598063/negative_option_policy_statement-10-22-2021-tobureau.pdf
反トラスト法を専門とする法学者であり、FTCの委員長を務めるリナ・カーン氏は、FTCがダークパターンを問題視していることをTwitterで発言。「法律に則し、企業は明確かつ合意に基づき、容易にキャンセルできるサービス登録を保証しなければなりません。具体的には、少なくとも、最初に行われる購入やサービス加入の容易さと同じぐらいの容易さを持ったキャンセルの仕組みを提供する必要があります」とカーン氏はつづりました。これは言い換えれば、「オンラインでサブスクリプション加入可能なサービスについては、オンラインで解約できる仕組みが必要」ということになります。
2. To comply with the law, businesses must ensure sign-ups are clear, consensual, and easy to cancel. Specifically, businesses should provide cancellation mechanisms that are at least as easy to use as the method the customer used to buy the product or service in the first place.
— Lina Khan (@linakhanFTC) October 29, 2021
声明によると、ニュース組織を含む製品・サービスの提供企業は「消費者が請求の停止を求める行動を行う各期限」「消費者に対する請求金額」「解約を行うために必要な全情報」を明確かつ目立つように表示する必要があるとのこと。また、カスタマーサービスが電話で解約受付を行う際には「電話を切らないこと」「不当に長時間にわたって保留しないこと」「キャンセルについての間違った情報を提供しないこと」「キャンセル要求の受理が遅れた理由をごまかさないこと」といったガイドラインを遵守する必要があることが示されました。
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