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「サブスクを解約したらプライベートなデータが全公開される」としたプレゼンツールが大炎上


サブスクリプション方式とは、サービスを一定の期間利用する権利に対して課金するビジネスモデルのことです。ユーザーがサブスクリプションを解約すると収益が減少するだけに、多くのサービスは解約を思いとどまらせるためにさまざまな工夫を凝らしていますが、中には「自分の作品を誰にでも見られることに同意する」ことを解約の条件としているサービスも存在しており、ネット上ではその是非を巡って活発な意見が交わされています。

議論の発端は、以下のツイートです。Twitterユーザーのapenwarr氏は2020年11月2日に、「サブスクリプションをキャンセルするにあたり、以下に同意する必要があります。『あなたのプレゼンテーションはウェブ上の誰でも見ることができるようになります』」と書かれたスクリーンショットと共に「プレゼンテーションツールのPreziは、プライバシーのことをよく考えてはいないようですね」と投稿しました。

Okay, @prezi, I'm not sure you've properly thought through the privacy implications of this one. pic.twitter.com/CYv6yRRVXo

— apenwarr (@apenwarr)


Preziには有料プラン「Plus」のほか、無料で使用できる「ベーシック」もあります。「Plus」ではプライバシー設定が可能ですが、「ベーシック」では作成したプレゼンテーションがすべて公開される仕様になっています。apenwarr氏がサブスクリプションを解約する際に同意しなければならなかった項目は、この仕様によるものだと思われます。


apenwarr氏のツイートに対し、Preziの公式Twitterアカウントは「そのコピー(スクリーンショット)は当社のポリシーを反映していません。トライアル期間または有料サブスクリプション期間中に作成された非公開のプレゼンテーションは、プライバシー設定を変更しない限り非公開のままです。Preziではまた、無料ライセンスを提供しています。トライアルやサブスクリプションを解約すると、無料ライセンスにダウングレードすることができます。その後、無料ライセンスで作成した新しいプレゼンテーションは、すべて公開されます」と返信しました。

Prezi offers free licenses, and when you cancel your trial or subscription, you’ll have the option to downgrade to a free license. After that, any new presentations created from the free license will be public. (2/2)

— Prezi (@prezi)


また、Preziの利用規約には、「有料アカウントが無料アカウントに戻った場合、有料アカウントでプライベートユーザーコンテンツとして指定していたものはプライベートユーザーコンテンツのままですが、編集することはできなくなります。また、そのようなアカウントで作成した新しいコンテンツはパブリックユーザーコンテンツになります」と説明されています。


つまり、「サブスクリプション中に作成した非公開のプレゼンテーションは、解約しても非公開のままだが、解約後に作成したプレゼンテーションはすべて公開されてしまう」ということになります。しかし、apenwarr氏が投稿したスクリーンショットに書かれていた文面は「すべてのプレゼンテーションが公開されることに同意しなければ解約できない」ととれるものだったため、SNSや掲示板上で大きな議論へと発展しました。

apenwarr氏のツイートには、記事作成時点で108件のリツイート、83件の引用ツイート、602件のいいねが寄せられるなど注目を集めているほか、「Preziは、短期間使いたいユーザーにも1年間のサブスクリプションを強いるようなやり方で始まります。プレゼンテーション作成のユーザーエクスペリエンスはひどいし、その上にこのようなダークパターンや利用規約を設けるというのは、悲惨さが増すばかりです。もう2度と使いません」というリプライや……

Spent 3 weeks in the hell that is @prezi starting w/ how they force you to sign up for a year even if you only want to use it for a short time. The UX of creating presentations horrible and adding dark patterns and policies like this on top only adds to the misery.

Never again.

— Lisa Angela (@intrepidleeloo)


「これは違法である可能性が高く、EU一般データ保護規則(GDPR)に照らすと間違いなく違法です。サブスクリプション契約には強制力があることや、利用規約で勝手なことに同意させるのは不適切であるということに注意が必要です」といったリプライが寄せられていました。

That this is very likely illegal (definitely under GDPR). I hope you're aware that contracts need to be enforceable, they can't just make you agree to arbitrary things in a TOS.

— Enoch Root (@3Aleph)


また、apenwarr氏のツイートを扱ったソーシャルニュースサイト・Hacker Newsのスレッドには、203件のコメントが投稿されており、その中には「無料枠では公開コンテンツしか許可されていないため、これは理にかなっていると言う人もいますが、それは無理筋です。なぜなら、もしサブスクリプションを解約したらすべてのデータを公開するのではなく、削除されるべきだからです。銀行口座を解約する時に、銀行が過去10年間のすべての取引明細書を公開するといいだしたら、どう思いますか?」というコメントも投稿されています。

一方で、このコメントには、「サインアップ時に、そのことに同意している場合を除きます」という反論のコメントもついています。しかし、この反論には「利用規約のどこにもそんなことは書いてありませんでした」というコメントや、「仮に利用規約にそう書いてあったとしても、そもそも(プレゼンテーションの公開を強いるような)想定外の事項を利用規約に盛り込むべきではありません」といったコメントによる再反論もなされていました。

なお、この問題はかねてから疑問視されており、2018年には、Preziが設置しているコミュニティサイトに「サブスクリプションを解約したいのですが、私のプレゼンテーションについて『ウェブ上の誰でも閲覧可能になることに同意しなければならない』と書いてあります。私はそれを全く望んでいません」という意見も寄せられていました。

この意見に対し、ユーザーエクスペリエンス担当者は「ベーシックライセンスにダウングレードせずにサブスクリプションをキャンセルした場合、あなたのプレゼンテーションは非公開のままであることに留意してください」と返答しています。


また、質問者が「それなら一体なぜ、『プレゼンテーションが公開されること』に同意しなければならないのですか」と追加で質問したのに対し、Preziのサポート担当者は「解約または期限が切れたライセンスと、ダウングレードされたライセンスの違いです。1度ベーシックへのダウングレードを選択すると、プレゼンテーションは公開されます。ユーザーは、いつでもこれらのプレゼンテーションを削除することができます」と説明しました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1l_ks