Amazonが販売業者に「製品の値下げ」を強制していたことが新たに判明
Amazonがサードパーティーの小売業者に対し、「競合他者が扱う製品の価格以下にしないと新製品の登録ができない」というメールを送っていたことが判明しました。Amazonはすでに独占禁止法違反の調査に直面していますが、メールの内容はさらにAmazonへの風当りを強くするものとみられています。
Amazon push for lower prices could be bad for shoppers everywhere | The Seattle Times
https://www.seattletimes.com/business/amazon/amazon-pushes-for-lower-prices-that-could-be-bad-for-shoppers-everywhere/
アメリカの新聞社であるシアトル・タイムズは、Amazonでサードパーティー業者として登録する企業のCEOから匿名を条件で情報を入手しました。この企業は2021年初頭から新しい商品リストを作成する機能を停止されているとのことです。「Amazonプラットフォームを利用する販売業者は、アメリカ政府よりもAmazonを恐れています」と語るCEOは、Amazonの慣行が反競争的だと考えているものの、報復を恐れてAmazonに懸念を示していないと説明しています。
Amazonは販売業者に宛てたメールの中で、「顧客体験を守る」ことを理由に上記の企業の新製品登録が停止されていることを説明。この販売業者の製品の価格は95%の確率で他の販売業者と比べて競争力が保証されていなかったことから、「有名なナショナルブランド全体における顧客体験の基準を一貫して維持できていません」「価格競争力がないということは、あなたの製品を検討している顧客が別の大手小売店であなたの製品を安く見つけ、購入できることにつながります。これは私たちの顧客に対してネガティブな経験を作ります」とAmazonは続けたとのこと。
Amazonの広報担当者であるパトリック・グラハム氏によると、上記のポリシーの対象は、Amazonで製品を販売するブランドの1%にすぎないとのこと。Amazonは実店舗あるいはオンラインショップでの製品価格から「競争力のある価格」を計算し、この1%の販売業者に対して価格のコントロールを行っているようです。「消費者はWalmart、Target、Costcoといった多くの小売業者を選択肢に持つため、消費者にとってこれは非常に重要です」とグラハム氏。「販売業者はAmazon上での価格設定を完全にコントロールできますが、広く認識された製品について、Amazon上での価格が他の小売業者に比べて一貫して高い場合、私たちはそれを『Amazonの顧客をだます行為』とみなし、受け入れません」とグラハム氏は述べました。
シアトル・タイムズはAmazonから価格を下げるよう圧力をかけられた5つの販売業者幹部および元従業員に話を聞くことに成功しています。いずれの販売業者も規模が大きく、中には数億ドル(約数百億円)の収益を持つところも。そして多くがロレアル、ユニリーバ、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった大手企業の製品を扱い、契約において最低価格以下での販売を禁じられています。このため、Amazonの対応は「完全に不公平で根拠のないもの」だと批判されています。Amazonのポリシーが理由で販売がかなわず倉庫に保管されたままの製品も多く存在するとのこと。なお、Amazonが行う価格是正は数セント(数円)単位のものから「価格の20%の値下げ」を求めるものなど、さまざまだそうです。
独占禁止法の問題を扱う下院委員会の副委員長であるプラミラ・ジャヤパル議員は、上記のAmazonの慣行について、「Amazonが独占的な力を使って、消費者に選択肢がなくなるよう市場を完全にコントロールしようとする新たな手法」だと述べています。「企業は競争を促進する方法で自律的に価格を設定できなければなりません。Amazonのポリシーは競争的で自由かつ健全な市場の働きを促すものではなく、プラットフォーム上の企業の行動を指示するものです」とジャヤパル議員は指摘しました。
また反トラスト法について研究するジョージタウン大学のスティーブン・サロップ教授は、Amazonのポリシーによって表面的にはAmazon.comの価格が下落するものの、より厳密な分析をすればライバルの小売業者によって価格が上がる可能性が高いと指摘。Amazonはこの可能性を否定していますが、実際に、ブランドが「Amazonでだけ価格が低い」という事態を避けるためにAmazonでの流通事態を制限し、他の流通ネットワークで製品価格が上昇する可能性があるとみられています。
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