「バースデーケーキのデコレーション」が原因で子どもたちが重金属中毒になってしまう


ケーキやデザートの見た目を豪華に飾り付けるために使われる「光沢ダスト」は、食品に直接振りかけたりバター抽出物と混ぜて塗ったりすることで、表面にキラキラとした光沢を与えることができます。ところがアメリカでは、ベーカリーで販売されたケーキに使われていた光沢ダストが原因で、子どもたちが銅などの重金属中毒になってしまった事例が報告されています。

Cake Decorating Luster Dust Associated with Toxic Metal Poisonings — Rhode Island and Missouri, 2018–2019 | MMWR
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7043a2.htm

Children poisoned by birthday cake decorations loaded with lead, copper | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/10/toxic-frosting-children-poisoned-with-lead-copper-from-cake-decorations/

2018年10月、アメリカ・ロードアイランド州で開催された誕生日パーティーに出席した1歳~11歳の子ども6人が、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えました。症状はバースデーケーキを食べた30分~10時間後に始まり、このうち1人は10時間以上にわたって症状が続いたことから、治療のために救急科を訪れたとのこと。

ロードアイランド州の急性感染症疫学センターが調査したところ、誕生日パーティーに出席した人でも、バースデーケーキを食べていなかったりケーキの表面を覆うフロスティング(アイシング)を食べていなかったりした人は、嘔吐や下痢といった症状に見舞われていないことが判明。また、子どもたちの症状が重金属中毒と一致していたことから、バースデーケーキのフロスティングに原因があると考えました。

問題となったバースデーケーキは地元のベーカリーで購入したものであり、調査員らはベーカリーにおけるケーキの製造工程をチェックしました。ベーカリーはケーキのフロスティングを行う際、バター抽出物に光沢ダストを混ぜたものをブラシで塗り広げており、表面に厚い層を作っていたとのこと。調査員が撮影したバースデーケーキの写真がこれ。表面にたっぷりフロスティングが塗られており、豪華な見た目になっていることがわかります。


調査員がフロスティングに使われた光沢ダストを調べたところ、「ローズゴールド」と記載されたラベルには確かに「Non-toxic(無毒)」と記されていたものの、同時に「Non-edible(非食用)」「For decoration only(装飾専用)」とも記されていました。


その後の調査により、問題となった光沢ダストは床材などの消費財に使用する金属顔料として製造された銅粉末であり、食用として製造されたものではなかったことが突き止められました。ロードアイランド州の研究所が実施したテストでは、問題の光沢ダストを使ったフロスティング1g当たり22.1mgの銅が含まれており、ケーキ1切れ当たりの銅含有量は約900mgに達することが判明。アメリカ国立衛生研究所(NIH)による銅の推奨摂取量は成人で0.9mgとなっており、ケーキ1切れに含まれる銅は成人の摂取推奨量の約1000倍でした。

この調査結果から、ロードアイランド州保健局の調査員は、子どもたちがフロスティングに使われた光沢ダストが原因で急性銅中毒になったと結論づけました。急性銅中毒は腹痛や吐き気、下痢、嘔吐、肝臓の損傷などを引き起こす可能性があるとのこと。


また、問題となったベーカリーでは銅を含む光沢ダスト以外にも、アルミニウム・バリウム・クロム・鉄・鉛・マンガン・ニッケル・亜鉛などを含む光沢ダストが使われていたことがわかったほか、その他のベーカリーでも同様に非食用の危険な光沢ダストが広く使われていることが判明しました。アメリカ食品医薬品局(FDA)は調査結果を受けて、ベーカリーに対して勧告を行い、「ほとんどの食用光沢ダストはラベルで『食用』と宣言してあります。ラベルに単に『無毒』『装飾目的』とのみ記されており、成分リストがない場合、製品を食品に使用しないでください」と述べました。

ところが2019年5月には、ミズーリ州に住む1歳の子どもの血中鉛濃度が上昇した事例の調査において、「ケーキの飾りに使われたサクラソウのデコレーション」に含まれる鉛が原因だったことが判明。このデコレーションはケーキ装飾会社によって販売されたものであり、ラベルには「無毒」と記されていましたが、全体の25%が鉛であることが分析でわかったとのこと。鉛は強力な神経毒性を持つ物質であり、「安全とみなされる鉛の摂取量」は存在しないとCDCは警告しています。


CDCはレポートで、「いくつかの光沢ダストは食用であり、安全に食品へ使うことができますが、その他の多くのものは食用でも安全でもありません」「製品が無毒であることを示すラベルは、安全に消費できることを意味するものではありません。意図しない病気や中毒を防ぐために、非食用の食品が人間の消費において安全ではないことを示す明示的なラベル付けが必要です」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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