健康的なはずの発酵食品が人体に危害を及ぼす場合とは？

by Timolina

私たちの食卓には、味噌や納豆など日本の伝統的な発酵食品に加え、キムチやヨーグルトなどさまざまな発酵食品が並びます。これらの発酵食品は、消化吸収や免疫の改善などが期待できることから、健康に良い食べ物だとみなされていますが、場合によっては健康を損なってしまうこともあると指摘されています。

Kombucha, kimchi and yogurt: how fermented foods could be harmful to your health
https://theconversation.com/kombucha-kimchi-and-yogurt-how-fermented-foods-could-be-harmful-to-your-health-126131

発酵食品の多くは、有用な微生物(プロバイオティクス)による発酵の過程でビタミンなどの栄養素が合成されたり、有害物質が除去されたりすることから、多くの健康上の利点がある食べ物だとされています。こうした食品の中には、ケフィア・海外ではコンブチャと呼ばれている紅茶キノコ・ザワークラウト・テンペ・納豆・味噌・キムチ・サワードウブレッドなどがあります。しかし、場合によっては以下の6つのような健康被害や副作用をもたらすこともあることが判明しています。

◆1：過剰な腹部の膨満感
発酵食品を食べると、健康な人でもおなかが張ったような症状が出ることがあります。これは、発酵食品に含まれるプロバイオティクスが腸内で活動した結果、ガスが過剰に発生することに起因しています。プロバイオティクスの活動は、腸内の有害な細菌を減少させてくれるため基本的には良いことですが、人によっては大量に発生したガスにより腹痛が起きるほど深刻化することがあります。

◆2：頭痛
ヨーグルト、ザワークラウト、キムチなどには、プロバイオティクスがたんぱく質を分解した結果として発生した生体アミンが含まれています。こうしたアミン類は神経系に作用し、血圧の上昇や頭痛の原因となることから、東京都健康安全研究センターの(PDFファイル)報告書にも「アミン類の毒性は明らか」と記載されています。

by Rido81

◆3：ヒスタミン不耐性
前述のアミン類の中でも、ヒスタミンは特にアレルギー疾患や、食中毒の原因となりやすい物質で、大量に摂取するとかゆみ・頭痛または片頭痛・鼻水(鼻炎)・目の充血・疲労感・じんましん・下痢・吐き気・嘔吐などの症状を引き起こします。多くの人はヒスタミンを代謝する酵素を備えていますが、中には酵素を持っていないヒスタミン不耐性の人もいるため、そうした人は上記の症状に加えて喘息・低血圧・不整脈・循環不全・突発的な心理症状(不安・攻撃性・めまい・集中力の低下など)および睡眠障害に見舞われる可能性があります。ヒスタミンは発酵食品だけでなく、鮮度が落ちた魚などにも多く含まれているため、「他の人と魚料理を食べて自分だけじんましんが出てしまった」という人は、ヒスタミン不耐性の傾向があるかもしれません。

◆4：食中毒
発酵の過程でプロバイオティクスが生産する有機酸やアルコールは、天然の防腐剤として作用し、有害な微生物の繁殖を妨げます。しかし、生産過程や保管状況次第では有害な微生物が侵入し、食中毒の原因となることがあります。例えば、アメリカでは2012年に低温殺菌されていないテンペが原因で食中毒が発生し、合計89人がサルモネラ菌に感染しました。また、韓国では学校給食で大腸菌に汚染されたキムチが出された事による大規模な集団食中毒が、2013年と2014年の2回に分けて連続発生しています。

◆5：プロバイオティクスによる症状
上記の食中毒は、発酵食品に混入した有害な微生物が原因ですが、プロバイオティクスが直接の原因となる事例もあります。例えば、2017年に行われた研究では、乳酸菌により65歳の糖尿病患者が血中に細菌が存在する菌血症と肝臓にうみがたまる肝膿瘍にかかったことが報告されました。そのため、妊娠中または授乳中の女性や、高齢や病気などにより免疫力が低下している人は発酵食品を避けるべきだと提言されています。

by DmytroMykhailov

◆6：薬剤耐性菌の発生
遺伝子は母細胞から娘細胞へ受け継がれるだけでなく、個体間や他生物間においても「遺伝子の取り込み」は起こります。この現象は遺伝子の水平伝播と呼ばれます。発酵食品に含まれる6種類のプロバイオティクスが抗生物質耐性を持っていることが2019年6月の研究で確認されていますが、遺伝子の水平伝播が起こると、プロバイオティクスから有害な微生物に抗生物質耐性が受け継がれる危険性があるとのこと。

こうした事例から、ウェストミンスター大学で医療微生物学について研究しているマナル・モハメッド氏は「発酵食品を食べることでさまざまなメリットがありますが、すべての人がメリットを享受できるとは限りません。多くの人は発酵食品を食べても問題ありませんが、中には深刻な健康被害を受ける人もいます」と述べました。