サイエンス

致死性の病原菌入りアロマスプレーがスーパーマーケットや通販で販売されていた


アメリカでは2021年3月から7月にかけて、類鼻疽(るいびそ)という主に東南アジアを中心に流行する感染症の患者が4人発生し、そのうち2人が死亡しました。アメリカ在住で直近の渡航歴もない人々が類鼻疽を発症した経路を調査したアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「大手スーパーチェーンのウォルマートで販売されていたアロマスプレー」に類鼻疽菌が含まれていることを突き止めました。

2021 Multistate outbreak of melioidosis | Melioidosis | CDC
https://www.cdc.gov/melioidosis/outbreak/2021/index.html

Deadly bacteria found in aromatherapy spray sold at Walmart | Live Science
https://www.livescience.com/aromatherapy-spray-melioidosis-deadly-bacteria

類鼻疽は類鼻疽菌が原因で引き起こされる人獣共通感染症であり、類鼻疽菌は汚染された土壌や水から経口で感染したり、傷口を通して感染したりします。感染しても多くのケースでは発症しないものの、発症すると肺炎や敗血症、感染部位の化膿(かのう)といったさまざまな症状が見られ、致死率も高い恐ろしい病気です。


類鼻疽菌は主に東南アジアやオーストラリア北部に広がっているため、アメリカにおける類鼻疽患者のほとんどは、東南アジアなどに旅行した後に発症しています。しかし、2021年にジョージア州・カンザス州・ミネソタ州・テキサス州で確認された4人の患者は、いずれも直近の海外旅行歴がなく、一体なぜ類鼻疽菌に感染したのか不明でした。CDCが患者の血液サンプルを調査したところ、4人はいずれも南アジアで頻繁に見られる遺伝子的に近縁の菌株に感染していたことが判明し、何かしらの共通の感染源があることが示唆されたとのこと。

そこでCDCが患者の自宅や周辺の土壌、水、所持していた日用品をテストしたところ、患者の1人が使用していた「アロマスプレー」に類鼻疽菌が含まれていることが判明しました。CDCは州の保健部門と協力し、アロマスプレーから発見された細菌の遺伝子が患者の血液から見つかった細菌と一致するかどうかや、他の3人の患者も同じアロマスプレーを使用していたかどうかを調査していると述べています。

汚染されたアロマスプレーはインド製であり、「Better Homes & Gardens Lavender & Chamomile Essential Oil Infused Aromatherapy Room Spray with Gemstones」という名称で、2021年2月~10月21日までウォルマートの55店舗やウェブサイトで販売されていたとのこと。ウォルマートはCDCの報告を受けて、10月22日に同じラインで製造していた5つの異なる香りを含めた合計4000本近くをリコールしています


CDCは対象となったアロマスプレーを所有している消費者に対し、「すぐにこの製品の使用を中止してください」と警告しています。また、アロマスプレーには類鼻疽菌が含まれている可能性があるため、単にゴミとして捨てるのではなく、適正な手順でウォルマートに返品しなくてはなりません。

アロマスプレーは透明で清潔なジッパー付きの袋に二重にして入れ、小さな段ボール箱に詰めてウォルマートに送る必要があるとのこと。また、アロマを噴霧した可能性があるシートやリネンを全て洗濯し、高温の乾燥機で乾燥させるほか、家具などの表面を希釈されていないPine-Sol(パインソル)や同様の消毒液で拭き取るべきだそうです。これらの作業をした後には、手をしっかりと洗うようにとCDCはアドバイスしています。

今回報告された類鼻疽患者は、せきや息切れ、脱力感、倦怠感、吐き気、嘔吐、発熱、体や顔の発疹といった症状が見られたとのこと。対象となったアロマスプレーを使用してこれらの症状が出た場合、医師の診察を受けて当該アロマスプレーを使用したことを報告する必要があります。また、症状はないものの過去7日間以内にこのアロマスプレーを使用したことを医師に伝えると、抗生物質を処方してもらえる場合があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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