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「本の最低配送料」を定めて実店舗の書店がAmazonと競争するのを助ける法律が可決される


Amazonをはじめとする大手ECサイトが運営するオンライン書店が台頭したことにより、従来の実店舗を持つ書店が苦境に追いやられています。そんな中、フランスでは書店を守るために「本の無料配送を禁止して最低配送料を設定する」という法律が可決され、Amazonと書店の競争をより平等なものにする試みが進むと期待されています。

France to pass law on minimum delivery charge to protect independent bookstores
https://www.thelocal.fr/20211008/france-passes-law-on-minimum-delivery-charge-to-protect-independent-bookstores/

France moves to shield its book industry from Amazon | Reuters
https://www.reuters.com/article/businessNews/idUSKBN2HF10Q

フランスでは個人が運営する独立系の書店を守るため、1981年に書籍を定価販売することを定めた「ラング法」が制定され、これによって大手チェーン書店が大幅値引きを実施して独立系書店のシェアを奪うことを防いできました。ところが、20世紀末にオンライン書店が登場したことにより、今度は値引きではなく「送料」による競争が劇化しました。

Amazonは一定額以上をまとめ買いしたりAmazonプライム会員だったりする場合は送料無料となりますが、充実した流通網を整備していない実店舗の書店にとって、無料の配送サービスを提供することは困難です。そこでフランスは、2014年に「オンライン書店の送料無料を禁止する」という法案を可決し、オンライン書店による市場独占を防ぐことを試みました。しかし、Amazonはこれに対抗して本の送料を「1ユーロセント(約1.3円)」に設定したため、法律が実質的に無効化されてしまったとのこと。

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Amazonがほぼ無料で本の配送を行っている一方で、通常の書店が提供する配送サービスは一般的に5~7ユーロ(約660円~920円)の配送料がかかります。こうした格差を背景に、フランスにおける書店の市場シェアは徐々に低下しているとのことで、2019年にフランスで販売された4億3500万冊のうち20%以上がオンライン書店で購入されたものだそうです。

そこで、フランスの上院に当たる元老院議員のロール・ダルコス氏は、本の経済を改善して業者間の公平性を強化することを目的とした法案を提案しました。この法案では、オンライン書店を含む各書店は決められた「本の最低配送料」に従う必要があるため、1ユーロセントの送料を設けて規制を逃れることができなくなります。

法案は2021年6月に元老院を通過し、10月に下院に当たる国民議会で可決されました。ロズリーヌ・バシュロ=ナルカン文化大臣は法案について、「送料を平準化することで本を固定価格に戻したいという願いと完全に一致しています」とコメント。フランス文化省はロイター通信に対し、「この法律はオンラインの書籍販売におけるゆがんだ競争を規制し、現状が続いた場合に陥る不可避の独占を防ぐために必要です」と述べました。


元老院の議員によると、Amazonはフランスにおける法案の成立が他国にとっての前例となることを懸念し、法案成立に反対するロビー活動を行っていたとのこと。Amazonはフランスの書店が都市部に集中していることを指摘し、オンライン書店は地方に住む人々が本を購入する平等な手段になっていると主張しています。

Amazonフランス法人のマネージングディレクターであるFrédéric Duval氏は、「インフレが顕著であり公的機関がそれを止めようとしている時、本のコストを押し上げて小さな街や地方の住民にペナルティを科す法律が必要でしょうか?」「Amazonで購入された本の半分以上は人口1万人未満の町の住人が購入しており、4分の1以上が人口2000人未満の町の住人によるものです。彼らにとって、オンラインでの購入が唯一の実行可能な解決策であることがあります」と述べました。

なお、記事作成時点では本の最低配送料がいくらになるのかや、法律の制定時期については未定とのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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