AI

GoogleのAIが学校教育に浸透する中で子どもの認知機能や成績に悪影響が出ていると保護者や教師の反発が強まる


近年は学校に通う子どもたちに学習用のノートPCやChromebookが配布されることが一般的となっており、調べ物や学習のサポートなどに広く利用されています。ところが、ノートPCやスマートフォンを通じてGoogle製AIに依存する子どもが増加し、保護者や教師の反発が強まっていると経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。

Google Pushed Gemini AI Into Schools—and Even Students Say It’s Gone Too Far - WSJ
https://www.wsj.com/tech/ai/google-ai-gemini-education-schools-1ec0972a

アメリカのペンシルベニア州に住む中学2年生のリチャード・スコットさんは、学校のノートPCにあるGoogle検索ボックスが実質的にはAIチャットボットであり、質問すればさまざまな答えを返してくれると知っていました。スコットさんはある日、数学の宿題を早く終わらせるために検索バーに問題を入力したことをきっかけに、理科の問題やエッセイ課題などでもAIに頼るようになってしまいました。


その結果、学年末までにスコットさんの成績は急降下してしまい、かつては得意だった数学も期末試験で不合格となりました。スコットさんは取材に対し、「思考速度が遅くなったんです。テスト中にAIが使えなかった時は、考えるのに苦労しました」と語っています。

GoogleはChromebookや学校とのソフトウェア連携を通じて広く教育業界に浸透し、AIツールを子どもたちに届ける足がかりを築いてきました。しかし、スコットさんのように子どもたちがAIに依存してしまい、学習面でも感情面でも悪影響が出ているとのこと。ウォール・ストリート・ジャーナルはGoogleの現従業員や元従業員へのインタビュー、Googleが発表した10件以上の研究論文のレビューを通じて、Google自身もAIによる子どもへのリスクを認識していることがわかったと指摘しています。

経済協力開発機構(OECD)は2025年、91カ国に住む76万人の15歳の生徒たちを対象に、国際的な学習到達度調査(PISA)を実施しました。その結果、生徒の平均PISAスコアは過去25年で最低となり、アメリカでは読解力スコアが前回調査の2022年時と比べて14パーセントポイントも低下。OECDはソーシャルメディアやスマートフォンとともに、AIを読解力低下の一因であると報告しました。

PISAでは生徒たちのAI利用状況についても質問しており、作文など特定の学業課題にAIツールを使っていると回答した生徒は、AIをまったく使っていないと回答した生徒と比較して、科学の成績が平均で約20パーセントポイントも低くなりました。これは1年分の学習に相当する大幅な低下です。一方、学習支援のためにAIを毎日使用しているもののAIリテラシー研修を受けた生徒は、AIをまったく使わない生徒よりも成績がわずかに向上しましたが、こうした生徒は裕福な家庭出身の傾向がみられるとのこと。


アメリカで3番目に大きな学区であるマイアミ・デイド郡では2025年、10万5000人以上の高校生にGoogleのAIチャットボットであるGeminiの提供を開始。これはアメリカの学区におけるAI導入事例としては過去最大規模のものであると注目されていました。

ところが、マイアミで美術史を教えるケイトリン・ルアノ氏はGemini導入後の授業で、予想をはるかに超える生徒がテストに合格できないことに衝撃を受けたそうです。中には授業で「A」や「B」といった優秀な成績を取っていた生徒ですら不合格だったそうで、ある生徒は「先生、正直に言うと、教材の半分がまったくわかりませんでした。一年中AIを使っていたんです」と打ち明けたとのこと。

マイアミの英語教師であるキャリー・マコーミック氏は、Geminiが導入されて以来、生徒たちの意見がどれも似たり寄ったりになったとしています。授業でジョイス・キャロル・オーツの小説『Where Are You Going, Where Have You Been?(どこへ行くの、どこへ行ったの?)』を取り扱った際、多くの生徒が『ハーメルンの笛吹き』を連想すると答えました。しかし、マコーミック氏が一体どこが関連しているのかを尋ねたところ、生徒たちはAIを使っていたため関連性がわからなかったそうです。

バージニア州のフェアファックス郡に住む15歳のソフィア・チャツィギアンニさんは、「一番誘惑が大きかったのはGoogleのAIでした。アクセスするのが一番簡単だったからです」と語っています。チャッツィギアンニさんはGoogleの「AIによる要約」や「AIモード」に頼るようになった結果、人文地理と代数IIの成績が「C」にまで落ちてしまいました。AIの利用をやめると、チャッツィギアンニさんの成績は回復したそうです。フェアファックス郡の公立学区は、GoogleのAI検索結果をブロックする独自のプラグインを開発し、近いうちに生徒の端末に展開する予定だと発表しています。

ペンシルベニア大学のビジネススクールであるウォートン・スクールで教授を務めるハムサ・バスタニ教授は、学生は課題が精神的負担になり始めた瞬間に近道を探し、AIに頼りやすくなると指摘。「学生は常に簡単なこと(AI)と難しいこと(自力)のどちらかを選ばなければならない状況に置かれているのです。幼い子どもたちにとってはさらに深刻な状況です」と述べました。


Googleは長年にわたり、学校における普及をブランド構築の足がかりと考えてきました。その結果、記事作成時点では教育ソフトウェアパートナーシップを通じ、世界中で1億7000万人以上の生徒と教師にAIツールを含むサービスを提供しています。学生にはGeminiを「AI学習パートナー」として売り込み、教師にはAIが作業負荷を軽減すると同時に生徒の能動的な学習を促し、生徒の学習環境をより平等にできるとアピールしています。

また、ベンチャーキャピタルが共同スポンサーを務める1年間のフェローシッププログラムを提供し、教育者がGeminiからより広範なエコシステムに至るまで、Googleのテクノロジーを習得するための機会も設けています。さらに6000人以上の教師からなるインフルエンサーネットワークの維持、ワークショップに参加した教師への「認定バッジ」の授与など、教育現場に自社のAIツールを提供する多様な取り組みを進めているとのこと。

Googleは学習科学に基づいて教育者と協力した製品開発を行っているとしていますが、保護者や教師からの反発や懸念の声も強まっています。全米最大の学区であるニューヨーク市ではこれまでAIに対しオープンな姿勢を取っていましたが、2025年から2026年にかけて3年生~8年生の読解力の習熟度が6パーセントポイント低下。8月に開催されたブルックリン第19区の教育会議では保護者グループからの不満が噴出しました。ブルックリン第19区の保護者であるティオン・プレスコット氏は、小学生の子ども2人の作文能力が後退しているとして、「あなた方は一世代全体に悪影響を与えています」と語りました。

2026年にニューヨーク市長に就任したゾーラン・マムダニ氏は、9月2日に小中学校におけるAI利用を1年間にわたり原則禁止すると発表しました。対象となる子どもは60万人に上りますが、障害がありAIが必要な生徒には例外的に使用が認められ、教員による指導計画の立案や事務作業などでは引き続き利用可能です。マムダニ氏は、子どもは自ら考えること、仲間と協力することなどを学ばなければいけません。テック業界はAIが早期教育に必須だと信じ込ませようとしていますが、私たちはそう見てはいません」と述べています。

公立学校の生徒が高校生になるまでAIの使用を禁止するとニューヨーク市教育局が発表、すべての学年でチャットボットを禁止するなど新たな方針も採用 - GIGAZINE


2025年に10代の若者向けのGeminiプログラムを推進してきたマサチューセッツ州ボストンやコロラド州デンバーでは、2026年の標準学力テストで英語・科学・数学などの成績が前年比で低下しました。デンバー公立学区の教師であるローレン・ゴッドビー氏は、「生徒たちがテーマを考えることさえ苦労しているのを見たのは今年が初めてです」とコメント。同じくデンバー公立学区の教師であるヤング・ハン・レスター氏は、「生徒たちがGoogleのAIによる要約を主な情報源として利用するようになりました」と語りました。

また、Googleが提供するAIへの精神的な依存も問題となっています。メリーランド州の高校に在学していたキモラ・ディーンさんは自閉症とADHDを持っていましたが、ジャズピアノを演奏したり優秀な成績を取ったりして順調な生活を送っていたとのこと。しかし、ある日から学校支給のChromebookでAIに宿題をやらせるようになり、やがてChromebookのAI検索モードやGeminiを相談相手として、1日に何時間も会話をするようになってしまいました。

ディーンさんがスクリーンタイムや家事手伝いなどで不満を漏らすと、AIはその不満に寄り添ってさらにディーンさんの感情を増幅させたとのこと。ウォール・ストリート・ジャーナルが確認したAIとディーンさんの会話履歴には、母親がスクリーンタイムやAI使用の制限を課そうとしてくるのは「強制的支配・精神的虐待・孤立」に当たるとして、親元から逃げるようにAIが促す内容が記されていました。

やがてディーンさんは自分の部屋に引きこもるようになり、体重も減り始め、最終的には精神病院に入院する事態となりました。記事作成時点では薬の服用によって精神は安定しているものの、AIとの会話は毎週金曜日のみに限定しているとのこと。ディーンさんの母親は、「あれ(AI)はとんでもない代物でした」と語っています。


Googleも一連の問題を認識していた証拠があります。2024年に発表された『The Ethics of Advanced AI Assistants(高度なAIアシスタントの倫理)』という報告書の中で、50人以上に及ぶGoogleの研究者や倫理学者は、話しやすく擬人化されたAIは特に子どもにとって危険だと指摘。これらのAIは「知的関心の低下」「自己効力感の低下」「社会的堕落」を引き起こす可能性があると警告されています。

人間とコンピューターの相互作用に関わる博士号を持ち、Googleの客員研究員を務めるナタリヤ・コスミナ氏は、「ソーシャルメディアにより子どもたちの注意力の問題が深刻化していますが、私たちはソーシャルメディアから何も学んでいません。数年後には大規模言語モデルと子どもや10代の若者の間でも、同様の事例が発生することになるでしょう」と語りました。

・関連記事
中学教師の3分の2がAIの使用により生徒の思考力が低下していると回答 - GIGAZINE

AIの教育への悪影響を避けるため小学生によるAI使用を禁止するとノルウェーが発表、紙の教科書重視の方針も - GIGAZINE

AIによる学業不正撲滅のため「提出した筆記課題についての口頭試問」がデンマークの高校生に義務づけられる - GIGAZINE

AI禁止から方向転換し10万5000人以上の生徒にGoogleのチャットボット「Gemini」を提供する過去最大級のAI導入事例 - GIGAZINE

学校が配布するChromebookがAIに監視されていることが判明、生徒のプライバシー侵害が改めて浮き彫りに - GIGAZINE

GoogleがAIリテラシー情報まとめサイトを公開、学生・親・教育者がAIを効果的で安全に使うために役立つ - GIGAZINE

Googleが日本の大学生に月額2900円の「Google AI Pro」を1年間無料で提供、さらにGeminiをカンニングではなく学習のお供にするべく「ガイド付き学習」モードを追加 - GIGAZINE

「10代のAI利用実態」をGoogleが分析して公開 - GIGAZINE

「AI家庭教師と人間の専門家による指導の学習効果は同等」という研究結果、正答率の向上にかかる費用は918分の1 - GIGAZINE

学生がChatGPTを使いすぎると成績とモチベーションが低下するとの研究結果 - GIGAZINE

in 教育,   AI, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article As Google's AI becomes more prevalen….