NFTプロジェクト「Evolved Apes」の開発者が3億円以上の仮想通貨を持ち逃げ、だまされた投資家らは新プロジェクトを発足
近年、ブロックチェーンで所有権が追跡されている「非代替性トークン(NFT)」に対する投機的な注目が高まっており、たった1枚のNFTアートが75億円で落札されたり、日本の小学生が描いたNFTアートの取引高が総額380万円に達したりといった事例もあります。NFT市場が大きな盛り上がりを見せる一方で暗号資産をだまし取る詐欺も問題となっており、新たにNFTプロジェクト「Evolved Apes」の開発者が総額270万ドル(約3億円)以上の暗号資産を持ち逃げしてしまったことが報じられています。
Investors Spent Millions on ‘Evolved Apes’ NFTs. Then They Got Scammed.
https://www.vice.com/en/article/y3dyem/investors-spent-millions-on-evolved-apes-nfts-then-they-got-scammed
'Evolved Apes' NFT creator Evil Ape disappears with $2.7M | PC Gamer
https://www.pcgamer.com/evolved-apes-nft-creator-evil-ape-disappears-with-dollar27m/
Evolved Apesは、2021年9月24日に大手のNFTマーケットであるOpenSeaで公開されたNFTプロジェクトであり、支援者らにサルのNFTアートを販売していました。以下の公式ページを見ると、「Evolved Apes Universeは、無法地帯に閉じ込められた1万のユニークなNFTコレクションです。生き残るために戦い、最強の類人猿だけが勝ちます」と、プロジェクトのコンセプトが説明されています。
Evolved Apes Inc - Collection | OpenSea
https://opensea.io/collection/evolved-apes-inc
Evolved ApesはNFTアートとして販売されたサルのキャラクターを用いた格闘ゲームをリリースすると発表しており、NFTアートによる収益は格闘ゲームの開発やマーケティングなどに使用すると述べていました。ところがプロジェクトの発表から1週間後、「Evil Ape」と名乗るEvolved Apesの開発者が公式Twitterアカウントやウェブサイトを削除し、インターネット上から姿をくらましてしまいました。
Evil Apeが失踪した時点で、NFTアートの売買やロイヤリティーで集められたプロジェクト資金は、798イーサリアム(約270万ドル)を超えていましたが、複数回の送金によってイーサリアムは持ち出されてしまったとのこと。
実は、Evil Apeが失踪する以前から投資家たちはいくつかの「危険信号」に気付いていたそうです。たとえば、Evolved Apesに関する発表の内容が専門性を欠いていたことや、開催された「SNSでEvolved Apesをアピールするコンテスト」の勝者に報酬が支払われていないこと、さらにNFTアートを手がけたアーティストも報酬を受け取っていないことが指摘されています。しかし、投資家たちもNFTに関しては経験不足であったため、Evil Apeが資金を持ち逃げするとまでは予想できなかった模様。
Evil Apeの失踪後に投資家たちはDiscordサーバーで話し合い、Evolved Apesに1万ドル(約110万円)以上を投資した「Mike_Cryptobull」というハンドルネームの人物をリーダーとして、Evolved Apesに関する事実をまとめるチームを立ち上げました。チームがまとめたレポートには、「Evil Apeはアーティストへの報酬、現金プレゼント、マーケティング、ゲーム開発など、あらゆる目的で支払われるはずだったイーサリアムを全て持ち出し、プロジェクトから手を引きました」と記されています。
今回の一件で投資家たちは詐欺に遭ったといえますが、Mike_Cryptobullがまとめたレポートには、刑事告発の追求については言及されていません。Evolved Apesの被害に遭った「Jdmjem」という人物は、Evil Apeの行動には間違いなく詐欺的な面があるとしつつも、技術的には詐欺と認定できない可能性があると指摘。「問題は、誰もが支払いの代わりにNFTアートを手に入れたという点です。結局のところ、ゲーム開発やその他の約束は、購入そのものの範囲から外れています」「人々は警察に被害届を提出しようとしていますが、問題はこれが未知の分野であり、非倫理的であるものの技術的に違法ではないということです。私たちは皆、支払いを行った対象を手に入れました」と述べています。
開発者であるEvil Apeが失踪してしまったものの、コミュニティのメンバーはイーサリアムで購入したNFTアートを持ったままであり、今後もコミュニティの運営を継続していく予定です。メンバーは新たに「Fight Back Apes」というプロジェクトを立ち上げ、既存のEvolved ApesのNFTアートにFight Back Apesトークンをリンクするとのこと。Mike_Cryptobullは、「私たちはEvil Ape(邪悪なサル)とコミュニティとして戦うFight Back Apes(反撃のサル)になります」と述べました。
記事作成時点でもEvolved Apesの取引は続いており、Evil Apeの失踪以降の取引総額は約16.7イーサリアム(約660万円)に上るとのこと。この取引総額の4%は依然としてEvil Apeに支払われているとのことで、Fight Back ApesはプラットフォームのOpenSeaに働きかけるなどして、ロイヤリティーをコミュニティの手に取り戻すことを目的としています。なお、Fight Back Apesでは誰かがEvil Apeのように資金を持ち逃げできないよう、複数人の署名がなければ資金を動かせないようにしているそうです。
Fight Back ApesのメンバーであるJosh_CryptoBullは、Evolved Apesには複数の危険信号があったと認めつつも、「私たちの99%はNFTアートと約束、そして予想した潜在的な利益に目がくらんだのです」とコメント。今回の教訓として、「何かが正しくないと感じた自分の直感を信じてください」「間違いが起こった場合でも、それがどのように扱われるのかは、あなたに多くのことを教えてくれます」と述べています。また、Mike_Cryptobullも暗号資産やNFTに共通するルールとして、「投資対象を自分で調査すること」「失ってもいい金額以上の投資はしないこと」を挙げました。
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