「腸と脳のコミュニケーション」を強化することで記憶力や認知機能の老化を逆転させられる可能性

近年の研究により、腸と脳は密接にコミュニケーションを取っていることが明らかになりました。新たに、スタンフォード大学やアーク研究所の研究チームはマウスを用いた実験で、「腸と脳のコミュニケーション」を強化することで加齢に伴う認知機能低下を逆転させられる可能性を示しました。
Intestinal interoceptive dysfunction drives age-associated cognitive decline | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-026-10191-6
Enhancing gut-brain communication reversed cognitive decline, improved memory formation in aging mice
https://med.stanford.edu/news/all-news/2026/03/gut-brain-cognitive-decline.html
これまでの研究により、腸内細菌叢(そう)と脳には密接な関係性があることが知られています。スタンフォード大学の病理学准教授であるクリストフ・サイス氏らの研究チームは、腸から迷走神経を介して脳に伝わる内受容感覚が、加齢に伴う記憶力や認知機能の低下に関連しているのではないかと考えました。外受容感覚は視覚・聴覚・触覚・味覚などを通じて生体外の状態を捉えるものであるのに対し、内受容感覚は体内の生理的な状態を捉えるものです。
サイス氏は、「外受容感覚とは、基本的に私たちが外界をどのように認識するかということです。この仕組みについては詳細な知識が豊富にありますが、脳が体内で何が起こっているかをどのように感知しているかについては、ほとんどわかっていません」と述べています。
研究チームは「腸内細菌叢が老齢期の物忘れに関連している」という仮説を検証するため、生後2カ月の若いマウスと生後18カ月の年老いたマウスを一緒に飼育しました。近距離で飼育することにより、若いマウスは年老いたマウスの腸内細菌に、逆に年老いたマウスは若いマウスの腸内細菌に接触しました。
飼育から1カ月後にこれらのマウスを調査すると、若いマウスの腸内細菌叢は年老いたマウスに似てきていることが判明。さらに、マウスが新しい物体を認識する能力や迷路の出口を見つける能力を調べた結果、年老いたマウスに似た腸内細菌叢を持つ若いマウスは、同年代の他のマウスと比べて著しく成績が悪いことがわかりました。

続いて研究チームは、出生時から無菌環境で育てられており、腸内細菌を持たない若いマウスと年老いたマウスを比較しました。すると、若いマウスは年老いたマウスと一緒に飼育されていても認知機能の低下がみられず、年老いたマウスも若いマウスとほぼ同等の成績でした。しかし、若いマウスに年老いたマウスの腸内細菌を移植したところ、認知機能のテストで年老いたマウスと同等の成績になってしまったと報告されています。
驚くべきことに、年老いたマウスの腸内細菌を移植されて認知機能が低下した若いマウスに対し、広範囲抗菌薬を2週間投与して腸内細菌を減らした結果、認知機能が回復することがわかりました。
詳しく調べた結果、マウスの腸内では加齢に伴ってParabacteroides goldsteiniiという細菌の相対的な量が増加し、これが認知機能低下と直接的に関連していることが判明。若いマウスの腸内にParabacteroides goldsteiniiを定着させると、物体認識課題や迷路脱出課題の成績が低下し、これが海馬の活動低下とも相関していました。
さらなる実験で、Parabacteroides goldsteiniiが増えるにつれて代謝産物である中鎖脂肪酸が増加し、これが腸管内の免疫細胞群に炎症反応を引き起こし、迷走神経の活動や記憶形成を阻害することが確認されました。そこで、迷走神経を活性化する分子を年老いたマウスに投与したところ、認知機能が若いマウスと同程度まで回復したとのことです。

サイス氏は、「私たちは認知機能低下の3段階のメカニズムを特定しました。それは消化管の老化とそれに伴う微生物叢や代謝の変化から始まり、消化管内の骨髄系細胞がこれらの変化を感知し、その炎症反応が迷走神経を介した腸と脳のつながりを損ないます。これが記憶力低下の直接的な要因となります。そして、迷走神経の活動を回復させれば、高齢の動物の記憶機能を若い動物のレベルまで回復させることができるのです」「最終的には、これらの研究結果が臨床現場に応用され、人々の加齢に伴う認知機能低下に対処するのに役立つことを願っています」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Strengthening 'gut-brain communication' ….







