運動前の排便が認知機能と運動パフォーマンスに驚くべき効果をもたらすと判明
近年発表された2つの研究で、運動の前に排便をすることで、より賢く判断できるようになり、スポーツのパフォーマンスが向上する可能性があると判明しました。これは、スポーツのパフォーマンス向上だけでなく、認知機能の低下を理解する上でも排便が重要な意味を持っていることを意味します。
Defecation after magnesium supplementation enhances cognitive performance in triathletes - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666337624000404
Pooping makes you a better racer | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1066556
Pooping Before You Exercise Has an Incredible Effect on Performance : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/pooping-before-you-exercise-has-an-incredible-effect-on-performance
台北大学の生化学者であるChen-Chan Wei氏の率いる研究チームは、トライアスロンの選手13名を対象に、ストループテストという認知機能検査と酸化マグネシウムの下剤を用いた実験を行いました。ストループテストとは、例えば「赤」という文字を青い色で表示した時、参加者は文字の意味ではなく、表示されている色を答えるというもので、認知の柔軟性と反応速度を測定します。
その結果、下剤を用いて排便をすると認知テストのスコアが明らかに向上したことが判明しました。研究チームは「この研究で最も注目すべき点は、酸化マグネシウムを服用したすべての参加者で、ストループテストの成績が明確に向上したことです。さらに興味深いことに、下剤を使用しない場合でも、13人中9人が排便後にテストの成績が向上しました」と報告しています。
2022年の研究では、初期のパーキンソン病患者が便秘時に軽度の認知機能低下を示すことが判明し、腸と脳の関連性が示唆されています。科学系メディアのScienceAlertによれば、腸には数億個もの神経細胞があり、腸内細菌叢(そう)は気分や神経系、精神的な健康状態に影響を与えることが知られているため、この研究結果はそれほど意外な話ではないとのこと。
さらにWei氏らの研究チームは、このつながりをアスリートの視点から調査することにしました。トライアスロンは水泳、自転車、ランニングという3つの運動を含む過酷な競技で、その選手は素早い判断力、持久力、そして他の選手との競争に勝つための総合的な能力が必要とされます。
研究チームはすでに、自転車競技前の排便が選手のパフォーマンスを向上させ、前頭前皮質の血流も改善することを確認していました。そこで次のステップとして、空腹時の身体能力向上と同様に、認知機能にも良い影響があるのかを調べることにしました。
台北大学の生理学者であるChia-Hua Kuo教授は「運動、特に長距離競技の場合、脳は筋肉に向けて大量の指令を送り続けています。実は、運動を持続できるかどうかは、筋肉のエネルギー残量よりも、脳が筋肉をコントロールし続けられるかどうかの方が重要なのです」と説明しています。
研究では、トライアスロンの選手13名に3回のストループテストを実施しました。1回目は排便なしの状態で、2回目は食事管理を行った上で排便1時間後に、そして3回目は酸化マグネシウムを服用して13時間後、排便から1時間後にテストを行いました。
その結果、2回目のテストでは3分の2以上の参加者の成績が向上。さらに、下剤を使用した3回目では、全員の成績が改善したとのこと。参加者数は少ないものの、この結果は排便が認知機能の向上につながる可能性を強く示唆しています。
研究チームは、この現象が体内の限られたリソースの配分に関係していると考えています。消化管に食物がある場合、その処理のために血液や酸素が使われます。逆に消化する物がない場合、それらのリソースを他の機能に振り向けることができます。実際、運動中のリソース不足は、「ランナーズ下痢」として知られる現象の原因とも考えられています。これは、激しい運動中にアスリートが突然、便意を我慢できなくなる症状です。
2012年の研究では、「運動中は交感神経系の働きにより、内臓から活動中の筋肉へと血流が移動します。内臓の血流が著しく減少すると、消化管の虚血、すなわち血流不足を引き起こす可能性があります」と論じられています。つまり、体は運動のために消化器官から血液を移動させ、その結果として消化管に様々な影響が出るというわけです。
Kuo教授は「人体は不思議なほど緻密につながっています。私たちの精神活動は、頭の中だけでなく体のあらゆる部分で行われています。そして、直腸もまた脳の一部として機能しているのです」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article It turns out that defecation before exer….