20メートル上空をスパイダーマンらしく飛ぶディズニーのスタントロボットの秘密とは?
アメリカ・カリフォルニア州アナハイムにあるディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー内には、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のテーマパーク「アベンジャーズ・キャンパス」が存在します。その中でも目玉スポットの1つであるスパイダーマンのショーには、スパイダーマンが実際に20メートル近い高さを命綱なしでジャンプする一幕があるのですが、実はこの空中ジャンプは実際の人間ではなく、ディズニーが開発したスタントロボットが行っています。ディズニーのロボット開発チームがこのスタントロボットの開発経緯と苦労した点を、以下のムービーで語っています。
How Disney Designed a Robotic Spider-Man | WIRED - YouTube
実際にスタントロボットがディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーのアトラクションで飛ぶ様子は以下の記事で見ることができます。
スパイダーマンがウェブシューターで空中を華麗にスイングする様子を完全再現したスタントロボットが登場 - GIGAZINE
このスタントロボットはもともと「Stuntronics」というプロジェクトによって開発されたもの。
このスタントロボットの原型となったのが、この「Brick」と呼ばれるロボット。Brickは重心を制御することができるので、空中で姿勢を制御し、自律的に回転することができました。
このBrickにダンパー式の関節を組み合わせて、空中で体を折り畳めるようにしたのが「Stickman」です。Stickmanはロープをつかみながら、関節を動かすことで勢いをつけてスイングし、センサーで角度や位置を測定しながらちょうどいいタイミングでロープを放し、ジャンプすることができます。
ディズニーが開発する空中ブランコから華麗にバク宙できる棒状ロボット「Stickman」 - GIGAZINE
このStickmanをさらに発展させて、2分の1スケールの試作品を経て誕生したのが、以下の人型プロトタイプ。
そして、この人型プロトタイプのスタントロボットを使い、開発チームは実際にアトラクションで運用するためにジャンプさせるテストを開始。最初からいきなり40フィート(約12メートル)もの高さを飛ばしてみたそうです。
スタントロボットには、計画通りにジャンプできるようにするため、スマートフォンに内蔵されているような加速度計や角度計が内蔵されています。
さらに、屋外アトラクションで使用するため、開発チームはディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー周辺の気候を計測し、風の影響も考慮していたそうです。そのかいもあって、スタントロボットはほぼ狙い通りの場所に着地できるようになったそうです。また、テストのジャンプ高度はどんどん上がっていき、スタントロボットは65フィート(約20m)までジャンプできるようになったとのこと。
ここで開発チームを悩ませたのが、「スタントロボットをいかにスパイダーマンらしく見せるか?」という問題。仮に完璧に飛べたとしても、完璧過ぎると逆にスパイダーマンどころか人間らしさも失われます。
例えばスパイダーマンは、映画の中でスマートフォンを操作しながら町の中を飛び回ります。
そしてバスにぶつかりそうになり、慌ててその場で対処しながら、姿勢をどうにか維持してジャンプを続けます。
つまり、空中でちょっと姿勢を崩す方がよりスパイダーマンらしく見えるわけです。
スタントロボットがスイングしてロープから手を離すと、体をきゅっと丸めてジャンプし、くるくると回転します。
そこで、ジャンプ中に片腕だけを伸ばすと……
重心が崩れるので、スタントロボットは体をひねるように横の回転を加えます。Brickのような単純な形ではない人型ロボットでひねりを加えるとかなり計算が複雑になるそうですが、片手を挙げて空中の動きが不規則になることで、ロボットではなく血の通ったスパイダーマンがジャンプしているように見えるというわけです。
さらに、スタントロボットには着地の問題が付きまといます。
着地は14フィート(約4メートル)四方ネットとマットを使い、ネットに着地した瞬間に一気に減速するようにしています。
しかし、スタントロボットは1日に何度も、年中無休で飛び続けることになります。そのため、その衝撃に耐えられるほど頑丈に作るのは非常に難しいものがあります。
そこで、スタントロボットは3Dプリンター出力の樹脂パーツとアルミニウムフレームで作られており、簡単に分解できるようになっています。
また、もし着地に失敗しても、高価でデリケートなサーボ機構の代わりに3Dプリンターのパーツだけ壊れるように設計されているとのこと。
開発チームは、ロボット技術をスパイダーマンだけではなく他のキャラクターにも応用できるようにしたいと語りました。
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