サイエンス

二酸化炭素排出量を削減して気候変動を止めるにはどうすればいいのか?


悪化し続ける気候変動が、具体的にどのような状況にあって何が問題であるのか、そして私たちが個人として行える対抗手段は何かということを、教育系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。

Can YOU Fix Climate Change? - YouTube


私たちが直面している急速な気候変動は、表面的には単純に見えます。温室効果ガスは太陽からのエネルギーを閉じ込めて、それを私たちの大気に移します。


これにより太陽の熱が大気にこもるため、より暖かい冬、より厳しい夏につながります。また乾燥した場所はさらに乾燥し、湿った場所はこれまで以上に湿度が高くなります。海面が上昇して海岸と都市を飲み込む間、無数の生態系が死んでいくことでしょう。


150年間かけて構築した現代の産業社会は、本質的に破壊的です。基本的に、私たちの生活をより簡単に、より安全に、より快適にするために私たちが行うことは、すべて生物圏にとって事態を悪化させるものだと言えます。


エネルギーや食料、交通手段や産業について私たちはよく知っていますが、多くの主要な汚染者についてはほとんど語られません。例えば、埋め立て地からの二酸化炭素排出量は、飛行機が飛行中に出す排出量と同じくらい重要です。


また、私たちの家を動かすために、すべての車を合わせたよりも多くの二酸化炭素が放出されます。


そして、新しい車を作るときに発生する排出量は、わずか2メートルの道路にアスファルトを敷くことに相当します。そのため、環境を意識して電気自動車に乗り換えるのは大事なことですが、その電気自動車が走る道路を作り続けていたら何も解決しません。


産業システムの一部を修正するだけでは不十分で、多くの異なる部分のそれぞれが独自の解決策を必要とします。


しかし、解決策が存在するからといって、私たちがそれを積極的に行えるとは限りません。急速な気候変動との戦いには多くの灰色の領域があり、最も顕著なものは、金持ちと貧乏人の間の隔たりです。


国の繁栄とその炭素排出量の間には明確な関係があり、より裕福な人々はより多くの排出を引き起こす傾向があります。したがって、気候変動を修正するための鍵は、世界で最も裕福な人々が贅沢なライフスタイルを改善して気候変動を削減することにあります。


しかし一方で、裕福な人々が節約するだけで全ての問題が解決するわけではありません。これは、世界の排出量の63%が低所得国や中所得国からのものであるためです。貧困から脱出しようとしている国は、快適なライフスタイルを達成して中産階級になっていくために、やむを得ず二酸化炭素を排出します。


したがって、開発途上国に排出量を削減するよう求めることは、排出量を抑える試みのように見えます。それでも、過去に環境被害を引き起こして金持ちになった国が、発展中の地域に対して「原生林を保護することに金を使うべきだ」と主張するのは、非常に難しいことです。


何十億もの人々にとって、より多くの排出量は個人的には良い結果や快適な暮らしを生んでいます。これを忘れると、実行不可能な解決策を提案する傾向があります。例えば、二酸化炭素排出量の8%はコンクリート製造業から排出されているため、コンクリートの使用をやめることで1割近くが削減できます。しかし現代においてコンクリートは、発展途上国の人口を増やすために手ごろな価格の住宅を建設するのに用いられる、安価で簡単な方法でもあります。そのような、必要と解決策との衝突の例はたくさんあります。


その他で、現在私たちが解決していないことで、克服する方法があります。その最大の問題は食べ物です。


動物性・植物性の肥料を必要とする現代の食糧生産は、米だけでも毎年大量のメタンを放出するため、実質的には世界のすべての航空交通に匹敵するほどの環境への影響力があります。


さらに影響力が高いのが肉類です。食品からの二酸化炭素排出量の57%は動物性食品からのものですが、それらは全人口の摂取カロリー量のうち18%しか占めていません。また、ここにも貧富の差が出ており、世界中の人々がより豊かになるにつれて、より多くの肉を欲しがるようになっています。


今日、世界の居住可能な土地の約40%が何らかの形で肉の生産に使用されています。これは北アメリカと南アメリカを合わせたサイズと同等の広さで、その広大な土地で動物を養うために、在来の生態系を再成長させたり大気から炭素を吸い出したりしてくれる森林やアマゾンを乗っ取っています。


肉を食べる量を減らすだけでは気候変動は止まりませんが、食肉の消費量を少なくしなければ気候変動を止めることはできません。


同じことが、空の旅、海外輸送、鉱業、YouTubeを再生するデバイスの制作など、私たちの生存にとってそれほど重要ではない他のものにも当てはまります。


裕福な人々は現在の生き方を諦める必要があり、貧しい人々は決して豊かな暮らしを享受できないのかというと、そういうことではありません。技術によって二酸化炭素を取りだして削減し、地下に保管したり製品に変換したりする計画は進んでいます。


ではなぜそれをあらゆる業界、あらゆる場所に実装しないのかというと、単純にコストがかかりすぎるためです。私たちが今持っている技術では、これには米国の年間GDPの半分に及ぶ約10兆ドルもの費用がかかるからです。


製鉄所や石炭火力発電所のような大規模な汚染者にこれらのコストを投じるだけで大幅に改善が期待されますが、企業側が行うと製品のコストが2倍になるため、業界の破産は免れません。また、政府にコストを負担させることは合理的に思えますが、実際には多くの政府が石油・ガス産業への助成といった環境保護と反対のことを求められています。


技術的な導入も、政治的な活動も、実験による開発の時間も残されていない現在、今すぐに「新しい電気自動車を購入する」「ガスストーブを電気ストーブに交換する」「窓を二重ガラスにする」「肉を食べるのをやめる」「電気を消してみる」といった改善策を実行する必要があります。


二酸化炭素排出量を削減する最も簡単な方法は、地球上のすべての豊かな人々が大幅に二酸化炭素排出量を削減することです。そのような人々のライフスタイルが大きく変わるタイミングがありました。コロナウイルスのパンデミックにより、外出は減り、飛行機の使用は避けられ、店が閉まることも多くなりました。


しかしながら、2020年は前年に比べて二酸化炭素排出量を7%削減するだけでした。


こうした現状を見ると、個人の行動では影響力が小さすぎて、世界を救うことはできないと感じられてしまいます。電気を消すといったような個人的な貢献は素晴らしいものの、世界的な二酸化炭素排出の現実があまりにも大規模で、「まずは自分から」という意識は生まれにくくなっています。環境保護の意欲がある人が残りの人生で二酸化炭素を一切排出しなかったとしても、気候変動はほとんど食い止められません。


それでは、私たちは実際に何ができるのでしょうか。依然として多くの異なる議論があり、明確な結論は出ていないため、Kurzgesagtの主張もあくまで自分たちの視点と意見に基づくものです。


まずは、この規模の体系的な変化には、政治に働きかけていくことが大事になります。政府や地方の政治家が環境に関わる法律の変更に消極的である場合は有権者として彼らを批判し、科学を尊重する人々に投票する必要があります。


最も効果的な気候変動戦略を実現するためには、政治家に責任を負わせ、法律を変更し、積極的な環境保護を奨励するほか、既存の技術を活用し、私たちが行っていない分野のイノベーションに大規模に投資していかなければなりません。


また、産業分野において可能な限り炭素排出量を削減するための規制を設け、協力しない企業に対して厳しい罰則を科す必要があります。


電気自動車や代替セメントなど、その他の炭素を削減した技術はまだ多くの時間と研究を必要とするため、これらに投資することは裕福な国家でなければ困難です。


しかしこれらは、技術が進むほど価格が下がるメカニズムであるため、自身が参加可能になったラインで、貢献していけることです。


政治参加のための投票用紙と、環境に投資するための財布で、個人の環境への責任を果たしていくことができます。


環境へ配慮することで、誰もが少し不幸になります。それでもこれはあなたができる最善のことであり、現実の状況に対処し、急速な気候変動を止めることができるとKurzgesagtは結論づけました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1e_dh

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