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原子力発電は気候変動を止めるために不要なものなのか?


原子力発電は放射性廃棄物の問題や事故の可能性から「利用すべきではない」という反対意見が多く存在します。一方で、地球温暖化といった気候変動の問題は差し迫っており、化石燃料の使用を減らす重要性は日に日に増しています。気候変動を止めるために原子力発電は不要な技術なのか、そもそも現状のエネルギー利用が抱える問題はどのようなものなのかを、科学系YouTubeチャンネルであるKurzgesagtがアニメーションで解説しています。

Do we Need Nuclear Energy to Stop Climate Change? - YouTube


世界には「地球温暖化を止めるためには原子力発電が必要だ」という声と、「原子力発電は今すぐやめるべきだ」という声が両方あります。


原子力発電が賛成派と反対派で分かれてれているのには複雑な背景があります。そもそもの出発点として、地球温暖化を止めるには温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする必要があるといわれています。目標を達成するためには人類が活動するためのエネルギー燃料を「化石燃料以外」にする必要があり、その候補として挙げられているのが原子力発電や再生可能エネルギーです。


2021年時点で人類が使用するエネルギー燃料のうち84%が化石燃料で、その内訳は33%が石油、27%が石炭、24%がガスとなっています。


そして残り16%にあたる、化石燃料以外のエネルギー燃料の内訳は、7%が水力、5%が太陽光・風力・バイオマス・波・地熱で、4%が原子核となっています。


上記からわかるように、人類は生活のほとんどを化石燃料に頼っている状態です。これまでの生活を保ちつつ化石燃料への依存をなくす方法として考えられるのは、まず、化石燃料を中心とした生活を、「電力」中心の生活に変えるという方法です。


電気は太陽光や風力などによって生成可能であるため、温室効果ガスの排出を少なくすることができます。電力化への取り組みはすでにさまざまな分野で行われており、電気自動車や電気ヒーターの推進もその例です。


しかし、電力化への移行を進めることにも問題はあります。例えば世界の電力のうち63%が化石燃料により生み出されており、しかもここ数十年で電力の需要が大きく増加しています。このため電力化を進めても風力や水力といった再生可能エネルギーでは需要を満たすことができず、化石燃料の使用量が増加するばかりです。


この点、原子力発電は再生可能エネルギーではないものの、温室効果ガスの排出量が少なく、エネルギー効率がいいという点でメリットがあります。


発電において温室効果ガスの排出が少ない国としてフランスとスウェーデンが挙げられます。この2つの国を見てみると、フランスは67%が原子力で12%が水力、スウェーデンは30%が原子力で45%が水力です。この2国は発電において原子力を利用することは温室効果ガスの排出削減に効果があると示した例といえます。


しかし、過去数十年において、原子力発電はほとんど増加していません。


これは中国・インド・韓国といった国で新しい原子炉が構築される一方で、ドイツ・日本・イギリスなどは原子炉の使用を減らしているためです。


また、世界に存在する原子炉は数十年前に作られたものであり、「古い技術」と化しているのという問題も。新しい原子炉の構築には膨大な資金が必要であり、特に西洋諸国では「ノウハウ不足」「規制」の問題もあいまって、新しい原子炉が完成するまでに数十年を要するとみられています。


一方で、構築のためのコストと時間を削減する「小さな原子炉」も開発されています。このような原子炉の中には、放射性廃棄物を次の燃料にする技術を搭載するものもありますが、まだ大規模な稼働事例はありません。


ただ放射性廃棄物や事故が起こる可能性から、原子力発電そのものに対する反対意見も存在します。原子力発電の反対派は「化石燃料の代替エネルギーは再生可能エネルギーに集中すべき」と主張しますが……


水力発電・風力発電・太陽光発電などにもまだまだ問題は多くあります。たとえば、既存の技術では、世界中の人々に安定して継続的に電力を提供するだけの能力はまだありません。


太陽が照っていない時や風が吹いていない時もあります。また季節によって気候条件が変化することも考えられます。


安定的かつ継続的に電力を供給するためには、大規模な電力のストレージを構築し、太陽光や風がある時に作り出した電力をためておき、必要な時に取り出せるようにする必要があります。しかし、これが実現するまでは、別の燃料によって発電を支える必要があるわけです。


2021年時点ではここまで大規模な発電システムもストレージもありませんが、これらが完成すれば、人類はこれまで以上に電力で生活することが可能になり、化石燃料の使用も減らせると考えられます。


再生可能エネルギーにしろ、原子力エネルギーにしろ、それぞれの問題を抱えており、完璧なエネルギー源はありません。では、今後化石燃料から次のエネルギー源にどのように移り変わっていくべきでしょうか。


これこそがまさに議論が分かれているところです。「すぐさまに原子力発電をやめ、一時的に化石燃料を受け入れる」「再生可能エネルギーを利用しつつ原子力発電は最低限に抑え、再生可能エネルギーのシステムが確立したら原子力発電をやめる」「安全かつ安価な新しい原子力発電に投資する」などさまざまな意見があります。この点、Kurzgesagtはリスクマネージメントを考えると、全ての技術を並行して進めるべきだという考えを示しました。


2021年時点ではどの技術が先に目標を達成できるかや、問題を解決できるかがわかりません。このため再生可能エネルギーと原子力エネルギーは「ライバル」でなく「パートナー」としてとらえ、どちらに対しても投資を行って相互に補えるようにすることが最適という考えのようです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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