生き物

「牛のトイレトレーニング」で地球温暖化や環境汚染に対抗できると研究者が主張


畜産業は大量の温室効果ガスを排出するため、「地球温暖化を止めるには肉や乳製品を食べないようにするべき」という声も挙がっているほか、「海藻を牛に食べさせてげっぷを減らす」といった研究もされています。新たにドイツやニュージーランドの研究チームが「牛のトイレトレーニングに成功した」との研究結果を発表し、地球温暖化や環境汚染を防ぐために役立つかもしれないと期待されています。

Learned control of urinary reflexes in cattle to help reduce greenhouse gas emissions: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(21)00966-0


We managed to toilet train cows (and they learned faster than a toddler). It could help combat climate change
https://theconversation.com/we-managed-to-toilet-train-cows-and-they-learned-faster-than-a-toddler-it-could-help-combat-climate-change-167785

Cows successfully potty trained as solution to urine pollution, researchers report - oregonlive.com
https://www.oregonlive.com/environment/2021/09/cows-successfully-potty-trained-as-solution-to-urine-pollution-researchers-report.html

牛は1日に数十リットルもの尿を排出しており、この尿に含まれる多量の窒素がさまざまな環境問題を引き起こします。たとえば、放牧されている牛が放尿すると土壌で分解されて硝酸塩亜酸化窒素が生成されます。硝酸塩は湖や川に浸出して藻類の過剰な増殖や魚への悪影響を引き起こすほか、亜酸化窒素は二酸化炭素より300倍も強力な温室効果ガスとして、地球温暖化を加速させるとのこと。また、屋内で飼育されている牛が放尿すると、窒素が牛舎の床にあるふん便などと混合し、別の汚染物質であるアンモニアが生成されてしまいます。


しかし、牛が排出する尿をまとめて処理することができれば、窒素が有害な物質に変化するのを防ぐことが可能となります。そこで、ドイツやニュージーランドの研究チームは「牛に『トイレトレーニング』を施すことでさまざまな環境問題に対処できるのではないか?」と考えて、牛にトイレトレーニングをする実験を行いました。

まず、研究チームは対象となった子牛をケージの中に入れ、放尿したら砂糖を精製する時に発生する廃糖蜜などの報酬を与えることで、子牛に「ケージの中で放尿すると報酬がもらえる」と学習させました。次に、子牛をケージの外の通路で歩かせて、通路上で放尿すると水を噴射し、ケージの中で放尿すると報酬を与えることで、放尿する時にケージの中までやってくるように訓練したそうです。

実験の結果、研究チームは16頭中11頭でトイレトレーニングに成功し、ケージの中で放尿するようにしつけることができたと述べています。なお、トイレトレーニングの方法を最適化した後に限定すると、8頭中7頭で成功したとのこと。トイレトレーニングの期間は15日間であり、多くの子牛は20~25回の放尿でケージ内での放尿を覚えたそうで、子牛は人間の幼児と同じくらいか、それよりも速くトイレの場所を学習できると研究チームは主張しています。


トイレトレーニングを受けた牛が所定の場所で放尿する様子は、以下のムービーで見ることができます。

Cows can be 'potty trained' in discovery which could help save the planet - YouTube


柵で囲われたケージの中に……


1頭の牛が入ってきました。


牛はしっかりとお尻をケージの中に入れた状態で放尿を開始。


放尿が終わると、ケージ内にある給餌器に廃糖蜜などが流し込まれ……


牛は報酬をゲットできるという仕組みです。今回の実験では牛をトイレトレーニングできるたけでなく、「牛は自分が放尿しそうな状態であることを理解できる」「牛は通路を歩いてケージの中に入るまで放尿を我慢できる」といったことも明らかとなりました。


今回の実験に関与しなかったデューク大学の動物認知科学者であるBrian Hare氏は、「決められた場所で放尿できるように子牛を訓練できることは驚きではありませんが、これまで誰も実証していなかったことは驚きです」と述べ、重要な問題はこの成果をスケールアップできるかどうかだと指摘しています。

研究チームによると、トイレ用のケージにおける尿の検出および報酬を自動化し、トイレトレーニングにおける人間の介入を減らすことは技術的な問題に過ぎないと主張。その一方で、トイレ用のケージを設置する適切な場所や数を決めるには、牛がどれだけ放尿を我慢できるのかといった点を理解する必要があり、今後の課題となっているとのこと。特に屋外で牛を放牧している場合、どこにケージを設置するのかといった点は大きな問題になってきます。

研究チームは、「私たちが知っているのは、牛の尿に由来する窒素が水質汚染と気候変動の両方に寄与しており、これらの影響を牛のトイレトレーニングによって減らせるということです。収集できる尿の量が多いほど、排出目標を達成するために牛の数を減らす必要性や、牛乳やバター、チーズ、肉の入手可能性について妥協する必要性が小さくなります」と述べました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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